第十四章「絶対悪」
GM:ではセットアップ&行動値!
まず最初にサダルメリクはこちらを使用!
 
《瞬天の舞い》 タイミング:行動判定前 対象:自身 射程:−
貴方は行動判定を二回行ない、二回行動を行なえる。
また貴方は即座にソニックドライブを発動させて良い。
この時、貴方の両方の行動時にそのソニックドライブの効果を与えて良い。
 
GM:行動値は93!

ルナ:ルナはもうサダルメリクに通せません。ミシュラさん、頼みます

ミシュラ:9・8・1・0の3でダイスは31。122を足して行動値は153。
この場合50を引く機会が増えますが、4回行動になったりしますか!

GM:それはありです。ちなみに運命支配をしますけど、フォーチューン使います?(笑)

ミシュラ:あー、そうか。さっきので0になっちゃってたんだ(笑)
じゃあダイス目は4の行動値126!ファルナスの加護超強い!(笑)
<超越行動>発動です!

ルナ:じゃあ行動値は52ッス。ダイス+1Dで。

GM:ならば仕方ない、サダルメリクも秘奥義コストを消費してでも先手を止めよう。
 
《エタニティ・インフェルノ》 タイミング:瞬間 対象:単体 射程:視界
対象が行なう戦闘能力値を使用する何らかの判定の際、その戦闘能力値を一時的に0とさせる。

GM:これでミシュラの行動値を0に!

ミシュラ:なっ…!エタニティインフェルノだと…!(笑)
なんだかさっき撃った技をそのまま返された気分だ(笑)
流石プロパテール。

GM(サダルメリク):「言ったはずだ!もはや驕りも慢心も捨て、全力でお前達を葬ると!」
と言う事でこれによりサダルメリクの先手!

ルナ:ソニックのエナジーチャージを使います。回復は7です
攻撃はミシュラのじゃないと通らない……か。

ミシュラ:サダルメリクの覇気により、星宝発動は許されない!行動値0でアクセラも発動せず。
運命支配とエタニティのコンボでこのターンは何もできなく…
ここでやはりルナの一撃に頼りたいと思います。
セットアップのキリングジョークで防御判定を許しません。どうか一撃を!

ルナ:通りそうにない…。

GM:彼は君達の前に立ちその両の手を合わせる。
そしてそこから生まれる光。それは宇宙開闢を告げる光の如き白く白く輝く至高の光。
今、彼の手の中より全ての存在を包み込む原初を光が誕生しようとしている!
「…正直、ここまで戦えたことは褒めておこう、見事だった。
だがお前達もこれで終わりだ。我らデミウルゴスの頂点、プロパテールbノのみ発動可能な秘奥義。
神、イシュタル様の許可がなければ発動することさえ許されぬ原初の光。
その光をお前達へと見せることはそれ即ち、お前達は神の敵として認められたという栄誉」
 
「光栄に思え、そしてこの原初の光の中に――消え去るがいい!!」
 
サダルメリクの掌から生まれた原初の光!
それはこの空間全てを包み込み、ルナとミシュラの存在そのものを飲み込む!
 
「《アリスト・ハールート》!!」
 
《アリスト・ハールート》 タイミング:メジャー 対象:任意 射程:視界
最も神に等しき純白(プロパテール)の称号を持つデミウルゴスのみが扱える究極位置の秘奥義。
即座に対象となったキャラクターは生命力と精神力が0となる。
この時、セイバーモードであればセイバーモードを即座に解除する事によりこの効果を免れる。
またFP5点を支払う事でこの効果を免れる事も可能である。
 
GM:道は一つ。死かセイバー解除か。

ルナ:完全なる盾で……防げそうに無いな。セイバーを解除します。

ミシュラ:同じく解除します。

GM:了解です。ではセイバー解除で生き残ることに成功しました。

ルナ:「負けるかァ! 輝け、もっと、もっと、光を! 私の、星種よぉぉぉッ!」

ミシュラ:「神サマに逆らってでも、やらなきゃいけない事はあるんだ!」
その場に居る者は全て己自身の力を出し切り満身創痍。
この状況に於いて生き残れるのは単純に意志の強き者のみ。
「それを―――証明してみせる!」

GM(サダルメリク):「だが私には《瞬天の舞い》による追加行動がある。
セイバーモードの切れたお前達に我がケルヴィムラファーガに耐えられる体力は無い!終わりだ!」
彼は手を上げ、一歩を踏み出す。そこから放たれるのは神の嵐。終末を告げるサダルメリクの一撃。

だが彼が“その場所”に立った瞬間、奇跡とも偶然とも言えない全くの0確率。
それは起きた――

“どしゅッ!!!”
 
GM(サダルメリク):「……なん…だと…ッ」
 
それは信じられない光景。
サダルメリクすらもその状況に唖然とし、自らの腕を見る。
 
振り上げたはずの手、力が集ったその瞬間。
彼のその手は“床より出現した光の剣”により深々と貫かれる。

ミシュラ:「…これは…」
エルナトが 語りかけてくれたような そんな温かみを感じる。

ルナ:「あ……」
何が起きたのか。その瞬間には理解できなかった

GM:サダルメリクが手に集めていた力は全て霧散する。
そう、ミシュラには分かった。
サダルメリクを貫いた光の剣、あれはエルナトの星宝。
エルナトが僅かな奇跡を信じて配置した。君達の敵を貫くための刃。
 
ミシュラ:「…エルっち…僕達、ずっと一緒だったよね。ありがとう」
エルナトが何を感じ、その場に剣を残したかは判らない。
だが、確かに感じる。僕達は、共に戦っているのだという事を。

GM(サダルメリク):「エルナト……ッ!!馬鹿な…!!」

ルナ:「そう……エルナト様の…」

GM:サダルメリクの行動はエルナトの剣により妨害!そちらのターン!ルナの行動です!

ルナ:しかし当てられるかな……<バーサーク>します。通常攻撃。
「この瞬間っ、無駄にしない!」
0・8で……フォーシュンなんですが追加は7

この後、ルナが攻撃を仕掛けるもサダルメリクの運命支配によってダイスを変更され
その攻撃は届かなかった。
そしてクリンナップにてサダルメリクの<スローネルーチェ>が放たれるも
二人はそれに耐え、次のターンに繋げ遂に光明を掴んだかと思えたその刹那。

GM:ではターンが終了する瞬間に《アルビオン》!
5D10の実ダメージによる奥義を放ちます!彼の手から生み出される終末の光!
それが君達へ向けて放たれる刹那――
 
“どごおおおぉぉぉぉぉん!!!”
 
それはこの神の星王殿に響く轟音。
 
それと同時にこの空間にある床が砕け、地が揺れる。
 
サダルメリクがそれにバランスを崩した瞬間
もうもうとあがる土煙の中から現れる一人の人影、それは―――。
 
GM(ガーディ):「【魂の仮面(イデア・マスカレード)】――“心眼剣”」
魂の仮面を被ったガーディがサダルメリクの眼前にて姿を現した!

ミシュラ:出たー!ここでくるか!

ルナ:「ガドフリート様ぁ!」
来たのかアンタ!

GM(サダルメリク):「?!ガドフリート!貴様、その状態で…!」

ミシュラ:向こうの敵は全滅させたのか、もしや(笑)

ルナ:てか心眼剣、忘れてた(笑)(←心眼剣のPCを使っていた人)

ミシュラ:マジですかい、判ってて言わない空気だとばっかり(笑)

ガドフリートが自らに特攻を仕掛ける刹那、サダルメリクは運命を支配する。

この刹那、この瞬間において、この一瞬において
彼の攻撃を回避し、自らが生き残る可能性。運命。偶然。その可能性。可能性。可能性。

「ッ?!! 」

「どんなに可能性を探っても無駄だぜ、サダルメリク。
もうオレとお前の運命は一つしかない。その運命以外は選ぶ事なんかできはしない」

ルナ:「――ッ! ガドフリート様まさかっ!!」

GM(ガーディ):「オレはもう命を捨てる…お前を倒すために!
オレのこの命を掛けた攻撃を防ぐ運命などは無い!!!」

その運命すら覆すガドフリートの決死の刃にサダルメリクは咆哮する。
 
「ガドフリートぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」

ミシュラ:「がっちー!!そんな…そんな事…!」

GM:煌くガーディの心眼の剣。
それに全く同時に対応するサダルメリクの一閃。

ルナ:「そんなっ!」
(一手、あと一手、私が倒しきれなかったから……?)

刹那、君達の眼前にて腕が飛んだ。
 
ガドフリートの左腕はサダルメリクの一閃により吹き飛ばされルナの足元に落ちる。
 
だが――
 
「………こんな…馬鹿…な……」
 
ガドフリートの放った最後の剣。
心眼剣・流転転生の太刀は、サダルメリクの胸に深々と刺さっていた。
ガドフリートの仮面が静かに音を立て、崩れる。
 
「…こんな…ところで…私は…負ける…わけ、には……ッ」
 
サダルメリクはゆっくり後ろに下がる。
その胸から流れるのは彼の命の源。

ルナ:「その隙、貰ったぁーーーー!」真空斬!

ミシュラ:止めます!「…もういい。充分だよ」

GM(サダルメリク):「――……ッ!」
サダルメリクが死を覚悟した瞬間だった。
ルナの一撃をミシュラが静止する光景を見て、サダルメリクは呆然とミシュラを見る。

ルナ:結果は確認しない。
ガーディに駆け寄るよ!脇目も振らないよ!
「ガドフリート様、何故来たのですか!」問う。

GM(ガーディ):「ん?…はは、そりゃお前、言ったじゃん。オレがお前を守るって。
エスコートするってな、ちょっと遅れちまったけど」 
腕から流れる出血は致命傷の域にもかかわらずガーディはいつものように笑って答えた。

ルナ:「でも……っ」

GM:一方のサダルメリクはただ静かにミシュラへ一言問うた。
「……何故……」

ミシュラ:サダルメリクに近付きます。
「メリやん…今は道を違えてしまっているけど、一緒に頑張ってきたよね。
数百年間、ずっと。僕達はこれから神サマのやろうとしている事を止めるけど…許して欲しいな。
メリやんともう、戦いたくないよ」
困ったように笑い、うつむく。

GM(サダルメリク):「ミシュラ…お前は……」
君のその言葉に沈黙するサダルメリク。だがやがて口を開こうとしたその瞬間。
 

『サダルメリク、お前の役目は十分果たした。ご苦労だったな』

 
それは空間に響き渡る声。魂をも揺るがす存在の声。
 
そして、一筋の光がサダルメリクの胸を――貫いた。
 

◆ミドルシーン13 〜人形が抱いた愚かなる幻想〜
それは本来、一つの存在として生まれるはずのデミウルゴスであった。
 
だが、そのあまりにも強大すぎるデュナミスの魂、質量・能力、そして星宝。
それらは一つの器としては納まりきれないほどの量であり純度。

故に神はその魂を二つに分け、二人の兄弟としてそれを誕生させた。
 
そうして生まれたのが至高の運命干渉能力を持つ兄と最高の幸運を持つ弟。
 
二人は別たれて尚、強大な魂と能力をもちプロパテールbその身に継承する。

二人に取ってお互いは自分自身も同然。
人としての感情などから切り離された存在のデミウルゴスであったが
この両者の間にあった形容できない繋がりは“絆”と呼ぶものに近いものであったかもしれない。

お互いのどちらかが死ねば、それはまさに自分自身の半身を無くす事と同義。
もしそのような事態が起きれば、彼らはその重みに耐え切れず
文字通り魂が引き裂かれ砕け壊れであろう最も忌避するべき悲劇。
ゆえに二人の兄弟はいつしか神への忠誠心以上に
お互いの存在を大事にし始めていたのかもしれない。
 
そうしたある時、サダルメリクは知った。
神の本当の計画、その正体に。
 
運命を支配し、干渉する星宝を持つが故か、彼は神のその計画を知り
自らその神の計画の最終段階到達への協力を約束する。

それは自らの半身にして弟、サダルスードを未来永劫において神の隣に座らせるために。
 
己が命も、他の全ての生命も、同胞のデミウルゴスも全てを捧げ
弟のみを生かし、神の隣で永遠に生きてもらうために。
 
サダルメリク自身も何故、これほどまでに弟の命のみを望んだのかは理解できずにいた。
それは恐らく愛と呼ばれる感情に近いものであったのだろう。
 
人は間違いを犯す。
それは感情や過去によって起きた出来事が要因となっている。
それを示すのが原則として、この世界の法則の一つである『無限回帰』がそれを証明している。
 
だからこそ、サダルメリクもまた過ちを犯したと言える。
弟のため、全てを捨てたその行動は紛れもなく“人間の起こす行為と同じ”ものであったのだから。
 
◆    ◆    ◆

GM(サダルメリク):「―――が…ッ」
胸を貫かれたサダルメリクはその肉体が水晶と化していく。

ミシュラ:「メリやん…!」
唇を噛み締める。

GM:それはまさに彼の魂、デュナミスが“ある存在”によって吸い上げられている証明。
「…イシュタル様…貴方は初めから……!」

『お前達、デミウルゴスは【エンテレケイア(完全なる扉)】を完成させるためのパーツに過ぎん。
安心しろ、お前の魂も弟の魂も我が【エンテレケイア(完全なる扉)】の中で一つとなろう』

GM(サダルメリク):「ッ……すまない…ミシュラ…すまない…サダルスー……――」
その最後の言葉を紡ぐことなく、彼の…サダルメリクの魂はこの場より消失した。
後に残ったのは抜け殻となった彼の肉体、水晶となった姿のみ。

ミシュラ:「メリやん…メリやん!」
肩をゆさぶり、どうにかして彼のデュナミスが吸い上げられるのを止めようとするが…徒労に終わる。
「…っ…う…また…止められなかった…」
涙を落とし、サダルメリクの肩に頭を乗せる。

GM:見ると、君達の眼前にあった扉。
神の座《エンピレオ》へと唯一繋がる神の門が開いていた。

ルナ:「……ガドフリート様、お別れです」

GM(ガーディ):「…ルナ、行くのか」

ルナ:「約束、守れなくて申し訳ありません」
立ち上がり、手袋を脱いでガーディに渡すよ。右腕も、左腕も、醜いやけどのあとが目立つ。
「ガドフリート様。私、今とても幸せなんですよ」

GM(ガーディ):「…馬鹿、お前…約束守れないなんてわからねぇじゃねぇか。
オレはちゃんと待ってるからな」

ルナ:「最後に、貴方に会えました」

GM(ガーディ):「最後じゃねぇよ。また会えるって」

ルナ:「あの神を超える方法は…一つだけ。私は幸せですわ。
アケルナル様と同一になれるんですもの。だから、貴方が気に負う必要はありません」

GM(ガーディ):「…その方法を取ったからと言って、お前が100%死ぬとは分からないじゃないか」

ルナ:「人の身で、プロパテールと同調し、さらに神と戦えば……私の体は持ちません。
分かりますもの」

GM(ガーディ):「わからねぇだろう!いいか、オレは何度でも言うぜ。
あの樹の下で待っているからちゃんと会いに来いよ」

ルナ:「限界を超えてなお、サダルメリクに届かなかっんです」

GM(ガーディ):「そうだとしても、お前は生き残れ。
死ぬ覚悟した奴よりも生き残る覚悟をした奴の方がずっと強いんだ。オレのようにな」

ルナ:「私は貴方ほど強くない」

ミシュラ:「ルナっち」
涙を拭いてルナに話しかける。
「メリやんに勝てる可能性をつかめる事は、奇跡そのものだったけど
それでも僕達は掴んだじゃない皆の力で。一度奇跡が起きたんだ、いくら起きても不思議じゃないよ」
そう言って、ルナに笑いかける。

GM(ガーディ):「そうだぜ。だからぐだぐだ言ってないでさっさと行けよ!
お前達が帰る場所はオレが守っててやるからよ」

ルナ:「最後に、ガドフリート様。良い事を教えて差し上げましょう」

GM(ガーディ):「うん、なんだ?」

ルナ:「覚悟、執念、欲望、憧れ……全て人間の感情、その表れ。
デミウルゴスに感情が無いというのは嘘です。ただ、人間がもつ感情の全てを再現できていないだけ。
ミシュラ様がいい例ですわ」

GM(ガーディ):「…はは、そうだな。もしかしたらオレ達は気づいていないだけで、
本当は“心”ってやつがあるのかもしれないな。
それに気づかず表現する方法を知らないだけかもしれないな…」
言って彼は君を慈しむように見る。

ルナ:「行って来ます。そして、さよなら」
逃げるように駆け出します。

GM:ガーディは駆け出した君の背に向け最後に声をかけ
そして倒れていたポルクスも目を覚ましミシュラに声をかける。
「…オレも最後まで行くぜ。いいだろう、ミシュラ」

ミシュラ:「もちろん。ポルっちも大丈夫そうだし、後は神サマをしばき倒すだけだ!
帰ってくるよ、がっちー。全員無事で」
そう言ってまだ傷が残っているであろうポルクスを背負い、走り出す。

GM(ガーディ):「ああ。ミシュラ、ルナを頼んだぞ」

ミシュラ:手を振って返答。

そして彼らはその門、大いなる神の座す間へと向かった。
光が満ちるその場所には今までとは比較にならない絶望が座していると知ってなお
彼らはその先へと向かった。
 
◆    ◆    ◆

『お前らしい茶番だったな、ガドフリート』

「わざわざ待っていただけるとは、それも神の傲慢ですか?それとも慢心ですか」

ガーディは魂に聞こえる声にそう返す。

彼の頭上。このフロアの遥か天上にこの空間一体をも包み込む太陽。
否、太陽の如き炎が存在していた。
 
『なにここまで生き残った奴らには直接私と合間見える権利を与えただけだ。
ここで簡単に消滅させては私もこの星最後の思い出があまりに味気ないからな』

「さすがに傲慢ですね。実に神らしい発言ですよ、イシュタル様」

『お前とも直接合間みえたかったが、その傷では長くは持つまい。
せめて我が業火でお前の魂ごと焼き払っておこう』

ガーディの身体を縛る鎖。それはデミウルゴスの活動を停止に近づける神の呪縛。
頭上から落ちる太陽をその光なき瞳で見上げながらガーディは呟く。


「ルナ。必ずまたあの樹の下で会おう。約束、だ――」


◆クライマックスシーン1 〜絶対悪〜
それは無限とも思える光の通路。その先に広がった光景。
 
それはまさに信じがたい光景だった。
 
――星。
 
一面に存在するのは世界の遥か天上。その更に先を抜けた闇の空間が広がる深淵の宙。
 
星の海と呼ばれる光景。
 
その光景が今、ミシュラ達の眼前に広がっていた。

見るとそこはとてつもなく広い空間。
床は今まで見た事の無い材質で構築され、透明な壁の向こうには星の空が広がっている。
 
そしてその壁の向こうの眼下に見えるのは君達の世界「エル・ユーナ」の姿。 

ルナ:「奇麗……ね」

ミシュラ:「うん……とても、綺麗だ」

『ようこそ、この神の座《エンピレオ》に足を踏み入れたのはアケルナル以外では
君達が始めてだよ。ミシュラ、ポルクス、それにルナ』

 
それはまさに神の声と相応しき全てを圧倒する魂に響く声。
 
見ると星空を背に一つの玉座が存在した。
 
そしてその玉座に座る銀色の神を持つ圧倒的存在と
その存在に傅くように床に座っている少女・カストル。
 
「もう、ここまで来て私が誰かと言わずとも解っているだろう」
 
その存在は言った。 


「私が神。星王イシュタルだ」
 
ルナ:「貴方が神か」

GM(イシュタル):「ああ、私こそがお前達の神、イシュタルだ」

ミシュラ:「神サマはさ…この世界を綺麗だと思わないの?かけがえの無いものだとは?
物事を考え、感情があり、生きている皆を殺すことに何も思わないの?」

GM:彼は君達の来訪に対し、ただ愉快な笑みを浮かべ、ミシュラのその問いに答えた。
 
「思わないな」
 
GM:それは微笑みを浮べたままの答え。彼にとって至極当然の何の問題があるのかという答え。

ルナ:「ミシュラ様、もう問答に意味はありません」

ミシュラ:「そう――安心した。僕達と君とは違いすぎるよ、『イシュタル』。
もう、分かり合う道は無いんだ」
そう言って静かにイシュタルを睨みつける。

GM(イシュタル):「まあ、待て。折角ここまで来たのだ。
少し私の話しを聞いていかないか。神が語るある御伽噺を」

ミシュラ:何も言わず、じっとその話を待とう

ルナ:「……聞くだけならば」

GM(イシュタル):「かつてこの世界を支配していた神王クレイムディア。
私は数千年前に一度この星を訪れ、彼とある約束をした。
それが『無限回帰』の崩壊。クレイムディアが私にそれを頼んだ理由は何故だと思う?」

ミシュラ:「人が…同じ過ちを犯すから?」
ぽつりと答える。

GM(イシュタル):「違うな。神の本質は――傲慢だ」
 
「クレイムディアが無限回帰の崩壊を望んだのはただ一つの理由。
自分の魂が“この世界のシステム”と言う牢獄に捕らわれ続ける苦痛と屈辱から解放されるためだ」
 
「如何にも己を神と認識する傲慢なる存在の考え方だとは思わんかね?
だが、私はクレイムディアのその望みを叶える代わりに“この星を譲り受けた”
だからこそ私は再びこの世界に降臨し、お前達を支配していた」

それはまるで人や世界を記号として扱うような物言い。
彼らにとって世界や人もただその程度のものとしか認識していない。

ルナ:シムシティ?

ミシュラ:なんて傲慢。意識やものの考え方が違いすぎる。

GM(イシュタル):「君達はこの世界が誕生する以前、神々が存在していた時代を知らないだろう」
彼は語る。それはあまりに途方もなく次元が違いすぎる話を。

ルナ:「人の身に余る知識ですもの」
知りえない。人は人の歴史しか知りえない。

GM(イシュタル):「君達は“無(フェムトー)”を知っているかな。
神すらも存在しなかったこの世界…いや星の海全ての原初の頃を」

神は語る。
それはもはや人の世すら生まれていなかった遥かな最古、神々の時代の黎明、その始まりを。
 
「“無(フェムトー)”とはそれ自体がすでに完全にして、完璧な空間であり
全ての意志が統合された究極の形だった。個にして全、全にして無。
“あれ”を越える存在や概念など一切合切、存在しない。
森羅万象、世の理、存在空間すべてにおいて比類すら出来ぬ」
 
「だがやがて、その“無”のみが支配するその場に最初の存在、最初の神
“始祖神”と呼ばれる存在が生まれた。
彼女の誕生と共に“無”すなわち“無空間(フェムトー)”は我々の認識の外へと位相転換した。
我々が決して認識できず、追いつけない次元へと消えたのだ」

神のその言葉が真実であるならば、今我々が存在している世界や空間
それら全ては“無”から零れ落ちた低次元の世界に過ぎないということ。
そして、それが事実であるならば“無”と言う存在はなくなっただけではなく
単に我々が知覚できず干渉できぬ域にあるだけで、すぐ傍、遥か位相の先
高次元の彼方に常に密接するように存在しているという事。

「そこから神々の時代と言うのものが始まったが…
神という存在にはおおよそ二種類の存在があった。
君達は“絶対悪”と言う存在を信じるかね?
生まれた瞬間にそれには悪の感情だけしかない。
破壊や憎悪、すべての消滅のみを願う。悪以外の感情は一切無い。
そんな限りなく純粋とも言える存在がいると思うかね?」

それは空想上の生命であり、架空の概念であろう。
ただ一つの感情、概念、それらのみしか持たない存在など通常存在しえるはずがない。

「たとえ、どんな人間であろうとも生まれた瞬間から唯一つの感情。
ましてや悪の心のみを持ち、それのみを唯一絶対として、それ以外をものを
決して持たず知らずと言うのは倫理上、存在するはずがない。それは人が知る一般論だ」

人も神もなにがしかの生命もあらゆる概念や本能を持ちえているはず。
ただ一色の色のみしか持たない存在などいるはずがない。
そう、通常ならばそう考えるはず。だが――
 
「では、そもそも“心”とは何だ?
なぜお前たち人間には“感情”がある、“心”と呼ばれるものがある。
それはどこから生まれる?」

それはあらゆる哲学者、心理という現象を追い求め、その答え探し続けた
無数の人間が行き着き、今もなおたどり着かぬであろう究極の答え。
それを眼前の神はあっさりと示した。
 
「教えてやろう、お前達が持つ“心”の正体を。
お前達人間は…いや私も、神も、その魂の中にある“門”を抱いている。
その門はこの次元では到達できないある場所へと繋がっている」

一拍の間を置き、神は宣言する。

「それが“無空間(フェムトー)”だ」

それは誰もが予想だにせず、行き着くことさえ出来なかった真実の答え。真理の全て。
 
「“無空間”…即ち“無”には全てが存在する。そこは完全なる全、本来意味での始祖。
そこには【怒り】【悲しみ】【愛】【喜び】そういった全ての感情や意志、本能、概念
それら全てが内在し、存在している。
お前達の心とは“無空間(フェムトー)”に繋がり、そこにある【感情】を受け
あるいは魂が接触する事により生まれているのだ。
だからこそ、すべての人間や神に同じ感情が芽生える。
我らは原初の空間と魂で繋がっているのだから。
そう心とは生み出すものではなく“無と繋がり、そこから感じ取っているんだよ”」

心――。
それは即ち、人の中で生み出される感情や概念などではなく
全ての人間が同じ場所につながり、そこから引き出していたという真実。

そうした誰も想像だにしなかった答えを前に神は更なる真実を語る。

「だが、ここで一つ。その心を生み出す門。
それが一つの感情のみとしか繋がらない存在がいたとしたらどうする?
たとえば、その者は生まれた瞬間から【憎悪】という感情のみとしか繋がりを持てず
それ以外の感情と繋がる事が出来ない存在がいたとしたら?」

もし仮に、仮にだが、確かにそうした無数の感情、概念の渦巻く無の空間の中で
“たった一つの感情あるいは概念”としか接続できない生命が生まれたとしたら、それはまさに――
 
「それはすなわち、【絶対悪】と呼ばれる存在となる」

言って神は自らが告げたかった事実を今ここに明かし始める。

「かつて、神には二種類の存在がいた。
君達のように全ての感情と繋がる神と一つの感情、概念のみしか繋がれない【唯一存在】が。
なぜ、遥かな太古に存在した神々の時代が滅びたのか教えてやろう。
それは【絶対悪】と呼ばれる【唯一存在】とされる神…邪神によって滅びを迎えたからだ」

そう、一つの時代や何かの存在が潰え滅びたというのなら
そこには何がしかの原因が必ず存在したはず。
ゆえに、今ここで彼によって示された答えが、神々の時代が幕を降ろした真実に他ならない。
 
「神とその邪神との戦いは無数に広がり
やがては長き大戦の後に双方共に滅び去っていった」

そこまで語り彼は何かを含むように最後の一言を告げる。

「ただ一人、生き残った邪神を残してな」

その時、浮かんだ彼の凄惨な笑みを、もしもただの人間が視認していたら
その時点で魂が凍りつき、死に至ったであろう死病の笑み。
彼から放たれていた神々しい威圧が今や、深淵の底に広がる死毒の圧へと変化していた。
 
「もう理解できているだろう。
私こそが、神話の時代より生き残りし邪神――【絶対悪】と呼ばれる存在だ」
 
彼の語りは静かに終える。そして、傍らのカストルに対し彼は
これ以上ない程の寒気を覚えるほどの優しい微笑みを持って言葉を放つ。
 
「教えてやろう、カストル。
お前の望み、デミウルゴスが人間となる……そんな方法など――無い」
 
彼は微笑み優しく、そして絶望的な事実をカストルに突きつける。
 
「……う、そ……そん…な……」
 
その事実を聞き、ただ絶望の表情を浮かべカストルは力なくすわりこみ、ただ空虚な瞳を彷徨わせる。

「その絶望の表情、やはりいい。お前達の絶望を見るのが私の唯一の愉しみだよ」
 
そう神はカストルの絶望を心の底から楽しんでいる。

ミシュラ:神の イシュタルの「望みをかなえてやる」という言葉。
カストルにはどれ程魅力的に聞こえた事だろう。それを信じてここまで来たカストルにとって
その言葉はどれほど残酷に彼女の心をかき乱した事だろう。
「…っ…かっちゃん…」
手を伸ばし、カストルを抱き留めたい。
こんな事をして喜ぶような存在がこの世に存在していいのか。
こんな仕打ちを純粋に楽しむような存在が―――!

ルナ:「邪神、その名に違わぬ存在です」
覚悟は決まった。アケルナル様のためではなく、ガドフリート様のためでもない。
その邪悪(イシュタル)を打ち砕く。そのために…愛しい邪悪(アケルナル)に身を委ねよう。
 
「人の身ながら、貴方に反逆させていただきます」

GM(イシュタル):「ふむ、よかろう。では最後の余興を始めようか――」
 
言って、イシュタルはゆっくりと玉座より立つ。
 
「この星を喰らい、次の星も喰らい、やがて全ての星を、その生命を喰らい尽くそう。
私にあるのはこの【侵食】という意志と感情のみ」

今や、彼はこの世界を統べる星王イシュタルなどではない。
ただ【侵食】という概念(理)が全ての絶対悪、唯一存在の神に過ぎない。

「では、ルナ、そしてミシュラよ。
お前達に神へと刃向かう権利を与えよう」
 
流れ込んでくるのはただ圧倒的なまでの魂の存在感。
それはまさに全てを喰らい尽くす事しか知らない【絶対悪】の魂の圧力。
気を抜けばその瞬間に君たちの生命、肉体、魂、全て侵食され奪われるというほどの。

ルナ:「嗚呼、月は軌道を外れ星に近づく。
 星を映し星に添い星を想う鏡なる月。
 我は河の果てに堕つ月。
 我は水に弄ばれ砕け溶け流れていく。
 我はもう全て河に流れよう」

ミシュラ:憎しみは無い。彼は、そういう存在として在るのだから。
しかし許す事は出来ない。彼は、存在として自分達とは違いすぎるから。
この身の力がどこまで届くかは判らない。
だが、イシュタルが次の破壊の為に破壊し続けるというのなら
僕達は次の希望の為に希望を紡ごう。

「神話の時代に還れ!イシュタル!」

GM(イシュタル):「いいだろう――神に、このイシュタルに抗って見せるがいい」

ルナ:「【同調魂(メノン・シンクロ)】最終段階」

ルナの眼が……輝きを失い、別の輝きが灯る。

「【河の果てより来る者】」

その発動と共に今、ここに一人の少女は最後の変革を為す。
 
「最後に一言だけ……イシュタル、私に殺されろ!」
 
もう私はそこにいない。

GM:ルナと、そのミシュラの咆哮、宣言と同時に最後の戦いが幕を開く――!
 
それは物語最後を奏でるための扉が開かれた瞬間でもあった――。

 
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