第二十七章「黄金の王の行進」
◆GMシーン 〜黄金の王の行進〜
――ヴァーレンハイト王国王城にて

「ふざけるな。私は貴様如きを王と崇めるつもりはない」

それはヴァーレンハイト王国・王の間に響いた忠臣の声。
王を支え、王の剣であり盾である5人の星。
“光輝五星”その内の一人“黄昏の剣”ロクス=ヴェノビスは剣を抜き
その矛先を目の前の玉座に座る王――レイルに向けていた。

クフィル:ロクス…死んだな…。

GM:…言うな(笑)

「我が主は後にも先にもベテルギウス様ただ一人。そこは貴様のような輩が座るべきところではない」

誇りと矜持を踏みにじられたように声高らかにそう言うロクスに
光輝五星統括セオドルが仲介に入る。

「ロクス。卿の気持ちも分からぬでもない。
だがレイルの持つ剣は【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】
それが我が国の建国の証であり、あの剣が王を顕す印である事は卿も知っていよう。
すでに帝国との戦争が眼前にある以上、形だけでも王の資格がある者を――」

「黙れ、裏切り者。貴様が宰相の劣等と共にこの国に対してクーデターを起こしたのはすでに知っている。
俗物共が。貴様らのような己の欲で行動する者共にこの国を預けられるわけがない」

ロクスの発言は正しいものではあった。
現在のこの王国の王位継承にしても軍事革命にしても
平和な時世であれば決して許されるような所業ではない。

だがそれはあくまでも一般論であり、現実の戦争を間近に控え
王国の存亡をかける事態であればそれは別である。
ましてや、戦争の背後に存在する“機関”の存在を知るレイルにしてみれば――

「構いません、セオドル統括。ロクス卿の言う事も最もです」

言って立ち上がりマントを翻し、その傍らにあった黄金の剣を手に取りレイルは言う。

「そこまで僕に対して不満があるのならばここで僕を討つのがいいでしょう、ロクス卿。
それで少なくとも目障りな僕と言う存在は消えますし
“欠片”の継承者が一人消えて“貴方方”の計画もやりやすくなるのでは無いですか」

そのレイルの言に不愉快そうに顔を歪め、ロクスは剣を抜く。

「…いいだろう。ならば貴様は王座を掠め取った逆賊としてここで私が葬ってやろう」

宣言と同時にロクスは左手にある円月輪を放つ。

そして展開するのは黄昏の事象。
彼の持つ星宝【黄昏の愚者(トワイライト・フールズ)】の発現。

この事象に対し驚き動揺する他の光輝五星だったが
レイルからすればこれはすでに周知の事であり、今の彼に取っては何ら恐れる要因ともならない。

「死ね!人間ッ!!」

黄昏の愚者の中でロクスの剣が放たれる。

だがそれに呼応するようにレイルの持つ黄金の剣が光を放ち、そして―――

“ずばあああああぁぁぁぁんッ!!!”

「……なに…ッ…」

ただ一太刀。

それだけでロクスの展開した領域は砕け、その先にいたロクスの体さえ
レイルの放った黄金の一閃は貫いていた。

「……その欠片の力……完全に、引き出して…いたのか……レイルッ」

片膝をつき、ロクスは最後にそう呟いた。
それは神人であった彼が相手を下等な人間と思い込み、挑んだ故に結末であったろう。

“光輝五星”の一人にして“機関”オグドアス12を持つ者ロクスは
静かにその身が光の粒子に包まれ消滅をする。
この現象を始めて見るリアン、ナナリアは驚きの表情を隠せないが
それに全く動じる事なく、セオドルは他のメンバーへ確認を行なう。

「他にはレイルの国王就任に対し不満を持つ者はいないな?」

そのセオドルの言に肯定するようにこの場にいた他の“光輝五星”
また国の重臣達は沈黙を持って頷く。
それを確認し、レイルは王座に座り宣言をする。

「すでに知っての通り。帝国軍は王国との国境レトの丘にて軍勢を集結させています。
その数は帝国に存在する無数の市民達の志願により我が軍の倍に匹敵します。
この戦争、最初の戦の勝敗により今後の勝敗が決すると思ってください」

レイルはセオドルに用意させた大陸の地図を広げさせ、自身の戦略と戦術構成を話す。

「帝国軍が軍勢をレトの丘に集結させた以上、こちらも軍勢を同じくレトの丘へ集結させます。
セオドル、ナナリアはそれぞれこの王国のほぼ軍勢を率いて出発してください。
遅れて僕も精鋭部隊を率いて出撃をします。セオドル、ナナリアは戦場に着き次第、陣を展開。
にらみ合いが理想ではありますが、戦いと成った際は勝敗にこだわらず
なるべく戦いを長期に伸ばしてください。これについては後ほど詳しく説明します」

レイルのその言葉にセオドル、ナナリアは了解の意を取る。
この後、レイルにより戦略構想に納得をした一同は勝利の確信を得て
全員がこの王座の間より退出をする。

ただ一人、リアンを除いて。

「…レイル王。二つほど、貴方に問いたい事があります」

「なんでしょうか。リアンさん」

つい先日までその立場は逆であった二人だが
レイルはあくまでいつも彼女に接するように自然体で接していた。

「まず一つは私と我が精鋭隊に出番がない事への疑問。
そしてもう一つが、貴方とセオドル統括の真意についてです」

そこまで話し、リアンはそれまでと態度を変えまるで食って掛かるようにレイルへと問い詰める。

「クフィル殿下の親友にして騎士であるお前が王座の簒奪など、どういう了見だ!
お前はクフィル殿下に対し、あれほど忠義や友情を置いていたはず。
それをセオドル統括と結託し軍事クーデターによる簒奪など、そんなに権力が目的か!
それとも殿下ではこの戦争に不足故にお前達が取って代わるとでも言うのか!」

声を露に感情を表すリアンに対し
レイルはいつもと同じまるで包み込む太陽の光のような優しい雰囲気を携え答える。

「リアンさん。まず僕は別にこの国の王になりたくて王座に就いたわけではありません。
この国の王に相応しいのは後にも先にも僕の親友フィル以外にはいません」

微笑みを浮かべ宣言するその言葉にリアンは一瞬言葉を詰まらせる。
それは虚偽や真意をごまかすために取り繕った言葉などではなく
レイルの中にある本心そのものであったから。

「僕が今、王座に就くのはフィルの騎士、影としての行為と思ってください。
今、フィルは大きな敵と戦っている。
フィルがそれに集中できるようにそれ以外の事や邪魔になる物は全て僕が請け負う。
だからこれは、その為の僕の戦いなんです」

リアンはレイルの話す言葉、そしてその瞳が持つ偽りなき光にしばしの沈黙の後、納得した胸を伝える。
そう、この大陸、いやこの世界においてレイルほどフィルを知り彼の親友たり得る人物は他にはいない。
それをリアンは思い出す。

「…殿下の敵と言うのは“機関”と言うやつでしょうか」

「!知っていたのですか、リアンさん」

「ええ、先日戻られた殿下が言っておられました。ですが、分かりました。
貴方がクフィル殿下の為に戦うというのならば私はこの剣を貴方に捧げましょう」

リアンは自らの剣をレイルに捧げ、その向こうにいるであろうクフィルの為に戦う事をここに誓う。
それを見てレイルは微笑みを浮べる。

「ありがとうございます。リアンさん。それでは貴方に僕個人のお願いを託していいでしょうか」

「…なんでしょうか」

「貴方は自身の精鋭部隊を率いて、ミシアン領地に向かってください。
ただし、これは内密に王国内部の者…特にセオドル統括にバレないように迅速に行動して下さい」

「…ミシアン領地に?何故でしょうか」

リアンが思い浮かぶ疑問も最もである。戦争は王国と帝国によるもの。
であれば残り一割に該当するミシアン領地へ軍を送る事に一体何の意味があるというのか。

「僕の予想が正しければ、そうする事できっとフィルの助けになる。
僕を信じて行動してもらえませんか」

「…分かりました。数日中に出発できるよう内密に事を運びます」

レイルのその真摯な態度を信用し、リアンは静かに納得をする。
しかし、先程一つ引っ掛かったワードに対し、リアンは最後の問いかけを目の前の王へとする。

「時に、セオドル統括に内密に進めるのは、何故でしょうか?
貴方とセオドル統括の真意が一緒ならば…」

「いいえ、僕とセオドル統括の真意は恐らく違います」

リアンが言おうとした事をレイルはすぐさま反論する。

「今、僕とセオドル統括が協力するのはあくまでも帝国打破という目的が一致して
それにより協力関係を結んでいるにすぎません。セオドル統括の真意は僕も聞かされていませんが…
恐らくあの人の目的は僕とは異なるものです」

レイルのその発言には彼には珍しく他者を懐疑する感情が含まれていた。
この太陽のように真っ直ぐな青年が言ったその言葉に納得をし
静かに敬礼をし王座の間より退出する。
残されたレイルはただ静かに“欠片”の一つ【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】を握り締める。

「この世界の未来、フィルが治める王国の為にも僕はこの【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】を継承した。
この世界に残る脅威の残滓を取り払うためにも」

それは決意に満ちた表情。友の為に騎士は己の戦いへと赴く。

「――例え、その果てに僕の命が消えようとも
君の王道が世界の未来を支えてくれると信じているよ、親友」

そう歩むレイルの胸にただ一つ過ぎる。ある少女…自分をマスターと慕うマシーナリーとの約束。
ライラとの約束を思い出しレイルは僅かに哀しみの表情を浮かべた。

◆GMシーン終了

クフィル:普通に泣きそうになった!!!

GM:なぜ(笑)

クフィル:いやぁコイツが親友でよかったなぁと(笑)

GM:確かに(笑)

アスタロト:凄く頼りになるよ(笑)

ライラ:イケメンすぎると思います。


◆オープニング4 〜ミシアン領地〜
そこは森に囲まれた美しい領地。
まるで太古の神々の時代をそのまま反映させたかのような大地がそこにはあった。

ライラ(燕):「つぴーつつぴー」

GM:そんなSE聞こえるね(笑)
で、現在、君達は飛空艇より、眼下のミシアン領地を見ていた。
ちなみについさっき全員船長にたたき起こされて甲板に上がってきた状態です。
OPのあれはその時、全員がそれぞれ見ていた夢の内容ってことで(笑)

アスタロト:ねむねむ。

クフィル:「ハハッ、いい景色じゃねぇか」
飛空挺の穂先に仁王立ちをして眼下を眺める。
「こりゃぁいつかレイにも見せてやんねぇとなぁ」

GM(アイリーン):「ほら、ようやく目的地が見えたよ。ここがミシアン領地さね」

ライラ:無言で見下ろしてます。
万が一の際の防衛戦プラン、補給路、撤退ラインを策定中……。

GM:ユニ、フィー、そしてユリウスもまた君達同様に眼下の大地を見ていた。

アスタロト:「帝都の文献にもありましたが…実際に見る景色、凄いですね」

GM(ユリウス):「…ここまで来ればもう安心と言っていいだろう。
帝国も王国も安易にミシアン領地に入るような真似はしない。
先にも言ったとおり、ここを治める領主は最強のデミウルゴスだからな」
言ってユリウスは遥か先に見える一つの街を指差す。
「そしてあそこがミシアンの首都だ。このままなら半日で到着するだろう。
全員、今のうちに降りる準備をしておけ」
あくまでも上から目線でそんな事を言うユリウス。

クフィル:へいへい、わかってますよ。

GM:一方、ユニは初めて見る景色に瞳をキラキラさせていた。
「すっごいすっごい〜!ねぇねぇ、フィルもこの光景見るのは初めて〜?!」

クフィル:「おぅ、何度か船長の船には乗せて貰ってるんだけどな。ここは初めてだ」
勿論乗ったのは『無断で』も往々にしてあるのだが。

GM(ユニ):「へぇ〜、そんなんだ。うん、でもここの景色って凄く綺麗。
王国や帝国とはまた違った景色だよね」
そう無邪気に笑いながらユニは君へ言う。
「ここを治めるデミウルゴスさんの力、借りられるといいね♪フィル」

クフィル:「自然との共存を果たしてるっつーか
この景色を見ると1人の人間がどれだけ小さいか分かるな…。
ん、そうだな。まぁ協力してくれるならそれに越した事はねぇな」
ユニに向けて無邪気に笑う。

GM(ユニ):「うん!…でもこんな綺麗な場所を統治してる人ってどんな人だろう。
早く、会いたいな〜」

クフィル:「最強のデミウルゴス、か。いい奴だといいなぁ」

眼下の景色に心を浮かべ、半日後には会うであろうこの地を治める人物に対し
君達はあるいは緊張しあるいは期待を浮べていた。

そう“彼”との出会いがこの物語を急速に加速させる事をこの時、予測すら出来ずに――


◆GMシーン 〜エトワール機関V〜
そこは闇よりも更に深い深淵の間。
そう、そこは機関本部にして機関の中枢を握る者達が座る席。

だがその席に座る誰一人として先日のような余裕を構えて座ってはいなかった。
むしろ、彼ら全員にあるのはただ一つ“焦り”

真紅の席に座る者1:「…先にも報告された通り、我らオグドアス12を統べるベガと
何よりも我らの統治者0ベテルギウス様を失った」

真紅の席に座り、そう冷静に状況を話すがそれが如何なる意味を表しているのか
この場に存在する者は一人の例外もなく理解していた。

真紅の席に座る者2:「ベガの奴はともかく、ベテルギウス様を失ったのは痛いわな〜。
こら、ホンマにワイら機関のピンチなんやないか?」

冗談めかして言うその人物だがしかし、彼の言は事実を突いている。
すでに機関のメンバーは2年の“ある事件”により何人か失われ、それに続き
先日の統治者0とオグドアス12の消失。
それは事実、機関メンバーの象徴と戦力の半分を失った事を意味していた。

真紅の席に座る者1:「それ以上にあのユリウスという厄介な存在が
欠片の継承者共と接触をした事が何よりの失態であろう。この責任は重大だぞ、ミルファク。
『天皇大帝』として帝国を統治するにはやはり、お前では不足だったようだな」

真紅の席に座る者3:「…あんな人間に何が出来るって言うんだよ。
それに僕は君と比べてこれから王国との戦争で忙しいんだ。何もしてない人は黙っていて欲しいな」

自身の統治を貶され、名を呼ばれたミルファクと呼ばれる帝国の影の支配者
『天皇大帝』は不快そうに返す。

真紅の席に座る者1:「…貴様、私よりbェ下位の分際でよくもそんな口を聞けるな」

真紅の席に座る者2:「やめろや、二人共。今はそんな喧嘩しとる場合やないやろう」

自分達が思いのほか危機的状況であることを理解してか
そのように喧嘩腰の二人を諌めるのは十字の傷を持つ男。

真紅の席に座る者5:「僭越ながら…欠片の継承者達と
ユリウス皇子が向かう場所に心当たりがあります。はい」

やがて真紅の席に座り、それまで黙っていた眼鏡を掛けた男が発言をする。

純白の席に座る者:「聞こうか、ヌンキ」

真紅の席に座る者5:「はい、恐らく彼らはミシアン領地に向かうかと…。
彼の地を治めるあの者の力を借りる事が出来れば、現在頭を失った我らを潰す事も可能。
戦略と知略に飛んだ、かのユリウス皇子なら、そう判断すると思いますが…」

その言葉を聞き、この場にいる全ての者達は納得をする。
それはこの場にいる全員が彼の地に存在する最強者の実力を良く知っているからだ。

現在、このエトワール機関に座席する純白の支配者プロパーテルbヘ二人。
それに次ぐ真紅の称号を持つオグドアスb持つ者は六人。
その数を確認し、現在の司令塔を担う純白の席に座る者は宣言する

純白の席に座る者:「ならば、もはや出し惜しみは必要ない。
奴らがこの機関本部を攻める前に、ミシアン領地ごと奴らを根絶やしにする」

その言葉にこの場にいる全員が頷く。

そう、もはや遊びの時は必要ない。

彼らはすでに神に挑み、その神を殺している。
ならばその償いを与えなければならない。罰せなければならない。
それはこの世界を統治する神人としての役割であるのだから。

純白の席に座る者:「ベネトナシュ。アルタイル。シリウス。レグルス。
君達四人にはミシアンに向かい、そこにいる欠片の継承者達とミシアンを統べる彼の始末を任せるよ」

名を呼ばれた真紅の席に座る四人は立ち上がる。同時に自分達四人が選ばれた理由も。

そう、これはもはや総力戦。

ただ圧倒的な力で、ただ圧倒的な数で、破壊し蹂躙し殲滅する。
そこに感情の欠片も存在しはしない。

純白の席に座る者:「ミルファクは引き続き、王国との戦争に専念しておいて。
王国側の国王が欠片を継承した以上、こちらも見過ごせないからね」

真紅の席に座る者3:「…了解しました」

純白の席に座る者:「僕と兄さんはこの本部に残り指示を出すよ。
ヌンキもこの本部に残って置いて構わないよ」

真紅の席に座る者5:「…んふっふっ…確かに私はオグドアスbフ11。
私如きbナは彼らと同行しても足手まとい…。
仰せの通り、私はこの本部で研究の続きでもしておきます」

真紅の席に座る者2:「さて、と、ほな行こうか。久しぶりの総力戦や。
さっきから体が疼いてしかたないんや」

真紅の席に座る者:「…フンッ」

真紅の席に座っていたその四人はそのままの足でこの場より退出する。

だがこの中でただ一人、機関の行く末を確信していた人物がいた事を当事者達はまだ知らずにいた。

 
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