第十七章「それは世界の意志の代行者」
◆幕間シーン 〜真実を知った者〜
「…やはり、そうか」

自分の推測の裏づけを得てイーグルは納得する。

クフィル:(やめれええええええ!!)

ライラ:(お前は知りすぎたっ! とか言われて掃除されるパターンと見た…)

「二つの計画が入り混じっていたから、真相が見つけにくくなっていたんだ。
だがもう一つの方を取り除けば自ずと真実は――出る」

そう己の推理の確証を得たイーグルは、しかし信じがたいと言った表情を浮かべ言う。

「まさか…黒幕があの人とは…」

イーグルは自分の得た真実を噛み締め、ゆっくりと起き上がる。

「いずれにしても、一刻も早く殿下達と合り―――」

「やはり、最初に気づいたのはお前か。イーグル」

“どずんっっっ!!!!”

「―――ッ」

刹那。
イーグルは背後から掛けられた声に反応する事も出来ずに胸を貫かれその場に倒れる。
聞こえたのは声だけ。だが、それでもイーグルにはそれが誰か分かっていた。

「もう少し、その賢さを抑える事が出来れば生き残れたものを…。
いずれにしろ計画を早める必要が出たか」

言ってイーグルの胸を貫いた人物は静かにその場より立ち去る。
だが、イーグルは死の淵で胸を押さえ必死に立ち上がる。
 
「……まだ…死ぬわけにはいかない…この真実を…殿下…達に―――…」

イーグルは自らの血、赤に染まった翼を広げ言った―――。


◆ミドルシーン9 〜それは世界の意志の代行者〜
そして。クフィル達は再び合流をした。
だがその合流地にイーグルだけが集まらない。
やがて、しばしの後――“どさりっ”とクフィル達の前方
すでに深夜となり明かりが消えた通路の奥からそんな音が聞こえる。

クフィル:咄嗟に其方に駆け出す。

GM:そこには血塗れで倒れたイーグルの姿。
「…はぁ…殿下…良かった…まだ無事でしたか……」

クフィル:「イーグルッ!」
誰にやられた…そう言おうとして言葉が詰まる。

ライラ:ひそやかに全周を警戒しておきます。

GM(イーグル):「…すみません…らしくない油断しちゃいましたよ……。
……『機関』と繋がっている人物…分かりました…。
でも…そいつを倒しても…今回の件はまだ終わりじゃありません…。今回の件は二つの……ぐふッ!」
堪らず血を吐くイーグル。

クフィル:血に塗れるのも構わずイーグルの体を抱きかかえる。
取りあえずポーションを取り出します。

GM(イーグル):「殿下…『機関』の連中を倒してください…そしてこの大陸に…平和を……」
必死にポーションの液体をかけるがすでに空洞となったその身体には何の効果も無い。
いや、むしろこの状態で生きている事事態が不思議だろう。

クフィル:「…俺が、『皆が笑って暮らせる世界』を見せてやる!だからそれまで傍に居ろ、イーグル!」

GM(イーグル):「あと…ナナリアに謝っておいてください…帝都の話し、出来ずにごめんって……」

クフィル:「てめぇの惚れた女にくらいてめぇで謝れ!
まだ自分の気持ちもしっかり伝えてねぇんだろうがッ!!」

GM:君のその言葉に笑みを浮かべるイーグル。
「……ははっ…確かに…情けない話しですよね…。やっぱり、昼間に…言うべきだったな……」

「殿下…ナナリア…―――」

GM:イーグルは君の手を握り、いつもの笑顔を浮かべたまま
その命の灯火を―――終えた。
最後に彼は―――『機関』の内通者の名を伝えて。

クフィル:「…馬、鹿…やろ…」
その手を握り締め、冷え逝く友の胸に顔を埋める。

GM(レイル):「…フィル」

クフィル:「お前、まで…居なくなんなよ…」

GM:そっと君の隣でレイルが君の肩に手を置く。
「イーグルさんのためにも…倒そう。『機関』を」

クフィル:「…レイ、誰かが死ぬのって嫌だよな、悲しいよな」

GM(レイル):「当たり前じゃないか、そんな事…」

クフィル:「二度と会えないし、話せないし、一緒に笑えないんだよな」

GM(レイル):「知っているよ。ああ、僕も知っている…」

クフィル:「こんな辛い想い、誰にもさせたくねぇよな」

GM(レイル):「ああ、勿論だよ」

クフィル:「俺ぁよ。皆が笑って暮らせる世界が創りてぇんだよ」
静かに立ち上がる。

クフィル:「…だからよ。今は辛くても、悲しくても、泣けねぇんだよな。…10秒だけ時間をくれ」

GM(レイル):「…ああ」

クフィル:「この想い、決して忘れる事無く胸に秘め戦い抜く決意をするために」
己の手に付いたイーグルの血を使い、自らの左半身へと血化粧を施す。「…往こう」

GM:君のその言葉にレイルは静かに頷く。
そしてユニもまた血塗れのイーグルの姿をしばし見つめ、クフィルへと頷く。
「…うん」

そして、この場にいた全員が理解していた。
この先にあるのは紛れも無くこれまでにない熾烈な戦いだと。
それが今、目前に迫っているという事態に。

◆   ◆   ◆

そして、彼らはその扉の前にいた。
この扉の奥に――今回の黒幕。『機関』に通じる者がいる。
もはや、彼ら全員はこの奥に居る人物がそうだと、はっきりと確信している。

何故ならば、イーグルの死がそれを証明したのだから。

GM:それでは扉を、開けますか?

ライラ:寧ろ蹴破るくらいの勢いを希望します。

GM:では、それで(笑)

『どごん!!』

少し大きな音を立てて扉は開かれた。

そして開かれた先の部屋は静かに夜の闇が支配していた。
明かりは窓から零れる月の光のみ。
そんな部屋の中心で―――そいつはいた。

GM(ベテルギウス):「いきなり夜中にどうしたのよ。クフィル。
それに賑やかなお仲間さんまで連れて、アタシに何か用?」

国王――ベテルギウスが。

クフィル:「…もう演技はいいぜ。糞オヤジ」

GM(ベテルギウス):「演技?一体何を言ってるのかしら、この子は」

クフィル:「俺が来る事だって、解ってたんだろ?」

GM(ベテルギウス):「………」
ふぅっとベテルギウスは静かにため息をつく。そして――

「イーグルか。殺したと思ったが生き残っていたか。
次からはきちんと始末をつけるようにしないとな」

その雰囲気が、変わった。
まるで全てを達観した超越者のように全てを見下した神のような雰囲気に。

クフィル:「…最初から解ってたさ」

GM(ベテルギウス):「最初から、とは。どの最初からだ?クフィル」

クフィル:「何で態々最初にアンタの所に顔を出したと思う?」

GM(ベテルギウス):「さあな。親に元気な姿を見せるというあれか?」

クフィル:「狙うなら俺だけにして欲しかったからさ」

GM(ベテルギウス):「なるほど。それはこちらの配慮が足らなかったな。
すまないな、わざわざ気を遣わせたと言うのに無駄にしてしまって」

クフィル:「聞かせろよ、ベテルギウス。アンタは何がしたいんだ?」

GM(ベテルギウス):「そうだな…。戦争などは別に望んでいない。
こんなものはただの餌にしか過ぎないからな」
言って、ベテルギウスは静かに歩を進める。
それだけで、君達全員はかつて感じた事の無い圧倒的な魂の質量をその身に受ける。
「我々の目的は遥か200年前より一つ――」

「星触、だ」

GM:そしてベテルギウスはライラを見る。
「久しぶりだな。ヒルデベルトのマシーナリー。お前が起動したのを知ったのはさすがに驚いたぞ」

ライラ:「…どちら様でしょうか? 私には、王族の知己は居なかったように記憶していますが」
身構えつついつもの仏頂面で応えるわけですが、正直この人だれですか?

GM(ベテルギウス):「記憶メモリーに障害があるか。だが、これを見れば思い出すだろう」
言って、ベテルギウスはその手袋を外し、その腕を君に見せる。

そこに刻まれていたのは―――『0』の数字。

「お前たちは私を機関の一員だと思ったようだがそれは違う。
私こそが機関の意志。機関の統治者――“0”ベテルギウスだ」

ライラ:「大して、違いがあるようには思われません」 言いつつ、盾を構え。
「訊きたいことは山ほどあるのです。あなたがたがこの世界に張り巡らせた陰謀
200年前の大戦の真実、エトセトラ、エトセトラ。あなたにはここで――斃れて頂きます」
【textystem combat mode.FCS full-contact!】
 金の瞳に銀の光を走らせ。ライラは静かに、言った。

GM(ベテルギウス):「相も変わらず、人の話を聞かないようだな。
話してやるとも私も200年振りに懐かしい顔にあったのだ、昔語りも悪くは無い
だが、話を聞くなら行儀良くする事だ」
言ってベテルギウスは“ぱちん”と指を鳴らす。
その瞬間、ライラは瞬時に四重に及ぶ結界にその身を閉じ込められる。

ライラ:「――!?」
プレイヤーも想定外です。

GM:一つ一つが完璧な攻撃封じを施した強力な結界。
それがわずか一瞬で四重によって構成されている。

ライラ:とりあえず殴ります。盾で。MP使ってもいい。

GM(ベテルギウス):「馬鹿ね〜。殴って壊れるわけないじゃない〜」
ぶっちゃけどう足掻いても壊れないので(笑) MP使っても無駄ですぅ(笑)

ライラ:【てきすと:こうかは いまひとつのようだ!】

クフィル:噴いた(笑)

アスタロト:ポ○モン(笑)

GM(ベテルギウス):「さて、では話を戻そうか。
200年前。我々『機関』は星触によりエル=ユーナが包まれる事を望んだ。
だがそれは貴様の主・ヒルデベルトと一部の連中によって挫かれた」
言ってベテルギウスは手を広げ語る。その仕草、一つ一つに君達は不思議と
目の前のこの男に威圧される感覚を覚える。
「そこで我々は再び『星触』を起こすために生き残った人類達を新たなる大地に移し
そこで我々による完全な統治を行う事にした。
それはあたかも我々が“星触から人類を救った救世主”のように見せかけてな」
言ってベテルギウスは問うように君達全員へ語る。
「ここまで言えば、もう分かるだろう?
そう、このベルシェルス大陸とは我々『機関』によって創生された“箱庭”だ」

ライラ:「つまり口は悪いですが、こういうことですね。大将を張れる猿山が欲しかった、と」
くぐもった声で聞こえることにでもしておいてください

GM:大丈夫。聞こえますから(笑)

ライラ:それならよかった(笑)

GM(ベテルギウス):「分かりやすく言えば、そうだな。
そして、故に『機関』のメンバーの全てはデミウルゴスで構成されている。
これがどういうことか、分かるだろう?」

「『機関』を創設したのは――この世界最後の神。
星王・イシュタル様だ」

それは絶対なる神の名前。
この世界に降り立った人類最後の神の名。
その神が望んだ事――それが即ち、『星触』による世界の滅び。

GM(ベテルギウス):「『機関』の正式名称は『エトワール機関』。
エトワールとは星。つまり星王による機関という事だよ」
稚児に言い聞かす親のように彼はただ世界に存在するその真理を君達へ言い聞かせていた。
「分かるか。クフィル、ライラ、アスタロト、レイル。
お前たちは文字通り、この世界の『神』に反抗しているのだ」

ライラ:ここは主人公に場面を返します。

クフィル:実の父の語る言葉、そして『真実』は余りに重く。
ともすれば心は折れ、膝を屈してしまいそうになる。

GM(ベテルギウス):「我々は世界の行く末の為に行動している。それは大義だ。
それに逆らうのは、あまりに滑稽とは思わんか?」
ベテルギウスは語る。それはまるで道に迷える子供を正しい道へと導くかの如き口調で
「お前達人は神が導かなければならない。そして導かれるお前たちは我々、神を信じるだけでいい」
そこまで言い、ベテルギウスはその手をクフィルの方へと差し出す。
「もう分かっただろう。クフィル。馬鹿な考えは捨てて、貴方は今後の戦争のことを考えればいいのよ。
それが終わったら、貴方に王位を継承し、この時代の平穏をお願いするわ」

クフィル:普段通りの父の言葉。

GM:そう、いつもの父としての笑顔を浮かべベテルギウスは優しく言う。
だがその瞳の色は感情のこもっていない、神の瞳。

クフィル:「…ッざけんじゃねぇぞ。
滑稽だ?己の命をかけて必死に生き抜いた奴等を滑稽って言ったのかアンタ。
冗談は顔と言動だけにしろよ、糞オヤジ。
黙って聞いてりゃ偉そうにゴチャゴチャ言いやがってよ。何が神だ?箱庭だ?
あんまり人を舐めてんじゃねぇよ、デミウルゴス」

クフィルは吼える。己が父にして神たる種族。
機関の統治者である絶対者デミウルゴス・ベテルギウスを前に。

クフィル:「確かに完成されたアンタ等からすりゃ人間ってのは滑稽な種かもしれねぇよ。
けどな、不完全だからこそ。他の誰かと足りない所を補うように繋がりあっていけるんじゃねぇか。
不完全な事は弱さかもしれねぇが、それは可能性があるって事でもあんだろーがッ!!」

ベテルギウス:「クフィル。お前も所詮あいつと…お前の兄と同じ末路を辿るか」
ベテルギウスは君のその言葉を聞き、ただ静かにため息をつく。
その瞳には何の感情も宿っていない。否、一つだけ宿っていた。それは――哀れみの瞳。
不完全な人に失望し、見下し、哀れむ瞳。
「お前には期待していたんだがな。数ある赤子の中から選別して選び抜いたが…
やはり人間はどこまでいってもイデアの記憶に踊らされる不完全な存在、か」

クフィル:「兄貴と同じってどういう事だよ…?」

GM(ベテルギウス):「同じだと言った。お前の兄も同じように我ら『機関』の存在に気づいた。
 そして今のように私のところまで辿りついた。丁度、お前と同じようなものだ。
そして――奴は神の意志を理解できずにイデアの海へと還った」
ハッキリとまるで小石を払うような口調でベテルギウスはその事実を突きつけた。
「私の後を継げる優秀な人材だっただけに残念だったよ」
その言葉とは裏腹に口調には僅かの哀惜も悔恨の感情も乗ってはいなかった。

クフィル:「兄貴も…アンタが殺したのかよ」
奥歯を音が立つほど強くかみ締め、睨みつける。

GM(ベテルギウス):「怒り、憎しみ、悲しみ、希望、お前達はごちゃごちゃだな。
眼前で怒りに身を震わせる君を見て、ベテルギウスはそう淡々と評した。
「それら全てがイデアに踊らされていると何故、分からない?
お前たち、人は何故争いを続ける?全てはイデアに踊らされているからに過ぎないからだ」
言ってベテルギウスは君達全員を見回し、再び口を開く。
「まあ、いい。最後だ。話してやろう」

「お前たち、人が不完全な理由と。我ら神人たるデミウルゴスの違いを。
そして『星触』の真の目的もな―――」

 
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