第四章「世界の理」
◆ミドルシーン1 〜デミウルゴス達の出陣〜
神人(デミウルゴス)、星王イシュタルが生み出した“理”星蝕により進化した新人類。

それは限りなく神に近しき人。だがそれら全てが等しく神と同格とは言えない。
神にも位階があるように人にも存在としての位階があるように
彼らもまた同様に四つの位階よりその存在が区別されている。

漆黒(デカス)種。いわゆる一般的なデミウルゴスであり、その能力は最下位。
星蝕により、イデアを失いデュナミスによる強固な外殻を纏いし存在。
だが、その魂の本質は人よりも上位という程度であり、俗に言われる神の領域には届かなかった者達。

真紅(オグドアス)種。星蝕による洗礼によりその魂が人という器より逸脱し
神人としての領域に駆け上がりし本来の神人に相応しき代表種。
それがこの真紅の種であり、その魂、能力、器、すべてにおいて人を凌駕していると言えよう
だがその限界領域はあくまでも神には届かず
人以上であり神未満。神人たる領分を体現したイシュタルに取って最も理想的な種であろう。

純白(プロパテール)種。
魂の進化が星蝕による洗礼以上により高められ、その領域へと駆け上りし異端種。
その器はすでに神の肉体に近しきものであり、魂の強度も限りなく不変であり不滅。
その存在はすでに旧神話に神の一種と比べても見劣りしない存在。
おおよそ神人(デミウルゴス)達の中では彼らこそが神の代表種であり体現者。
人では決して及ぶ事のない種。故に神(イシュタル)に取ってはその存在はある種の誤算であり
上質の“素材”としてこれ以上なく、まさに羨望と畏怖の二つを兼ね備えし神人。

そして、黄金種(ザラスシュトラ)
その黄金たる種、全ての神人たる位階において頂点に立つ存在。
古今よりピラミッドたる生態系において、頂点に立つ存在ほど
その個数は限りなく少なく故に絶対であると言える。ならばその存在はすでに神人にあらず
ピラミッドの頂点に立つ黄金こそが唯一無二であり、ただ一人の絶対種であり神。
ならばもし、黄金種なる存在がいるとするならば
彼が望む事はただ一つであろう。すなわち――

神を殺し、己こそが神(世界)となる。

◆   ◆   ◆

星蝕による世界変革―――星王イシュタルの降臨より189日。
その日、ミシュラはパートナーであるシグニと共に純白の間に呼ばれていた。

GM:君達二人を迎えるのは四人のプロパテール種。
即ち、ベテルギウス、サダルメリク、サダルスード、アルレシャの計四人。

ミシュラ:(プロパテールとかデミウルゴスとかについての基礎知識はこの時点でありますか!)

GM:(あります!)

ミシュラ:「神サマに仕える…って相当プレッシャーだよね」
この場の静謐さに耐え切れず、隣に居るシグニにだけ聞こえるよう、そっと呟くように声をかける。

GM(シグニ):「そんなん今更だろう〜、ミシュー」
と言いつつも彼も緊張している素振りを見せている。
「さて、それじゃあミシュラたんにシグニ。貴方達を呼び出したのは他でもないわ。
実は貴方達にやってもらいたい任務があるのよ〜」
と最初に言ったのはプロパテールbフ一人ベテルギウス。

ミシュラ:この時点で「たん」付けだったのか!!(笑)

GM(ベテルギウス):(なんだか貴方を見ているとたんを付けずにはいられないのよね〜)

ミシュラ:「…ええと、謹んで承ります」
緊張で上手く頭が回らない。やや体を強張らせながらベテルギウスに問う。
(きっとベっさんって呼びかけられるようになるのはちょっと後に違いない うん(*‘ω‘ *))

GM(ベテルギウス):「まぁ、そんなに緊張しなくてもいいわよ〜、そんなに難しい任務じゃないから〜。
実はね、地上の方で反勢力が集結しつつあるのよ。で、そいつらがどうもこの星王殿目掛けて
攻撃を仕掛ける動きを見せているの。まぁ、その指揮を取っているのはアタシ達と同じ
プロパテール種でありながら、今は裏切り者になっちゃってるヒルデベルトなんだけどね〜。
で、貴方達にはその反勢力軍の一部を足止めして欲しいのよ。
ヒルデベルトと本体はアタシ達がこの星王殿で迎え撃つって事になっているから」

ミシュラ:足止め。それくらいならきっと出来るだろう。
純白種のヒルデベルトサマとでも相対したら命の保障は掻き消えるが、
オグドアス未満の反勢力相手なら今の自分でもいける筈だ。
「判りました!がんばります!」
両拳をぐっと胸の前で固めつつそう返す。

GM(ベテルギウス):「いや〜、さすがはミシュラたんね〜。頼もしいわん〜♪」
ぐっとしてる君を褒めるようにベテルギウス様は相変わらず気色悪い言葉遣いでウインクまでしてくる。

ミシュラ:その言葉使いに多少鳥肌を立てつつも、褒められて悪い気はしない。
この純白種、いいひと。おぼえた。

GM(ベテルギウス):「で、貴方達の配置は南にある大陸…確かムーヴェリアスだったかしら
そこに集結している軍勢を足止めして欲しいの。すでに北と東と西の三大陸にも
反勢力軍が集結しているけど、こちらは別のオグドアスrBに頼んでいるから」

ミシュラ:大陸規模で集結する軍勢の、わずか数人での足止め。
これが神人たるデミウルゴスの任務。神の意思の代行者。
責任の重圧に押しつぶされそうになっていたが、やるしかない。こくりと頷きを返す。

GM(ベテルギウス):「それから、一つ注意をしておくけれど…いい、ミシュラたん、シグニ。
この作戦には経過時間があるからそれに気をつけなさいよ。つい宣告、私達の神である
イシュタル様からのお言葉があったわ。あの御方のお言葉によればこれより48時間後に
星蝕システムの機能が臨界点に達して、それによりこの世界全土を包むほどの洗礼が行なわれるわ。
つまり、あと48時間でこの世界は新たなる次世代に変わるわ」
それと同時に反勢力組織もこの洗礼により消えるだろう事を意味していた。
無論、それにより世界が変革し、新たなるデミウルゴス種が産まれ永劫の繁栄が約束されると
ミシュラも全てのデミウルゴス達が教えられている事だが。

ミシュラ:人の歴史が終わる。それは悲しい事だけれど
来るべき次世代の礎としてやらなくてはならない事なのだ。神妙な面持ちでベテルギウスの言葉を聞く。

GM(ベテルギウス):「ただ…貴方達は一度星蝕による洗礼に耐え切ったとはいえ
これから起こる洗礼は以前の日ではないから、下手をすると
貴方達の魂というよりも器が耐え切れず消滅する可能性もあるわ。
つまり、貴方達は敵の足止めを行ないつつ、星蝕発動より少し前の時間にて
この星王殿が座する大陸、聖地アルアデックに戻る必要があるあわ」
言ってベテルギウスは念を押すように宣言する。
「48時間後、この大陸のみはイシュタル様のシステムにより浮上が行なわれ
次世代の為の箱舟としての役割を果たす大陸になるから、乗り遅れたらだめよ♪」
とそんな忠告する。

ミシュラ:怖すぎる。時間厳守と言う訳だ。
この能力が開花してから、いつも待ち合わせの集合時間などには能力をアテにして
ギリギリまでだらだらしている事が多く、大層時間にルーズになってしまっていた。
猫らしいと言われればそうだが、今回のこのミッションは遅れる事は死を意味する。

GM(ベテルギウス):「ちなみに遅れたら容赦なく見捨てるからね♪」
と更に念を押す様にオカマが脅す。

ミシュラ:強張った面持ちで頷きを返す。
「だ、大丈夫だよ!ちゃんと帰ってこれるから。ね?デネやん」

GM(シグニ):「も、もちろんだとも!ミシュー!」
心なしかシグニも冷や汗をかきつつ、やや青ざめた表情で言っている。
「まぁ、とりあえずそんな感じでよろしくお願いするわね〜。
これが終わればアタシ達もようやくゆっくりできるんだし、最後の任務と思って気合入れて頑張りなさいよ〜」
と、そのベテルギウスの言葉と共にこの場にいる全プロパテール達は立ち上がり、背を向ける。

ミシュラ:その背に一礼を返し、シグニの袖をつかみつつ部屋から出よう。

GM(シグニ):「しっかし、時間制限付きか〜、なんだか今までよりも面倒だな〜……。
なぁ、ミシュー、おたくそろそろあの星宝にもなれて来たんだよね?
今回の任務、ある種おたくの星宝が鍵になりそうなんだし、期待してもいいよね?」
と部屋を出てシグニさんがんな事を。

ミシュラ:「えっ…」
シグニの星宝の戦闘力をアテにしていたので、素で驚愕する。
そりゃあ時間制限が付いているとなると、ここに戻ってくるのだけなら
自分の星宝は大層役に立つとは思うが。この星宝は対多人数用ではないのだ。
大群の足止めなんて満足に出来るか怪しい。それに、まだ完全に能力に慣れ切っていないのだ。
「だ、大丈夫だよ!泥船に乗った気分でいて欲しいな!」

GM(シグニ):「……ま、まさか、おたく、まだ…自分の星宝を扱え切れてないとか…言わないよね?」
君の反応に今度はシグニが驚愕しつつ返している。
ぶっちゃけ君以外のデミウルゴスはもうとうの昔の自分の星宝を手にしたのはお約束ry

ミシュラ:「そ、そそそんなことあるわけないじゃない!誰よりも早く守るべきものを守る為。
誰よりも早く為すべき事へと到達する為に僕の星宝はあるんだし?もう本当バリバリのズバズバのぷー、だよ?」
眼が泳いでいる。セリフも師であり友であるアルタイルの受け売りだ。

GM:と君達が雑談をしていると通路の向こうから来る人物が一人。それはオグドアス4のエルナトだ。
つい先日、ある強敵との戦いで負傷し、今回はこの城で待機を命じられていたとミシュラは思い出す。
「…任務に行くのか。ミシュラ、シグニ」
と君達を見て彼がそう聞いてくる。

ミシュラ:「エルナト」
エルナトほどの冷徹な強さをもった者でも、しばらく戦えなくなるほどの負傷を負わせる者が
地上には居るのか。その事実に、これから地上に行く自分は寒気を感じる。
「うん。ここに攻撃に来る軍勢の足止めだってさ」

GM(エルナト):「…そうか」言ってエルナトはじーっとミシュラを見て
「…そう言えば、ミシュラ。お前は人間からデミウルゴスへ昇華してなお
人間としての感情や記憶が残っているらしいな」

ミシュラ:他の皆は感情や記憶を多かれ少なかれ無くしており、皆と自分は違うという事実が
自らの失敗作としての自覚とかすかに心の内にひそむ劣等感をつつく。
「…うん。そうだけど…?」

GM(エルナト):「そうか」と君をじろじろと見て
「…確かに私や他の者達とはお前は違うな」
と言った後「…少し、羨ましいよ」と呟く。
「ミシュラ。出来るなら私はお前の事をもっと知りたい。我々の中で一番人に近しいお前を。
だから、任務…かならず生きて戻って欲しいと、そう私は思っている」

ミシュラ:その言葉に、エルナトへの認識を少し改める。
『羨ましい』か。そんな事考えもしなかったけれど、気持ちが前向きになれた。
「判った。絶対帰ってくるよ。またね、エルっち」微笑みを返して言おう

GM(エルナト):「…ああ」
言って君とシグニは戦地へと赴く、その道すがら
「よかったじゃん。あの人、意外といい人っぽいじゃん。おたくと結構、仲良くなりそうなんじゃない?」
とシグニが笑みを浮かべて言ってくれた。

ミシュラ:「うん、感情の無いキリングマシーンだと思ってた」
そう返し、続ける。
「エルっちにも言ったけど、絶対帰ってこようね。シグやん」

GM(シグニ):「キリングwwそれ言い過ぎww ああ、そうだな。
オレもあの人と仲良くなって見たいと思ったから、一緒に帰ろうな。ミシュー」
そう言って君達はお互いに拳を交わす。

時に第一次星触戦役その終結間近にて。

やがて訪れるその別れを二人は知る由もなかった―――。


◆ミドルシーン2 〜世界の理〜
GM:最初に目覚めたのはその波の音だった。静かな波打つ海の音。
静寂の中にあって一定のリズムを鳴らすそれは一つの音楽であり、不思議と心を和ませる曲。
そんな穏やかな波音を聞きながら、君――かつてヴァーミリオンと言う名を持った人物は目を覚ます。

ヴァーミリオン:「…ん…ここは…俺は…一体…」

GM:そこは一面の青。海の世界。膝辺りまで侵食している透明なそれは地平線の彼方まで広がっている。
どの方角を見てもその景色は変わらず、幻想的で美しいと同時に
どこか閉鎖された別次元の世界。そんな感覚を君は覚えた。

ヴァーミリオン:「さっきの場所とも違う…ここはどこだ…」

GM:そんな中で、君はこの海の世界にただ一つ異質な、しかしこの空間すべてを彩る景色に目を奪われる。
それは君が少し離れた場所に存在する一人の少女。
無垢という言葉をそのまま姿にしたかのような美しい姿。
純白の衣装を濡らしながら、少女は君の存在に気づかず海の世界で戯れていた。

ヴァーミリオン:ではその少女の方にゆっくりと歩いていきます。

GM:そうして歩き出そうとした君の手を誰かが掴む。
「すまないな、まだ彼女には触れないで欲しい。彼女はまだ未成熟の世界だから」

ヴァーミリオン:ん?誰だ?

GM:そう言って君を引き止めたのは初めて見る男。
青い髪をなびかせる中性的なその外見は見る者の視線を奪う。
「一応、初めましてと言っておこう」

ヴァーミリオン:「世界…?彼女は…そしてお前は一体…」

GM(???):「ああ、君の事は言わなくても分かっている。君をここへ呼び出したのは私の意志だから」
と、そこで君はある一つの事実に気づく。“自分は誰だ”と。

ヴァーミリオン:「俺のことがわかっている…?俺のこと…いや、俺は…誰だ…?」

GM(???):「…その様子を見ると、やはり人の領分を逸脱した代償として
人であった記憶を失ったか。いや、それは別に珍しい事ではないのだよ」
男は君の様子を見て微笑むようにそう言う。

ヴァーミリオン:「お前は俺のことを知っているのか?教えてくれ、俺は誰なんだ」

GM(???):「古い器を捨て去る際にその傷跡となるものも一緒に捨て去る。
古来より新しい何かを得る際にはそれまでの何かを捨て去るのは至極道理。
我らにしろ、神人(デミウルゴス)にしろ、それは同じ事。
新種たる存在にそれまでの既存を残すのはその性質が旧世代のものへ劣化する事と同じ。
君は今ある君が全てだ。それでいいのではないかね?
過去がそんなに重要かね。事実、今ある世界において君の過去とやらが何か意味を持つのかね」

ヴァーミリオン:あ、師匠。シェンナのことは覚えているんですか?

GM:んなものは綺麗さっぱり忘れてるよ(笑)

ヴァーミリオン:「俺は…優しい世界を護りたい…。それを望む“何か”があったはずなんだ…
俺がそれを望むために必要なものが…あった…はず…」
自分の記憶を探るが、その手が空を切るように何も得られない。
何かに阻まれているのではない、元々無いものを探そうとしているかのように。

GM(???):「ふむ。護ると行為にはその護るべき“何か”、“対象”が必要。
然り、確かにそうであろう。護るという行為は何かを選び、それを“護る”と決意してから始まる。
己一人であればその単一感情は意味を成さない。で、あれば君には、彼女を護って欲しい」
言って、男は目線だけで先にいる少女を指す。

ヴァーミリオン:「あの少女…を?」

GM(???):「私はね。ずっと待っていたのだよ、君という存在を。
“守護”の“理”を持つ超越者“人神(アダムカドモン)”をね」

ヴァーミリオン:「“守護”の“理”を持つ“人神(アダムカドモン)”…それが俺なのか…」
それを自覚した瞬間、自分の中から“護る”という感情が湧き上がってくる。
頭でもなく、心でもなく、もっと存在の奥底から。その感情は、あの少女を護れと訴えてくる。

GM(???):「まずは彼女について話そう。護るべき対象の事を知るのは君にとって重要な動機となろう」

ヴァーミリオン:「わかった…話してくれ」

GM(???):「彼女についてだが…実は私も彼女自身の経緯や生まれについては詳しくは無い。
気づけば彼女はこの世界にいた。と言うよりも“この世界を創り上げた”と言った方がいいかな。
私が知る限り、彼女がこの世界を創り上げてから約100年と言ったところか。
未だに成長途中ではあるが、彼女は紛れもなく人を逸脱した存在。
そう、君と同じ“人神(アダムカドモン)”の一人だ」

ヴァーミリオン:「お前はあの少女を未成熟の世界だと言った。彼女は、この世界そのものであり
俺と同じ“人神(アダムカドモン)”ということか…?」

GM(???):「そう、その通り。ただ同じ“人神(アダムカドモン)”と言っても
それは種族として同じ枠に入るというだけで本質的には君と彼女は別種と言ってもいい。
なにせ有している“理”が違うのだから同種と言うわけにはいかないよ」

ヴァーミリオン:「俺が“守護”であるように彼女にも司る理がある…か」

GM(???):「その通り。さすがは覚えが早い」
彼は満足するように先を続ける。
「まず“人神(アダムカドモン)”の定義について話をさせてもらってもよいかな?」

ヴァーミリオン:「ああ、頼む」

GM(???):「では、お言葉に甘えて話すが。言ってしまえば“人神(アダムカドモン)”とはその名の通り
人が神の領域に上り詰めた種族の事だ。元来、人は神の子であるのだから
昇るつめるというよりも原初であった存在に戻り還ると言うべきか。
まぁ、とにかく君も彼女も、もはや人ではなく、その身と魂は神そのものと言ってもいい。
だが“人神(アダムカドモン)”が人の世において生まれることはまずない。
すでに神の御許から離れた人の身も魂もその存在は劣化し、朽ち果て、原初の空間との繋がりも
微々たる物で、かつての栄光の存在に戻ることなど絶対に叶わぬと言っていい。
だが“今の世”であればそれは別だ。イシュタルの“理”のおかげで君のように
“人神(アダムカドモン)”へと到れる者が生まれた。
元来、神々とは単一思考の存在がほとんどだ。彼らは誰よりも原初の存在との繋がりが強い。
ゆえにその本質も大きく二つに別たれる。即ち“アフラ(善)”と“ダエーワ(悪)”。
前者が俗に言われる神々であり、後者が邪神と呼ばれているな。
星王イシュタルは後者の属性、即ち邪神に属している。彼自身はそれを隠しているつもりらしいがね」
どこか笑うように男は続ける。
「さて、それで話しの続きだが、イシュタルが持つ“理(ロゴス)”が“侵食”。
万象全てを略奪し、奪い、剥ぎ取り、己が所有、血肉へと変える願望。故に彼の“理(ロゴス)”の
具現化こそが星蝕であり、あれは世界や生命、存在、理、それら全てを飲み込み喰らっていく」

ヴァーミリオン:ヴァーミリオンだった頃ならそれを聞いてイシュタルを憎むところだが
今はそんな感情は存在しないなぁ…。

GM:まぁ、希薄ではあるが、そういったものも残っていていいよ(笑)

ヴァーミリオン:「そうか…そのイシュタルは…敵なんだな」

GM(???):「然り、彼の理である星蝕は全てを剥ぎ取り奪い取る侵食の塊。イシュタルの星蝕によって
生まれたデミウルゴス達が過去の記憶や感情を奪われるのはそういうこと。彼らの存在は
“人神(アダムカドモン)”に似てはいるが、所詮はイシュルの眷族。私に取ってはどうでもよい存在だ」
そこまで言って彼は君の方を改めて向く。
「だが、彼の“理”の副産物として君…“人神(アダムカドモン)”が生まれた。
人が“人神(アダムカドモン)”と成るのは簡単な事ではない。単一思考と言っても
そればかりを願い、想う者など稀有だ。まして、単一だけでは“人神(アダムカドモン)”にはなれない。
魂の内にある原初の空間との扉を開き、そこへ同調しなければならない。
そんな事が可能な者など何百万年経とうとも一人現れるかどうかだ。
では何故君がそこへ至れたか。それは別の“理”による助勢による賜物だ。
今、世界では過去に類を見ない絶望と戦火が起こっている。
日常的な日々よりもこうした非日常でこそ単一の願いは高まる。
君はその絶望の中で“護る”という単一思考を願い、死の瞬間までそれを願い続けた。
そうして死した君の魂はその単一思考を抱えたままであり
そこへイシュタルの“理(ロゴス)”――星蝕が降りてきた。
君は星蝕のルールにより単一思考の“守護”以外を剥ぎ取られた。だが、君の“守護”に関する想いだけは
星蝕の“理”すらも凌駕していた。そして、“守護”の単一以外を剥ぎ取られた君の魂は原初の空間と
これ以上無いほど結びが強くなる。当然だ、君はまさに“守護”という単一のみであり
その魂を持って神の領域に辿りついたのだから。故に、今の君は“神人(デミウルゴス)”とは別種の神の種。
“人神(アダムカドモン)”として生まれ変わった」
と、ここまで説明し、彼は一度話を区切り、君に関するある情報を明かす。
「だが、先の話を聞いて分かると思うが、君の肉体はすでに崩壊している。
いわば魂だけが“人神(アダムカドモン)”となり、ここにある君は器を持たない魂の存在だ。
まぁ、だからこそ、君をこの場所へ招待できたわけでもあるがな」

ヴァーミリオン:うん、まあそんな気はしていた。

GM(???):「それで話の続きだが。これまでの私の話を聞けば君の誕生は
この時代でなら起こりうる奇跡と分かろう」

ヴァーミリオン:「ああ」

GM(???):「だが、彼女は違った」
言って男は未だ海で戯れる少女を見る。その目は羨望と慈愛に満ちていた。
「彼女は他の“理”に接触し生まれたわけではない。そうなるべくして
そうなった本当の意味での奇跡の“人神(アダムカドモン)”私は彼女の存在に魅了された。
彼女の世界を見たいと思った。だが、残念ながらこのままだと彼女の世界は消えてしまう。
故に私は君の誕生を待っていた」

ヴァーミリオン:「俺に彼女の世界を護れということか。いや、俺にしか護れない…」

GM(???):「もうじき、この世界を包むほどのイシュタルの“理”――星蝕が発動する。
あれが発動すれば世界は完全に飲み込まれ消滅する。それと同時に彼女の世界も消えるだろう。
イシュタルの“理”は侵食。全てを侵し奪い、消滅させる理だからな。
だが、ただ一つだけイシュタルの“理”を受け付けない“理”が存在する」

ヴァーミリオン:「それが…“守護”」

GM(???):「そう、あらゆる攻撃、侵食すらも弾き、通さない絶対の領域、その理。
“守護(ガディム)”。故に私は君を待っていたと言った。君には大陸の一つを護って欲しい。
そこがやがて彼女の世界の基盤となる場所故に」

ヴァーミリオン:「ああ、わかった。俺は俺の“守護”の全てをもって彼女の世界を護る。
…だが、一つだけ条件がある」

GM(???):「何かな?」

ヴァーミリオン:「彼女が優しい世界であることだ」

GM(???):「それについては保障しよう。彼女の世界は優しいものだ。
そう、彼女の世界こそ真なる新時代の世界。もはや古きエルドラシルの“理”を超越し
イシュタルの歪んだ“理”をも弾き、彼女の世界を具現させる。
ガディム(守護)。君の力を、彼女の為に使ってくれ。彼女と彼女の世界を護ってくれ」

ヴァーミリオン:「ああ、我が理はガディム(守護)。優しき世界の絶対なる守護者だ」

GM(???):「では君の“人神(アダムカドモン)”としての魂に相応しい肉体を用意した。
それを使ってくれ。神柱(オベリスク)と呼ばれる人の想いが結晶となった柱。
その身は朽ちる事のない器であるが、君の“理”にどこまで耐えられるかは分からない。
だが、君が彼女の世界を護るまでその器が持つ事は保障しよう。それと最後に一つ。
世界には私や君のように彼女の世界を望む事を間逆の考えを持った者がいる。
新たなる世界を恐れる者、彼女を壊し、自分の世界を創り上げようとする者がいる可能性を。
そして忘れないで欲しい。“今の時代”は“人神(アダムカドモン)”と呼ばれる種が
奇跡の確率でも生まれるという時代だという事を―――」
その彼の最後の言葉を背に君の魂はこの世界より離れ始める。
彼女の世界の基盤となるべき大陸を護るために――

そこはかつてエルフェナと呼ばれた大陸。その地を星蝕の“理”より“護る”為に。

 
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