第一章「頂に昇る英雄」
GM:最初はGMシーンから行きますが、やや長めのシーンになるかもなのでよろしくなのです(笑)

◆プロローグ 〜神の定義〜

「神の定義、と言うものが何か分かるかね」

その男はそう闇へと問う。

「そも、神とは何か。人類を生み出した偉大なる存在。
魂、存在、能力、全てにおいて人を凌駕し、遥か高みに座する至高なる不可侵の存在」

暗い深淵の中にあって尚、眩い純白の衣装。
輝き失せぬ至高の魂の質量を持つその人物は
闇の奥にいる誰かに問う様に続ける。

「まぁ、そう言った認識もあながち間違いではないが、正解とも言えない。
結論から言えば“真の意味での神”と定義付け出来る存在など、私の知る中では二人しか存在せぬ」

「一人はこの世界、というより全ての理にして
あらゆる世界が内包できる空間【存在空間(エター)】を創造し
生み出した始祖神ラム=リファーナ様。
もう一人は……まぁ、彼については伏せておこう」

男はそうわざとらしくもう一人の名を伏せ、先を続ける。

「さて、ではここで君達の中である一つの疑問が生まれるだろう。
他の神と呼ばれる存在は何か。先の二人の神と他の神との違いは何か。
これを語る前に人と“通俗的な名称を持つ神とやら”の間にある差を話すとしよう」

「先に言っておこう。神とは君達が思っているほど万能でもまして完全とも程遠い。
神も人も等しく“子供”だ。“母体”から産み落とされ今も尚
母体に“へその緒”で繋がっている乳呑み児に過ぎぬ。
ではその“母体”とは何か、それこそが原初の空間【無空間フェムトー)】」

そこまで語る男は不意に話題を変える。

「君達は魂というものの存在について考えた事はあるかね?
魂とは何か。どこから来てどこへ行くのか。
恐らく多くの人が幼少の頃、そうでなくとも一度は思考を及ぼす事であろう」

「肉体は分かる。母が子を生む時、腹の内部で育てた己の血肉の一部にして肉の塊。
そこには相応の代償があり、赤子という肉を産み落とすに至れる等価交換が成り立つ」

「では魂とは?母が自分の持っていた魂とやらを分けて赤子に渡すとでも?
肉が落ちれば眼に見えぬそこらを彷徨っていた魂とやらが、そこに宿るとでも?
そんな理屈は在り得ない。では魂とはどこから来るのか」

「答えるならそれは肉の内部より生まれる。否“繋がる”のだ。
生命が生まれた瞬間にそれは原初の空間、【無空間フェムトー)】と自動的に繋がる。
なぜなら全ての生命は“無”から生まれたのだから」

「人も動物も全ての生命はその肉の内、眼に見えぬ深い場所に――
一つの“扉”が備わっている。その扉を開いた先はどこに繋がるか?
それこそが【無空間フェムトー)】へ繋がる道だ。
先程私が言った“へその緒”とはこれの事だ。
そしてこれこそが“魂の形”であると言えよう」

「全ての人間、動物、生命に当てはまる者がある。それは本能であり感情。
あらゆる生命は生存本能を持ち、それに従い子を為す。
子猫にしろ人間にしろ、その感情の大小に差はあるが、愛情や敵愾心。
そう言ったものは必ず存在する。
誰もが見過ごしがちであり、当然と思う故に“この共通点”には気づかない。
そう、全ての生命は等しく感情や本能を持つ。愛、憎悪、哀しみ、殺意。
その表現方法や指向性、形は違えど根本は同じだ」

「では何故、生命とはこのような“根本的な共通点”を皆、有しているのか。
答えは単純だ。魂の先にある場所から来ているに他ならない。
それこそがへそ(魂)の緒の先にある【無空間フェムトー)】」

「つまり、全ての生命は同じ場所に繋がっている。
ゆえに生命に宿る本能は不動、全て同じものなのだよ。
この理屈が通るならば、全ての生命に生存本能と呼ばれる共通概念があり
思考を持つ生物が愛や殺意と言った固定感情を持つもの道理だ。
何故なら全ての生命の魂が“繋がっている場所は同じ”なのだから」

「全は個。個は全。陳腐な言い回しであり、使い古された言葉だが
これこそが真理を捉えていると私は思う」

さて、と。と男は手を広げ、まるでここからが本題であるかのように更に弁を奮わせる。

「“無”について人々は誤解をする事があるが
無とは決して何も無い状態とは言えない。
まぁ、私も無について詳しく語るほどの知識は持ち合わせていない。
何故なら私もまた“不完全な生命”故にな」

「だが、あえて断言しよう。無とは即ち完全だ」

「そこはそれ以上そこに何かが立ち入る隙はない、一切の隙間すら存在しない。完成されたもの。
愛情・憎悪・生命・死・混沌・善・悪・全・個・有。およそ世界の全てに存在する“全て”がそこにはある。
感情、本能、力、存在、事象、現象、あらゆる全てだ。
故に“無”には“無”が“無い”故、“無”と言う名称が打倒であり
だからこそ我々からすれば“無”とは何も無いとも取れるかもしれない。
何故なら、完全こそが無であるのだから」

「故にここで先の話しが繋がる。分かるかね、魂だ。
【無空間フェムトー)】に繋がる我々はそこから感情を引き出している。
本能が流れ込み、力を行使し、存在を確立し、引き出している。
故に感情や本能は生まれるのではなく、“流れ込むもの”、“引き出すもの”に他ならない」

「ではここで最初の答えを言おう。人と神との違いは何か?
答えは簡単、“繋がりの強度”その違いだ」

「神の魂が有している【無空間フェムトー)】との繋がりは人のそれよりもはるかに強大で強靭
故に引き出す量も流れ込む量も異なる、故に“差”が生まれる。
さて、ここまで言えば。君達でも理解出来よう?
つまり、人もその内にある魂の繋がりが強化・あるいは門を大きく開く事が出来るのなら
“神”に、なれるのではないか」

一拍後、男は断言する。

「然り、成れる。と言うよりも、この場合は“神に戻れる”と言った方がいいだろう。
人とは言ってしまえば“神の劣等種”に過ぎない。
かつて神話の時代に神より産み落されし、その血筋を持つ愛児達。
それが君たち人の正体に他ならない」

「故に私が最初に言った“神”と呼べる者は二人しか存在しないという言葉、これの意味も分かるであろう?
君達の上に存在する“神”を名乗る者達は君達と同種の人間に過ぎない。
ただ君達よりも遥かに強く“無と繋がっている”それだけの違いしかない。
言うなれば君たちが知る神々とは単なる“人の上位種”に過ぎない」

「では、ここで一つ興味深い現象の話しをしよう。
君達人が愛や友情、嫉妬や憎悪を引き出す。
しかしながら、感情にはあらゆる“属性”というものが存在する。
それは大きく三種、“善”と“悪”、それから“中立”と呼ばれるものに分けられるな」

「愛は善に、憎悪は悪に偏る。まぁ、こうした善悪の判別も個人の主観に過ぎぬかもしれぬが
だが、もし、もしもだ。生まれつき魂が“一つの感情としか繋がらない”生命が
存在したとしたとしたら、どうする?」

「通常、そんな事はありえない。生まれた瞬間【無空間フェムトー)】という混沌の海と繋がり
そこに存在するあらゆる感情・本能を人は受け取り、引き出す事が出来るからだ。
だが、もしも、生まれた瞬間にその魂のへその緒が“一つの感情としか引き出せないコード”に
なっていた場合はどうだ?」

「その生命は生まれつき“その感情だけしか”発露できない。
“その感情以外を知らない”“その感情以外を発現出来ない”。
それはつまり“絶対”と呼ばれる存在とは思わないか?
そして、本来なら多様な感情を引き出すし、それを受け止めるはずの器が
その一色のみに染まり、それのみで満たされたらどうなる?
人は本来、広く浅くゆえに多様な感情を発現する。
だが、その存在は深く狭く、ゆえに誰も到達出来ないその感情の奥底へと繋がることが出来る」

「そしてもしも、その唯一の感情が“憎悪”や“略奪”
そう言った“悪”の感情だった場合。どうなる?
答えはゆうに及ばず。それは即ち“絶対悪”と呼ばれる存在となろう。
そして、かつてそうした存在は神々の時代、無数に存在した。
彼らこそ、神々の時代を崩壊させし元凶、即ち―――“邪神”と呼ばれる存在だ」

そこまで話し、男は一度口を閉じ、静かに椅子に座り
やがて先程とは違うゆっくりとした口調で再び語りを開始する。

「――さて、些か話しが長くなった。
すまないな。私は一度話すと、どうにも最後まで詳しく言わないと
気が済まない性質なのでね。では先ほど、私が話した内容を頭に入れ
次は人間に焦点を当てて考えてみよう。
もしも人間にも先程のように生まれながら単一思考。
単一の繋がりしか持たない存在が居れば?
もしくは、確率は低いが後天的な理由で他との繋がりを絶たれ
あるいは一つの感情に拘り、それのみを追い求め、それ以外を捨て去り、単一存在となれば?」

男は再びそこで息を吐き、勿体つけるように次の言葉を呟く。

「そう、人も“神”になることは出来るのだよ。
そうした生まれながら単一の思考しか持たない存在として生まれ
あるいは後天的に単一の思考のみに囚われればね」

そうして男は結論を語る。

「故に、人が神に成りたいのならば、その方法は一つしかない。他を捨て、単一となれ。
―――だが、単一思考しか出来ぬ存在。そんなものは他の生命からすれば……果たしてどう映るのやら」

そう言ってそこまで言い聞かせた男は満足したようにテーブルに置いてあった茶に手を伸ばし
それを軽く一口飲むと、劇の終わりを案内するように語る。

「さて、ではそろそろ、私の演説の時間も終わりだ。
久しぶりにここまで話したよ。何しろここは私以外は誰も居ず、監視するしかない場所だからね」

そう言って男は手に持っていた茶をテーブルに置き、何かに気づいたように再び口を開く。

「…ん?私は何者かと。まぁ、君達の言うところの“通俗的な神”の一人だよ。
大して珍しいものでも強大なものでもない。私も単一の感情、というよりも理か
それとの繋がりが強く、他との繋がりは薄い。故に神と呼ばれる存在に分類される」

言って男は自身の理、その名を明かす。

「“真理=ルヴァル”。私はただこの世界の真理、真実、それらを
解明することにしか興味を持たず、持てなくなったなれの果てだ」

そうしてル=ヴァルと名乗った男は立ち上がり、今度は自らが観客のように
これから始まる劇に拍手を行う。

「さて、ではそろそろ君達の世界の物語が始まりを迎える。
私はいつものように傍観させてもらおう。
或いは、君達が奏でる物語の中で私の求める真理の一つが埋まるやも知れぬ。
それを願いながら、な」



エスペランサーセイバー
〜世界を繋げる者〜



――旧世界の滅びと共に新たなる時代を繋ぐ“神”が生まれる。


◆プロローグ終了

GM:史上最も長いプロローグも終わったので、ちゃっちゃとOPに入ろうかー。

ミシュラ:はいさ!

ヴァーミリオン:わ、儂の知ってるルじゃねぇ…。それはともかく、はーい。


◆PC1オープニング 〜頂に昇る英雄〜
――星触。

それはある日、突然起こった。

空を覆い、星の向こうから到来した“それ”

闇、それよりもなお深い混沌。

世界の地表を包むそれはやがて世界に洗礼を落す。

その洗礼を受けた大地は須らく消滅し、その地にいた生命の全ては消滅し

あるいは異形の魔物、アルコンと成り果てる。

それは700年以上続いた世界に降り立った災厄。

だが、その災厄を振り払うために何にもの英雄が立ち上がった。

ある者はどことも知れぬ素性でありながら、星蝕に立ち向かい。

ある者は英雄としての格・資質・そして器としても知れ渡り、故に星蝕に立ち向かった。

これはそんな英雄の一人。

歴史の闇に葬られ、新たなる時代の礎となった人物、その彼の物語。


GM:――とある王国。そこにいるのは“人類の英雄”と呼ばれる人物。
おそらくこの時代においてまぎれもなく最強と言われる人物。
ヴァーミリオン=アフリクス。いま君がいる王国だ。今日も君は“敵”を討ち滅ぼした。
星蝕から来るそいつらを殺し、撃退し、この国を、そこにいる大切な人を守り抜いた。
戦場から戻った君に送られるのはいつもの変わらない賛辞と賛賞。
何の変わり栄えもせず、ただ君を頼みとする民の声。

「ヴァーミリオン様!我々をお守りください!」

「星蝕を打ち倒してください!」

「どうか永劫、我らをお守り下さい!」

GM:皆、笑顔。笑顔。笑顔。その笑顔で君に祝辞(呪い)の言葉をかけ続ける。

ヴァーミリオン:(ああ…どれもこれも同じだ…。皆、同じ言葉を…同じ顔を…同じ同じ同じ同じ…)
自分を取り囲む人たちの区別がだんだんと曖昧になる、顔がぼやけ、輪郭がぼやけ
やがてそこに映るのは同じような“人のような形をしたもの”、アルコンと同じ姿。
頭を振り、現実を見る。人の姿は元に戻っていた。

GM:やがて、その言葉を浴びるまま君は君にとっての唯一の安息の場所、己の家の前まで帰路する。

ヴァーミリオン:扉を開け「ただいま」

GM:そこにはベッドに横たわり、扉を開けた君の方へ優しく微笑む日常の象徴。妹シェンナがいた。
「おかえりなさいませ。お兄様」

ヴァーミリオン:あ、妹って病弱なんだ。

ミシュラ:おねぼうさん説

GM:私の勝手な解釈じゃ(笑)おねぼうでもよい(笑)

ヴァーミリオン:いやいや、断然OK。病弱設定は大好物です。

GM:ではこのまま続けようか(笑)
「…お兄様。お疲れのご様子ですが、今日もその…戦場はお辛かったのですか?」

ヴァーミリオン:「大丈夫だよ。確かに戦場は辛いけど、シェンナがここにいるから
シェンナとの今までの…そしてこれからの日々があるから、俺は大丈夫だ」
そう言ってシェンナの手を優しく握る。

GM(シェンナ):「…お兄様…。だけど、私もお兄様の為に何かをしたいです。
だって、私はいっつもお兄様に護られてばかり…お兄様が辛い想いをしているのに…私は何も出来ない」

ヴァーミリオン:「そんなことはない。俺はいつもシェンナに護られてきた。
ずっとずっと…シェンナは俺を護ってくれていた」

GM(シェンナ):「お兄様…」
君のその言葉にシェンナは僅かに微笑む。
「でも、お兄様がいま戦っているものは、今までにない大きな敵。
だから、私もお兄様の為に、もっとずっと支えになります」

ヴァーミリオン:「なら…シェンナ、俺の弱さを…知ってくれるか…?」
シェンナの手を握るその手にきゅっと力が加わる。

GM(シェンナ):「…?なんでしょうか、お兄様」

ヴァーミリオン:「怖いんだ…俺は。人々は皆口を揃えて俺を賞賛し
その奥に恐れを覗かせる。皆一様で、皆同じで…たまにあいつらと…アルコンと区別がつかなくなる」

GM(シェンナ):「お兄様…」
そんな恐れを見せる君を妹は優しく抱きしめ言う。
「大丈夫です。私だけは本当のお兄様の事を理解できます。お兄様の弱さも…強さも…」

ヴァーミリオン:「ありがとう…シェンナ。お前だけが俺の心を護ってくれる。
お前だけが俺に心から削られ続ける幸せを与えてくれる。だから俺は…お前を…人を護れるんだ」
ぎゅっとシェンナを抱きしめ返す。

GM(シェンナ):「お兄様が英雄でいられるように、護り続けます。
だから、お兄様も私の事を護って下さいね…」
微笑みシェンナも君の手を握り返す。

ヴァーミリオン:「ああ…もちろんだ」

GM:その君の言葉を聞き、安心したのかシェンナはいそいそと料理の支度を始める。
今日はどうやら体調も良さそうだ。
「そう言えばお兄様。この地方にある伝承って知っていますか?英雄に関する伝承なんですけど」

ヴァーミリオン:「伝承…?」

GM(シェンナ):「フフッ、知らないんですね。じゃあ、今は秘密にしておきますね」
と悪戯っぽい笑みを浮かべ。

ヴァーミリオン:「き、気になるじゃないか…」

GM(シェンナ):「その内、教えますよ♪その内に」
ありふれた日常。君にとっての唯一の現実。護るべき全て。
故に戦う。故に護る。今日というこの出来事を明日に繋げるため。
未来永劫、君と彼女が安息の中で眠るその日まで。

◆PC1オープニング終了

ヴァーミリオン:堪能した…。

GM:ミシュラん準備いい?(笑)

ミシュラ:ばっちりよー!(*‘ω‘ *)

 
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