第四十章「王者の選択」
そこはすでに死地とも呼べる地獄と化していた。

帝城最下層、星触を保管管理するべく生み出されたはずのその空間は
すでに溢れ出す星触の余波によりひびが走り、空間自体が歪んでいた。

だが、それ以上に、この場を地獄とも呼べる世界に変えているのは
クフィル達の目の前に現れたたった一人の敵によってもたらされているもの。

その男が持つ漆黒の剣が振り下ろされるだけで空間がひずみ
地は底深くまで割れ、振動はこの城のみならず、大陸すらも振るわせるものがあった。
それはもはや戦闘という域を超えた次元の戦い。

ライラの星宝【蒼穹の戦場(ソル・レイヴァー)】はすでにライラ自身を含め
仲間へと与えられるダメージを多大に引き受け、その空の色は彼女のエラーを現すように真っ赤に染まり
すでに星宝展開の限界に近づきつつあった。

ライラ:瞳が赤く点滅していると言い張ります。

アスタロトの星宝【真白の宝石(ルア=テリス)】もまた、度重なる主人の体を回帰させつづけ
その色を曇らせ、見るとひびすら入り始めている。
実際、この戦闘が始まってより、この星宝がなければ、彼女はその身を数度は滅ぼされていただろう。

そして、またクフィルも――。

GM(ベテルギウス):「どうした?それでもう終わりか、クフィル」

すでに生成された光剣は数百を超える。
だが、その全てが折り、砕かれ、地に斃れ伏し、まるで無数の墓標のように突き刺さっていた。

クフィル:「ちッ!」
既に疲労は限界に近く、激しい出血により意識を繋ぐので精一杯。

GM(ベテルギウス):「そろそろ、理解したか」
言ってミルファク――ベテルギウスはその巨剣を構える。
「いくらお前達が“欠片”や星宝の力を持ってしても圧倒的力…“神”の前には――無力だと!!」
“ごうううううッ!!!”
放たれた一撃はガードしたクフィルをそのままはじき、吹き飛ばし、数メートル先にはる壁へ衝突させる。

ライラ:それを庇おうとしたライラも挟まっていることにします。
こう、攻撃がミートしてからさらに加速した感じで。

クフィル:「ぐあッ!!」
咄嗟に剣で受けはしたものの衝撃だけで四肢が引きちぎられそうになる。
何とか壁にぶつかる瞬間受身を取りつつライラをかばい!

ライラ:すると絵的にはライラ殿下壁の順番でサンドイッチですね。

GM(ベテルギウス):「ふはははは!理解したか!これが神、デミウルゴスの真の力だ!」
無様に地に平伏し、斃れた君達をあざ笑うかのように吼える。

アスタロト:なんとか立ち向かおうと銃を手に取りますが、
まともな構えを作ることすらおぼつかない状況です。

ライラ:「殿下……ッ、申し訳ありません」
思考回路を焼くエラーメッセージに顔を歪ませながら、クフィルの胸の上で言うわけで。

GM(ベテルギウス):「これこそが機関統治者0ベテルギウスが持つ、偉大にして圧倒的な力。
そして、その力を我がものとして、そのものとなれる我が星宝【存在変貌(イグジステンス・フェイズ)】
そうだ、僕こそが――“機関最強”だ」

クフィル:(ロリメカ少女を胸の上に乗せてるとか胸熱だな

GM(ベテルギウス):「機関消滅?我らの終わり?違うな、私さえ存在すれば、全てはどうとでもなる。
間もなく星触は発動し、古き時代は終わる。そして新たなる時代を私が総べよう。
全てのデミウルゴス達の王として、この私が王となる!」

ライラ:「ならば、貴方さえここで殺せばすべてはどうにでもなるわけですね」
殿下が燻っているかどうかは別として、必死に立ち上がって盾を構えていますが
もう生まれたての子鹿のようにプルプルしてます。

GM(ベテルギウス):「虚勢はよせ、すでにお前たちの力は尽きている。
むしろ、ここまでよく健闘したと言ってやろう。
お前たちにはデミウルゴス最強たる私の手による終焉を与えてやろう」
言って、ベテルギウスはクフィルの眼前にまで迫る。

ライラ:その隙をついて殴りかかったライラは体を捌いて回避のうえ
腕を取られて放り投げられることにしよう。

GM(ベテルギウス):(ぽいっ)←放り投げた

クフィル:ぽいっ(笑)

GM(ベテルギウス):「喜べ、クフィル。お前に最後を与えるのはかつてお前が目指した王
父である“私”によるものだ」
言ってベテルギウスはその渾身の剣を、クフィル目掛け――振り下ろす!
それはまさにこれまで以上の一撃を秘めた、存在そのものを砕く神の一撃。

クフィル:絶対なる神の一撃。
――だが、その一撃は、唯の人であるクフィルによって防がれていた。

ライラ:(防ぐのか!)

GM(ベテルギウス):「―――む」
その本来起きるはずのない異常事態にベテルギウスは僅かにまゆを動かす。
そう、本来であれば有り得ない出来事。
「ほぉ、その満身創痍の状態でまだそれだけの力があったか。だが、所詮はまぐれ。
今の斬撃で理解した。私がその気になれば、お前のその脆弱な剣は一振りで破片となる!」
言って再びベテルギウスは渾身を込めた一撃を放つ!

クフィル:「おおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」
こちらも裂帛の気合を持って一撃を繰り出す!!!

“ごおおおおおおおおおおおお!!!!”

それは本来起こりえない現象の発露。
ベテルギウスが放った渾身の一撃を満身創痍のクフィルが二度までも受け止め、返した。

GM(ベテルギウス):「――馬鹿な」
かわしたのなら、判る。いや、本来であればかわせるはずがないが、それでもかわせたのならまだ判る。
だが、受け止めただと。止めただと。その本来起きない現象にベテルギウスは初めて焦りを覚える。

クフィル:無数の傷を負い、既に立つ事すら困難であろう人間が神の一撃を受け、返した。
「馬鹿?馬鹿ってのは姿形だけの物真似で最強とかほざいた奴の事か?」

GM(ベテルギウス):「なんだと…?」

クフィル:「あー確かにお前は強いよ、その姿で居る限りお前に勝てる奴なんてそうは居ないだろうさ」
ゆっくりと歩を進める。

GM:知らず、ベテルギウスは君の歩にあわせるように一歩後ろに下がっていた。

ライラ:投げ飛ばされていたライラですが、視界の外で立ち上がって包囲の構えを取っていますよ。

アスタロト:「確かに、あなたの力はあまりに大きい…でも、その力は『あなたのもの』ではないんです…!
あなたが真似ている、その人のもの…」
力を振り絞って立ち上がり、ベテルギウスに向けて銃を構えます。

GM(ベテルギウス):「に、人間共が!いい気になるなッ!!」
言ってベテルギウスを中心に強大な光が収束し、集まりだす。

アスタロト:「眩しい…!これは、一体…」

GM(ベテルギウス):「私の一撃を止めたことがそんなに嬉しいか!
ならば見せてやろう!純白(プロパテール)種にのみ許された究極の力を!
《アリスト・ハールート》!」
それは世界を包み込む程の光の爆発。純白種のみが許された究極の奥義。

ライラ:「やらせはしない……!」
ライラは既に防御のためにかけ出していますが、たぶんきっとそれごと光に呑まれるのでしょうね。

GM:ライラが張った結界防御すら、飲み込み、その光はこの場全員全てを飲み込む。
「ふははははは!見たか!これが神の、真なる力だ!はははははは!!」
己が勝利を誇り、高らかに笑い声をあげるベテルギウス。

だが―――“ばきいいいいいいいいいいいん!!!”

「なん…だと…」

それは光の中から生み出た四つの色。
白、青、黒、そして黄金。それら色の“欠片”を持つ所有者達。

GM(ベテルギウス):「ば、馬鹿な…お前達ごときが人間や作り物の機械ごときが…ッ!
その“欠片”の力を完全に解放するなど、あるはずが…!」

ライラ:(これは涼しい顔して立ってたりしていいの?)

GM:全然おk!

ライラ:「あるはずが、なんです?」
蒼い光を背負いながら、逆光の中から歩み出してきますよ。

アスタロト:「あなたがそうやって否定しようと…”欠片”は、こうやって力を貸してくれたんです…!」
ライラと同じように、純白の光に包まれながら歩いてきます。

ライラ:(ノリが日曜あさ八時!)

クフィル:(僕主人公ですけど黒いオーラとかまるでボスなんですが(ぁ

GM:ごめん、笑った(笑)

クフィル:「たかが“神人”風情が人間の力を舐めてるんじゃねぇよ」

GM(ベテルギウス):「こんな、こんな…馬鹿なことがあってたまるかあああああああ!!!」
言ってベテルギウスは地を駆け、クフィルに対し、あらんばかりの力を込めた乱撃を放つ。
それは先程までの余裕に満ちた戦いぶりとはかけ離れた、ただ目の前の不条理を認めないとする乱撃乱舞。
そこには一切の余裕も戦術も何もなかった。

ライラ:(演出でどうにかしていいんですかこれ)

GM:(ああ!)

ライラ:蒼い軌跡を牽いたライラが一投足でクフィルの眼前に移動。
掲げるのは素手、盾すらも不要。寄り集まった蒼い光の粒子がライラの眼前に集結し
具体的にはメルブラのガードエフェクトみたいなアレを大量生産。
「雑な打撃ですね」
攻撃の全てを光の盾で撃ち落としながら、瞳の上にシステムメッセージを滑らせつつ、謳うように言います。

アスタロト:「それに…随分と、隙が、ありますよっ!」
狂乱のために視野の狭まったベテルギウスの死角から、
白くまばゆい輝きを放つ銃弾を次々と撃ち込んでいく。

GM:ライラの防御能力前に己の攻撃を全て防がれ、更に生じた隙をアスタロトによって狙い撃たれ
ベテルギウスはその衝撃とダメージにより大きく後ろに下がる。
「こ、こんな馬鹿な事が…この体は機関最強0ベテルギウスの器と能力なんだぞ…!
なのに、何故だ、何故、届かない…ッ!!」

クフィル:「簡単な事だ、例え器や能力が最高だとしても使う者が未熟だからさ。
借り物の力で最強を謡い、己を高める事をしなかった。
お前が負けるのは、「お前自身の弱さ」のためだッ!!」

「終わりにしようぜ、ミルファク」

その一言と共にクフィルは――剣を構える。

GM(ベテルギウス):「馬鹿な…僕に弱さなどない…!
仮にあったとしてもそれを補うのが僕のこの“星宝”の力だあああああああああ!!!!」
言ってベテルギウス、いやミルファクは最後の力を全て集結し特攻の一撃を放つ。

「この一撃避けること敵わず」

「この一撃耐える事敵わず」

「故に必殺」

クフィル:共に戦う仲間、今まで歩んできた道。
その全てに感謝を込めてッ!!!

「――光輝」

「極光」


それは音や姿さえ存在、視認、確認出来ないまさに一撃の極地。

その瞬間、ミルファクは刹那と無限の間で見た。
己を斃した男の内側――魂の最果てにて存在する“それ”を。

それは彼がこれまで歩んできた軌跡の道のり。
偉大なる兄の影であった日々。王たる父の後を追う姿。
親友と共に歩んだ道。彼に思いを託した真紅の青年の想い。

そして、これより後、彼が歩むべき“王”の道――。

(――そう、か)

ミルファクは悟った。

己は最強の星宝を持って生まれた。
ゆえに彼には最初から何かを為す必要も己を鍛える必要すらなかった。

己が望めばそれだけで自分は最強の存在、能力を得られる。
それはまさに生まれながら完成された世界にして停滞の存在。

だが、目の前の男はそれとはまるで真逆であった。
王の息子としての立場として生まれながら彼は常に足掻き
己の道を探し歩み続けた。

それこそが、自分(デミウルゴス)がしなかった道であり
自分という存在を確かなものへとした決定的強さの違い。

故に、自分が敗れたのはこの男ではなく
この男が歩んできた道に敗れたのだと、その初めての感情を知ると同時に
ミルファクは、己の敗北を受け入れた。


◆エンディングシーン 〜王者の選択〜
GM:ミルファクを倒し、最後に彼は何かを納得するようにただ静かに消え去った。
だが、彼が斃れても、君達の目的は未だその存在を緩めてはいなかった。
“星触”それはまるで生き物のように鼓動を繰り返し
目の前の空間全てを覆う混沌は未だ傷一つなくその存在を主張していた。
と、その時、君達と一緒にいたレイルが静かに君たちの前に出る。
「…どうやら、ここから先は僕の役目のようだ」
言ってレイルは手に持った己の欠片【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】を見る。

ライラ:そのレイルを半歩後ろから無言で見上げています。

クフィル:「何とか出来るのか、レイ?」

GM(レイル):「ああ、僕はその為にここまで来たんだよ、フィル」

アスタロト:「レイルさん…お願いします」

GM:君たちの期待にこたえるようにレイルは笑顔を向ける。
「――フィル、始める前に一つ君に言っておかないといけない」

クフィル:「何だ」

GM(レイル):「…僕がこうしてここにいるのも【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】を手に出来たのは
全ては――ベテルギウス様のおかげなんだ」

◆     ◆     ◆

時は遡る――。

それはクフィル、アスタロト、ライラ、レイル、ユニ達がヴァーレンハイト王城に戻り
情報収集を集めようとした頃の事。

彼らは一度、王国を総べる王にして機関最高位の統治者0ベテルギウスと戦い、敗れ
修正された時間を繰り返していた時の出来事。
情報収集にあたっていたレイル、ライラのもとにロクスが現われ
国王の命のもと、レイルを連行したあの時。
そう、この時すでに機関の滅亡と新たなる新世代の到来を予期していた男が存在していた。

「…何の御用でしょうか、ベテルギウス様」

自らを呼び出した王に対し、レイルは膝を折り頭を垂れて問いを投げかける。
そんなレイルに対し、王はいつもとは異なる“彼本来の雰囲気”を纏い答える。

「レイル、これを持て」

「!これは…」

ベテルギウスより渡された物を見て、レイルは一瞬その驚愕を隠せずにいた。
それもそのはずであり、彼から渡されたそれはこのヴァーレンハイト王国建国時より
存在した国の象徴にして、王の威光を現す宝剣【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】であった。
だが、それ以上にレイルを驚愕させたのは彼がその剣を持った瞬間
その剣が光り輝きまるで彼を認めるかのように祝福していたからであった。

「これは一体…?!」

「…やはり、そうか」

驚愕の表情を消せないまま、呆然と事態を見ているレイルとは対極に
ベテルギウスは落ち着き悟ったような口調を続ける。

「レイル。お前は世界の残された五つの“欠片”の一つ
【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】に認められし所有者だ」

「僕が、【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】に…?」

「ああ、そして、それは同時にお前がヒルデベルトと同様に
この時代に残った星触を唯一再び封印する事が出来る人物という事になる」

そう言い終えると同時にベテルギウスは軽くその指を鳴らす。
その瞬間、べテルギウスの星宝【時の変革(クロノス・クロック)】により
変革される前の記憶がレイルの中へと戻る。

「!」

記憶を取り戻すや否や、レイルは距離を取り手に持った黄金の剣を構える。
だが、当のベテルギウスは構えるどころか、戦意の欠片すら纏っていない。

「案ずるな、私はお前に危害を加えるつもりはない。
もしその気があったら、お前はここに来た瞬間に殺されていただろう」

「…どういうつもりですか?」

目の前に存在する王、機関統治者の不可解な行動に対し
思わずレイルは問わずにはいられなかった。
そんなレイルの疑問にベテルギウスはアッサリと答える。

「私は…いや、“機関”は滅び行く存在だ」

その言葉にレイルは耳を疑った。
まさか、この王国を総べる王にして機関の統治者。
そして、自分達があれほど束になってかかっても全く歯牙にもかけなかった
超越者たる神人が、自らの滅びを口にするなど。

「…お前は知らぬだろうが、二年前、機関内部で大規模な反乱が起こった。
当時、神たるイシュタルの恩恵を一身に受けた我らデミウルゴスの頂点たる
真なる0アケルナル、彼による反逆が行われ、我ら機関は多大な被害を被った」

それはおおよそこの世界に生きる全人類が決して知り得ない
世界の支配者達に起こった暗部をベテルギウスは語り出す。

「だが反乱の首謀者たるアケルナルは死亡し、その穴を埋める為に
当時プロパテール1だった私が0となりその座を埋めた。
現在、機関の構成員が半分近くになっているのは、その反乱の影響だ」

そして世界の常識を覆す事実をベテルギウスはあっさりと言い放つ。

「だが、真実はそうではない。二年前の反乱は達成されていた。
神はすでに――死んでいる」

「――!」

それはまさに一つの歴史の終わりを告げる衝撃の事実。
この浮遊大陸に生きる多くの人々は神の存在を知り、その加護下にあるからこそ
あらゆる悲劇や不運を乗り越え、己が救われると信じている。

「アケルナルは神を討ち取った後に姿を眩ました。
それ以降、我ら機関は神が殺された事実を隠蔽しあたかも神が
まだ存在し続けているかのように王国帝国、両国共にそのような芝居を続けた」

そこまで言い続け、ベテルギウスは不意にレイルを見る。

「だが、所詮偽りにより築かれた虚像は破壊されるのが落ち。
お前とクフィルの行動により、それは明らかとなった」

「…ベテルギウス、様」

「私はな、レイル。私なりにこの世界と人間共の事を想っている」

その言葉を聞いた瞬間、不思議とレイルはベテルギウスの内にある何かに気づき
構えていた剣を降ろしていた。

「我らデミウルゴスは神イシュタルによって生み出された新世代の人類。
故に旧世代の人類を導き、統治する事に否応はない。
それが神の名の下であればなおさらだ」

だがな、とベテルギウスは言葉を続ける。

「我らデミウルゴスは…“次世代の人類などではない”としたら、どうだ?」

それはおよそ完全なる神人にあってはならない、自己存在の否定。

「我らは確かに完璧だ。くだらない感情や目的、それらを一切持たず
老いず朽ちず、ただそこにあり続ける完成された一己の種。
だが、それは同時に終焉でもある。我らはすでに完結している。
そこに創造の余地はなく、進化も退化も、経過も何もない」

それ完全たる自らの否定であった。それをベテルギウスは何のためらいもなく語る。

「そう、我らの本質は“無”だ。我らは完全になったのではない。
感情や意志、寿命や成長、それら全てを無くし、完全になったと思い込んだだけだ」

それはデミウルゴスという種の真実。
彼らは何も持たないからこそ、完全であると。
それは失う痛みも、得る喜びも持ち得ないと言う事。

「レイル、機関はいずれ滅びる。お前か、クフィルか、あるいは別の何者かにより
その終焉を世に広められる。そうなれば、我らデミウルゴスの時代は終わる」

「…それで、貴方は僕にどうしろと言うのですか」

ここまでの真実を全て聞き終え
レイルはベテルギウスが言わんとしている事実を悟ろうとした。
彼が伝えたい事、それは即ち。

「我らは滅びる。ゆえにお前達“人間”の手による新時代を切り開け」

それは時代(デミウルゴス)の終わりと、新時代の始まり。

「レイル、かつてこの世界を蝕み、飲み込んだ災厄。
“星触”は今なおラヴァード帝国の帝城の最下層にて存在している」

「――!」

「あれが発動すれば、残ったこの世界を飲み込むことなど造作もなく
そうなればお前達人類の終焉だ。残るのは無の時代とその象徴たるデミウルゴスだけだ。
故にそれを防ぎたいのであれば、お前のその【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】を使え」

ベテルギウスの言葉にレイルは自分の手の中にて輝く“欠片”を見る。

「星触を破壊する方法はただ一つ。伝説の星宝【星の宙(エル・ディアス)】を置いて他にない。
だが、【星の宙(エル・ディアス)】を復活させるには別たれた五つの欠片を集めねばならん。
すでに星触が機能を取り戻し、その発動が間近となった今ではこの方法は難しい。
だが、お前の持つ【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】は別だ。
それは全ての欠片の中で核となる欠片。故に単独でありながらも星触を封印する機能を有している。
事実二百年前、その欠片の所有者であったヒルデベルトが、単独で星触の機能を眠りにつかせたようにな」

そう聞き終え、レイルはベテルギウスが何故、自らにこの欠片を託したのかその真実を知った。

「…なるほど。つまりは僕がこの“欠片”を持って星触を封印する事に
全てが掛かっているという事ですか」

「そう言う事だ」

言ってベテルギウスは背を向ける。それはまるで自らの役割が終わったかのように。

「…じき、この王国でも大きな変化が訪れる。
お前はその変化に乗じて地位を獲得し、帝国制圧の為の足がかりとするがいい。
無論、先に機関を潰すも好きにするがいい」

「………」

ベテルギウスのその言葉に対し、レイルは別の答えを持って返す。

「ベテルギウス様、貴方に取ってフィルは…何でしたか?」

そのレイルの言葉にしばし無言だったベテルギウスはただ一言を返す。

「息子だ」

たった一言、そう答えた。

「神よりそう託され、父であれと演じられた以上、ただそれだけの存在にすぎん。
我らデミウルゴスに家族と言う概念などは本来存在しない。
あれはただの見せ掛けの息子。どこにでも存在する他愛ない人間だ。――だが」

一拍のちベテルギウスはレイルの方へと振り向く。

「取り分け、愉快な人間であった事は認めよう」

その表情が本来、笑うと言う感情を持たぬデミウルゴスに
そうした表情を見たレイルはただ静かにうなずく。

「ええ、そうですね」

◆     ◆     ◆

GM:それはレイルから語られた真実。
彼がここまで至れた理由と、そして託された知られざる想い。
「フィル、僕が道を切り開く、その後に続く道は君が紡いでくれ。
君の王の道を持って。ベテルギウス様も、そして僕も、それを望むから」
言ってレイルは黄金に輝く剣を構える。同時に、彼からもたらされる最後の真実。

ライラ:(なんだか不穏な気配がするメポ)

GM(レイル):「この【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】と――“僕自身の命”を持って、星触を封印する」
それは星触を封印する唯一にして無二の条件。
かつてのライラのマスター・ヒルデベルトがそうしたように――。

アスタロト:「――!レイルさんの…命…」

ライラ:「!?」

GM:動揺する君らをよそにレイルはいつものように優しく微笑む。
「心配しなくても、へまはしないよ。それにもうフィルには僕は必要ないよ」

ライラ:ライラは引きとめようとして手を伸ばすんだけども
そうするのが合理的だなぁと思考回路が言うので引き止めきれずに手を彷徨わせているよ。

GM(レイル):「…ライラ、ごめんね。折角また会えたのに、こんな事になって。
だけど、僕の分までよければフィルの事を頼むよ」

ライラ:「――嫌、です」
俯いて、ライラは言う。

GM(レイル):「…ライラ?」

ライラ:「嫌ですマスター! わたしは嫌です!」
合理的でないことは、判っている。事実、彼女の頭は、自身の台詞を非合理だと断じている。
思考回路がエラーを吐く。妥当性を欠いていると騒ぎ続ける。

GM(レイル):「ライラ…だけど、もうこれしか方法はないんだよ…」

ライラ:「折角、会えたと思ったのに……。事さえ片付けばもとの生活に戻れると思っていたのに……」
うまく言葉にならない。あたまの何処からか湧き上がる感情が漏れるだけで。
己に刻まれた基本律に反した言葉が垂れ流されるだけで。
いつものように強い言葉が、どうしても出てこない。
気がつけば、レイルに縋っていた。行かせまいと、彼の両腕を強く握っていた。
「わたしは、もっとマスターと一緒に居たかったのに」

GM(レイル):「…ライラ」

ライラ:「もう……もう沢山です、マスターを失ってわたし一人だけ生き長らえるのは。
わたしはマスターを守るために生まれたんです。わたしの身体ならいくらでも換えが効くのに……っ」
――どうして、そんなに自分勝手なんですか。
――どうして、世界はこんなふうなんですか。
――どうして、たいせつなひとを奪うのですか。
――どうして、わたしではなかったのですか。
言えない。言えるわけがない。そもそも言葉にすらなっていない。
口を衝いて出るのはもはや嗚咽だけで、何処からか湧いた雫が瞳を濡らす。

GM:ライラの言わんとしている事はレイルもまた理解していた。
同時にそれを願ってもいた。

だが、目の前にある脅威を知っているからこそ、レイルはそれを受け止めるわけにはいかなかった。
ここで星触の封印を見逃せば、それはやがて大いなる災厄に繋がる。
のみならず人の世の終わりすら意味する。

それでは、彼が知る人々、護りたい人、そして友や愛する人の命も人生すらも消え去る。
それだけは決してさせてはならない。
彼女が彼を護りたいように、彼もまた彼女達を護りたい。

たとえ、そこに自分の存在がなくとも――

「……星触を、封印する」

クフィル:「レイ」

GM:君の呼びかけに、レイルはゆっくりと首を動かす。

クフィル:「歯ぁ食いしばれこの馬鹿野郎ッ!!」
全力でぶん殴りますが構いませんね。

GM:どうぞどうぞ(笑)
全く予期せぬことだったのか、君の放った拳をまともに受け
レイルは一歩、二歩と下がり、殴られた顔に手をおく。

クフィル:「この馬鹿レイ!俺を誰だと思ってんだ!!」

GM(レイル):「…え?」

ライラ:※ライラはもうなんだかよくわからんことになっているので
殿下にたいして何の妨害もしません。好きに料理してやってください

GM:料理って(笑)

クフィル:「いいか、お前が忘れちまってるようだからもっかい教えてやるぞ。
俺はクフィル、アシュレイ=クフィル=フォン=アレクサンドロスだ。
偉大なる王ベテルギウスの息子で、レクトルやファルナスさんの意思を継ぐ者で…お前の親友だ」

GM(レイル):「…フィル。そんなの言われなくても分かっているよ」

クフィル:「その俺がッ!お前の命犠牲にしなきゃ世界救えないような男だと思ってんのか!
水臭い事言ってんじゃねぇぞ、親友」

GM(レイル):「…けど、フィル。こればかりはだめだよ。他に方法がないんだ。
仮に今ここで、星触をどうにかする方法が君にあるのかい?フィル」

クフィル:「確かに、今の俺にはねぇな。だがそれが諦める理由にはならねぇ。
あの時あの丘で誓っただろうが。苦しみも、喜びも、悲しみも、困難も、逆境も、死地であろうとも。
全てを我と共に超え、未来へと歩め。俺だけじゃ無理かもしれねぇ。
だけどここにはお前も、アストもライラも居るんだ。だからレイ、お前の力を貸してくれ」

GM(レイル):「…全く、君は本当に相変わらずだね」
言って、レイルは君を見据える。
「ここで、星触を封印しなければ、星触はいずれその力を発動させる。
それだけでなく、この星触があるだけで、それを利用しようとする者は必ず現れる。
それらを退け、君がこの星触を破壊するというのなら道はただ一つ。
五つの欠片を集め【星の宙】を完成させるほかに道はない。けれど、本当に出来るのかい?フィル。
最後の“欠片”は神を殺した敵の内にあるんだよ」

クフィル:「解ってるさ」

GM(レイル):「敵はかつてないほど強大、加えて時間制限付き。
それでも――やれると言うのかい?」

クフィル:「臨むところじゃねぇか」

GM(レイル):「――そうか」

クフィル:「出来る出来ないじゃねぇ、やってやるさ」

GM:その言葉を聞き終え、レイルは一つの決断を下す。
手に持った【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】をフィルに向ける。
「なら、それを僕の目の前で、僕に証明してくれ。この【黄金の剣(アルナ=ゴルト)】を継承し
唯一星触を封印する事が出来る僕を越えられる答えを――ここで示してくれ」
それはレイルが下した最後の選択肢。己一人による世界の救済か。
それとも僅かな可能性しか存在しない友が示す道か。それを見極める、最後の決断。

クフィル:「わかった」
静かに剣を抜き放ち、構える。

GM:それはかつて、この物語が始まる前、二人であの丘で剣を交えたように――
今、二人は己の道、それを貫く為、剣を取る。

GM(レイル):「――フィル、言っておくけれど手加減は抜きだよ」

クフィル:「レイ、俺が強敵相手にこそ敬意を持つ事知ってるだろ?全力で行くぜ」

GM(レイル):「ああ、見せてくれ。君が進むべき道が本当に世界を照らせるのか。その答えを」

「――行くよ、フィル」

「―――来い、レイ!」

それは二人の友による最後の決断の戦い。
そして、それは彼ら自身、この場にいた全員が忘れる事はないであろう闘いが始まる――。

 
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