第三十六章「機関崩壊」
◆ミドルシーン8 〜機関崩壊〜
それはかつてない戦慄と慟哭。

クフィル達が相対していたのは間違いなくデミウルゴス最高位の
プロパテールb持つ人物サダルスード。

彼の前にはクフィル達のあらゆる攻撃はそらされ
渾身を込めた一撃を持ってして彼の身体にようやく傷を与えていた。

だが突如として現れたその男。
仮面を被った不気味な雰囲気を放つその男はただの一撃、剣を一薙ぎしただけで
サダルスードの腕を切り落とした。

GM(サダルスード):「何故…君がここに…ッ」
疑問を口にするサダルスード。だが仮面を被った男・ガドフリートと呼ばれたその人物は
ただ静かに血に濡れた右手を己の仮面へと当てる。そして。

「【剣聖一閃】」

そう呟いた刹那、光が放たれた。

“ごおおおおおおおおおおおおおおん!!!!”

GM:それはこの場に存在した空間、部屋全てを吹き飛ばした。
君達が次に眼を開いた時、上空にあった天上は全て吹き飛び青空のみが広がっていた。

クフィル:マテマテマテマテ。剣聖一閃ってお前(笑)

GM:そしてその光の直撃を受けたサダルスードはその全身を大きく傷つけられ
見ると唯一の腕であった左腕すら今の一撃で再起不能なほど傷つけられていた。
「ば、馬鹿な…なんで…君がこれほど…」

唖然として問うサダルスードだが。

「【牙風(アゼス・ラファ)】」

次に仮面の男がそう呟いた瞬間、嵐が降臨する。

否、それはもはや嵐にあらず、天を貫く風の牙。それらが合計4本。
ガドフリートはそれを己の手足のように放ちサダルスードの身体を切り裂く。
あの如何なる攻撃にも耐え、絶対の幸運に護られていたサダルスードが
神風の牙に無残に引き裂かれ、もはや傍目にも分かるほどにその命が切り落とされていく。
やがて、満身創意となり、地に倒れ付したサダルスードの傍まで来た仮面の男は再び呟く。

「【涅槃寂静剣】」


“ごおッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!”


それは、知覚・認識・把握・理解。
それら一切が出来なかった仮面の男が放った業(と呼んでいいのかすら不明なほどの一撃)

それは次の瞬間、信じがたい光景がクフィル達の眼前に晒されていた。

神の居城であるこの星王殿、その半分が今の一撃で消滅していた。

まるで綺麗に切り取られたように左側全てが一切消えていた。
そう、君達があれほど長い通路、螺旋階段を上がってきた城の上下、全てが。

ライラ:ちょっとまて。【機関崩壊】って……物 理 的 に か。

アスタロト:(笑)

クフィル:物理的に機関が消滅したぞ(笑)

GM:仮面の男の足元にいたサダルスード。
それはすでに一目でも分かるほどの瀕死の状態であった、このデミウルゴスは死ぬ。
サダルスードの半身が星王殿ごと消失したからだ。

ライラ:GM!GM! ライラこの能力欲しい!(黙れ

GM(サダルスード):「………ぁ……」

クフィル:俺も俺も!!

GM:無理ぽ(笑)

ライラ:流石にそうですよねー。

アスタロト:欲しい欲しい!

GM:サダルスードは最後の力を振り絞り見る。自分の先にいる玉座に座る兄を、その死体を。
「………兄、さ………―――」

“ざんッ”

GM:仮面の男・ガドフリートは手に持った剣を一薙ぎする。
それだけで、サダルスードの命を繋いでいた全てを絶たれ
彼の首は彼の兄の下へと転がり、やがてその場所は先程の一撃の余波により崩れ去っていく。
眼下の世界。何もないただ雲のみが広がる空。
そこへ、機関最後の指導者であったプロパテール達の死体は共に沈んでいった。
それはもはや戦闘と呼ぶにも値しない一方的な虐殺。
君達があれほど苦戦し、今まさに敗れる寸前であった最高位のデミウルゴス。
それを赤子の手を捻るように目の前の男は一掃した。

クフィル:正直目の前の光景に理解が追いついて来ない。

GM:知らず君達は全員恐怖し、そして理解する。
目の前にいるこの男を現す言葉があるとすれば、それは―――“悪魔”
通俗的なな名称にして俗語。子供が使うような陳腐な名称。
だが目の前の男を現すのにそれ以上の名称は必要無かった。
紛れも無く、こいつの強さ・存在、その全てが“悪魔”以外の何者でもない。

クフィル:今まで出会った存在の中で間違いなく最強。それも、格が違う。

GM(ガドフリート):「さて」
静かに仮面の男は君達を見回す。
「まずはよくここまで生き残ったと褒めておこう。クフィル、アスタロト、ライラよ。
だが残念だったな、すでに遊戯(ゲーム)の判決は下され、遊びの時間は終わりなのでな」
と静かに男は地に倒れ伏しているフィルを指差し、静かに宣言する。
「Game Over。君はこの遊戯(ゲーム)の失格者だ。クフィル=フォン=アレクサンドロス」

クフィル:「…意味のわかんねぇ事言ってんなよ…」
歯を食いしばり体を起こし、膝立ちになる。

GM(ガドフリート):「ふむ、では分かりやすく行こうか」
言って男は君にだけ通じる何かを言い出す。
「月詠みの月18日。レイルの騎士受勲。君はAM8時に起床。朝食を食べた後に朝の訓練を行なう。
AM11時、君は城の廊下を歩き国王ベテルギウスと話し
レイル=ディラスを迎えるためにレイルの両親が眠る丘へと向かう」

「月読みの月21日。レトの丘にてアスタロト、ライラと出会い行動を共にする。
この時、機関残党との戦闘により君の中にあるベリル=ベリアが無自覚な目覚めを果たす」

それは、今までクフィルが通ってきた道。その記録。

クフィル:「…何故…」
何故…知っている?疑問符が頭を埋め尽くす。

GM(ガドフリート):「クフィル。これはな、遊戯(ゲーム)だったのだよ。
参加者は二人。遊戯の目的は一つ機関という残党を倒すという遊戯だ」
言って彼はしかし大仰な手振りをし失笑しながら続ける。
「正直、君もいい所までいくかと思ったが、フフッ…いやいや期待外れもいい所だった。
だがまぁ、道化としてはなかなか見物だったぞ。クフィル」

クフィル:「…言ってくれるじゃねぇか…!」

GM(ガドフリート):「『男には決して譲れぬ一本の道がある』
君は、この言葉を何か勘違いしていないか?」

クフィル:「!?」

GM(ガドフリート):「君はミシアンでファルナスに言ったな。兄からそう、受けたと。
そしてこの星王殿でも、ユリウスとの会話の中で友がいたから自分は王道を進めたと」
言って仮面の男ガドフリートはハッキリと断言する。
「クフィル。君のそれは“君の道じゃない”。
君はただ、模倣しているだけだ。兄の言葉を兄の道を」

クフィル:自らが今まで信じ抜き、歩んできた道。

その道が、今、霞む。

GM(ガドフリート):「友がいたから変われた。
ならば、君のその道は友が提示してくれた、いわば友が整えた道ではないのか?
それを君は悠々自適と己が道と主張した」

クフィル:「…ち、違…」

GM(ガドフリート):「君が一から作ったわけでもなく、ただ兄の模倣と
友の力に頼った道だと言うのに…それで王道、か。くっくっくっ、いやいや道化としては得がたいよ
自分が道化の道を歩いているのに、それすら気づかない世界で最も滑稽な道化」

クフィル:必死に否定の言葉を紡ごうとするが眼前の男の言葉がそれを総て打ち砕いていく。

GM(ガドフリート):「君はただ、“運が良かった”だけなんだよ。
優秀な兄。道を示してくれた友。そういった周りの環境に恵まれすぎた。
だが、君自身は本当に得た物はない。全て模倣や“残されたもの”を
自分の物と思い込んだいわゆる低俗な王様なだけだ」

クフィル:「…ち、違う…違う違う違う…!!」

GM(ガドフリート):「故に、君は敗者だ。ヴァーレンハイト第二王子クフィル」

クフィル:意思が、心が、理想が。

GM:冷徹にその事実を告げる。
彼が言う敗者。それは遊戯に関することだけではなく
もっと大きな意味であることをクフィルは叩きつけられた。

折れた。

GM(ガドフリート):「…だが、“彼”は違う。彼は誰に会うまでもなく
誰に諭されるまでもなく、また誰に与えられるまでもなく、その道を得ていた。
自身こそがこの世界を統べるに相応しいと、その器、能力、カリスマ
それら全てを備えている事を、この遊戯(ゲーム)の中で遺憾なく発揮してくれた」言って彼は宣言する。
「教えよう、我らの名を。我らは古きこの時代を一掃し
新たなる時代の到来を告げる者達」

「【新世界の民(ヤルダバオト)】」

GM:その宣言と同時に、ガドフリートの背後に現れる複数の影。
それはオグドアス5シリウス。オグドアス11ヌンキ。
そして―――白き覇者・ユリウス=アーグスト=ラヴァード。

ライラ:ヤルダバオトと聞いた瞬間にガドフリートの声がノリスケで聞こえ始めた。
あとヌンキの名前がでただけでシリアスぶち壊しになった気がするのは僕だけ?

クフィル:ナカーマ

アスタロト:空気ブレイカーすぎる(笑)

GM(ガドフリート):「さて、我ら【新世界の民(ヤルダバオト)】は二年前に結成された神の民、
とでも言えばいいかな。君達も先程、サダルスードから聞いたであろう。
二年前に神が殺された事を?その時に新時代の幕開けは始まっていた。
そう、我らが神・アケルナル様の手により」
彼は語る。それはこの物語が始まる以前よりすでに開始されていたある神の壮大な計画。
「アケルナル様は新時代を作るにあたり、一つの考えを提示した。
それは自分が作る新時代の世界、そこを統べるに相応しい“王”を見つけると言うこと。
故に、我らは今まで機関を滅ぼさずに見せかけの維持を容認していた。理由は、もう分かるだろう?」
その機関を滅ぼした者に“王”の資格を与えるためだ。
そしてこの遊戯(ゲーム)は開始された、我らが選んだ王の候補者は二人」

「クフィル。君とユリウスだったんだよ」

GM:それは今までの全てが仕組まれた出来事。
あれほどの戦い、死闘。世界を救うという決意。
それら全てが文字通り、神が盤上で見ていた遊戯に過ぎなかった。
「まぁ、結果は先程言った通りだ。君はこの旧時代と共に消え失せたまえ」
そして、それまで黙っていたユリウスが静かに一歩前に出る。
そして、彼は倒れたクフィルに一つの物を投げる。まるで塵でも捨てるように。
それはクフィルがユリウスに預けた指輪。
「返そう、私には不要な物だ。逆にお前には必要だろう。“過去に執着したい”お前には、な」

クフィル:よろよろとした手つきでその指輪に手を伸ばす。

GM(ユリウス):「クフィル。私はな。最初にこの機関が過去の遺物と言っただろう。
そして現にその通りとして機関はただ過去の栄光、滅びたはずの現状を今まで見せかけていた。
それはつまり機関は“過去しかみていない”。お前もそうだ。兄の道。友の言葉。見ているのは過去。
他にも現状や、仲間を殺させないと今ある敵・機関と戦い続けていた。
だがそれは所詮“今しか目に入らない”者の行動。
だが私は違う。私は過去を振り返らない、私が見ているのは“未来”だ」
そう、事実としてユリウスは機関などすでに滅び行く存在と断言し、彼はその先の未来
己が作り出す為の未来に必要な目的のみを追い求めていた。

クフィル:違う。そう言いたかった。けれど現実は残酷で。

GM(ユリウス):「最後だ。クフィル。私がこの機関本部へ
お前達と共に来た本当の目的を教えてやろう。私が求めていたのは――“星蝕”だ」
言ってユリウスはその衝撃の目的を語る。
「無論それを使って世界を滅ぼそうなどとは微塵も思っていない。
私はただ、世界を統べる為の力。戦争を早期に終結させ、戦争自体を起こさせない
絶対の牽制力として、星蝕を求めていた。世界を統べる者にはそれ相応の力と武力が必要。
故に星蝕を必要とし、その居場所もすでに掴んだ。もはやお前達とはこれまでだ」

クフィル:(そうなんだよなぁ…結局フィルが行ってきたのは事後対処であって防げてないんだよなぁ…。

GM:言ってユリウスは身を翻し、ガドフリート達の後ろへと下がる。

クフィル:ただ背中を見つめる事しか出来ない。
自分にはあの男に声をかける権利すら、有りはしない。

GM(ガドフリート):「では、役目が終えた君達はそのまま新時代の幕開けを見ているがいい。
我ら【新世界の民(ヤルダバオト)】と、それを統べる王ユリウスによる変革を、な」
そうして、それまで空気を呼んでいたヌンキが不意にその不気味な言動を放つ。
「そぉいう事だおww じゃあ、ライラたぁん、一緒に往こうかwww」
と、手を差し伸べるヌンキ。

その瞬間、ライラはヌンキの星宝によって影響を受けたあの時の記憶・出来事が鮮明に蘇る。

◆    ◆    ◆

GM:【偽りの絆(スピュアリアス・バンド)】
あの時、あの部屋でヌンキに向かって行った君はヌンキのその星宝をその身に受けていた。

星宝:【偽りの絆(スピュアリアス・バンド)】 形状:領域型 ランク:測定不能EX
タイミング:宣言 対象:単体 射程:大陸を包むほどの範囲内
説明:感情を持つ者に対してのみ働く特殊な星宝。
この星宝の対象となった人物はこの星宝所持者が指定する人物(自身でも他者でも良い)に対して
“絆”が生まれる。それは冷める事の無い愛であり、何者にも変えがたい恋であり忠誠であり、
友愛であり無償の信頼であり全てとなる。
この星宝の対象となった者はこの胸の内にある絆を何よりもの絶対の証とし、
疑う事無くその者に尽くし続ける。感情を持つが故に人間は決してこの星宝に抗う事は出来ない。
ある意味で最も非道な星宝とも言える。

GM(ヌンキ):「うはwwwこれでライラたんは私の恋人wwwww」

アスタロト:GMどうかしてるwwwwwwww

GM:ハッキリ言われたwwwwwww

クフィル:噴いたwwwwww

ライラ:つまり僕はこうするといいのですね。
「何を言って」
【“絆”ノ効力ヲ発動】
【一般処理てきすとヲ抹消】
【しすてむヲ再構築中……終了】
「はい、主様」
と言ってライラはにっこりと微笑んで“主”の方へぱたぱたとかけてゆき、嬉しそうに
彼の腕に自らの腕を絡めてしなだれかかる。って書いててなんだか頭痛くなってきた(笑)

GM(ヌンキ):「ライラたんがデレたーーーー!!!wwww」

ライラ:それGMの魂の叫びだろ(笑)

クフィル:GM=ヌンキ確定

GM:そんなことはねぇよ(笑)
「よしよしwじゃあ、ライラたんwとりあえず今はクフェール…だったけ?w
そいつらと一緒に行動していていいおw でも、時が着たら迎えに来るから待っててねww」
すまん、GMがきもくなってきた(笑)

クフィル:頑張れ(笑)

ライラ:「はぁい、主様。待ってるねー」
と言って手をぱたぱたと。

◆    ◆    ◆

GM:そうして、再びヌンキが前に現れ、その宣言をすると同時にライラが
クフィル、アスタロトから離れ目の前のデミウルゴスの下へと駆け寄っていく。
それはクフィル達から見れば信じがたい光景。
ライラがすごいデレながら目の前のキモオタの隣りにちょこんといる。
「ハァハァwwライラたんきたwwこれでかつるwww
まぁ、そう言うことらしいからさ、クフェールさん、残念でしたね。
君は結局何も得られていない。王の資格も、仲間も、ライラたんもwww」
言いながらヌンキはとなりにいるライラたんをさわさわしている。

ライラ:ライラは喘いでます(´・ω・`)ノ

GM:なんという光景(笑)

クフィル:もうやだこの場所(笑)

アスタロト:絶句する(笑)

ライラ:(なんでこんなことになったのかぼくにはわからないお)

GM(シリウス):「…ヌンキ、お前はそのマシーナリーを連れてユリウスと共にさっさと移動をしろ」
さすがに見かねたシリウスが空気読んでそう言ってくれる。
そのシリウスの指示に従うようにヌンキとライラ、そしてユリウスは次元移動を開始する。
最後にユリウスの冷たい眼光をクフィルは見た。

クフィル:思わずその目から視線を逸らす。

GM:そうして、ヌンキ、ライラ、ユリウスが消えた後、シリウスがアスタロトへと言う。
「アスタロト、あのブルーメという男に関して今はオレ達の手中にある。
まぁ、お前にはあまり関係の無い話かもしれないがな」

アスタロト:「……ッ!」
息を呑み、胸を打ち砕くようなショックに襲われる。

GM(シリウス):「安心しろ、殺してはいない。もしも、お前がオレ達を追う覚悟があるならば
いずれ会う事もあるだろう。それに、先程ユリウスが言ったとおり、我らは星蝕の回収に向かう。
世界を護りたければ、追ってくるがいい、お前自身の意志で」
そう言ってシリウスもまた姿を消す。そして残った仮面の男・ガドフリートはクフィルを見下し呟く。
「君の兄が今の君を見たら、何と言うかな」

クフィル:「……」
ただ無言で見上げる。

GM(ガドフリート):「まぁ、死者の言葉にいちいち心動かされるようでは
それもまた器の小さい事例に過ぎないがな、立ち止まるならば好きにするが良い。
我らの敵はその程度の矮小な存在では到底務まらん。
だが、もしも再び立ち上がり、我らの道の前に立つのならば…その時は真に
揺ぎ無いお前自身の道を見せるのだな。そうでないと、オレも面白味がない」
ガとフリートはそう言い身を翻す。
「覚えておくがいい、我が名をガドフリート・アイオニアスをな」

クフィル:「……」
『道』
一瞬その言葉に反応を見せるもその瞳に光が戻る事は無かった。

GM:言ってガドフリート・アイオニアスを名乗る男もまた、姿を消した。
後にはクフィルとアスタロト。二人のみが残されていた。

事実、これで“機関”と呼ばれる存在は消滅した。
だがその代わりにクフィル達の前に現れた真の脅威、新たなる時代の幕開けを告げる者達。

【新世界の民(ヤルダバオト)】

その圧倒的存在の前に、残されたクフィル達はただひれ伏していた。


◆ミドルシーン9 〜新たなる局面〜
GM:あれから一日。
崩壊した星王殿よりクフィルとアスタロトはシャマリーさんによりミシアン領地まで戻ってきた。
だが、そこに戻った君達を向かえたのは意外な人物と新たなる展開。
ミシアン領地の首都で君達を出迎えたのはミュラー
そして七将王の一人であり現在の帝国軍の指揮をしているはずの“賢王”カールであった。
「…久しいな、アスタロト」
カールはアスタロトを確認するとそう挨拶する。

アスタロト:「カール様…!何故ここに…?」

GM(カール):「私は使いのような者だ。ある事実を伝えるためのな」

「アスタロト、そしてクフィルよ。王国と帝国の戦争が、終結した」

◆    ◆    ◆

それはまさに見事としか言い様の無いヴァーレンハイト現国王
レイル=ディラスによる戦略構想であった。

レトの丘にて集結していた帝国軍、そこへレイル王の命により
セオドル・ナナリアの軍が王国に存在するほぼ全軍を率いて陣を展開。
初日はにらみ合いが続くも二日目以降になると
帝国軍はその圧倒的軍勢を持って王国軍を飲み込みに掛かる。

これに対しセオドル・ナナリアはレイル王より渡された戦術を持って
攻勢に出ず防衛線を維持して、長期戦の構えを見せる。

王国のこの動きに対し帝国軍の指揮を行なっていた
“賢王”カールはその意図を正確に見抜く。
即ち、援軍の為の時間稼ぎ。

事実、王都よりレイル王率いる王国軍の
精鋭出発を情報を得ていたカールはそれに対応するように
帝都に残った予備兵力をレトの丘へ集結させ
王国軍の援軍もろともこの地で殲滅を謀ろうとした。

それはまさに敵軍の動きを読んで即座に対応させた
“賢王”たるカールの見事な手腕。
戦略家としても戦術家として一流であったが故に“賢王”は
天賦の才を持った金色の王に敗れる事となる。

誰もが王都を出発したレイル軍がレトの丘へ向かうと思われた。
だが、数日後にもたらされた事実に帝国軍は動揺を隠せなかった。

レイル軍が向かったのはレトの丘を越えた先、即ち帝国の首都エンブレル。

レイルは進路の途中まではレトの丘への道筋を通り
そこから進路を変換。
丘を大きく迂回し帝都への進撃ルートを辿る。

この時、レイルは帝都を目前にして
“あえて”その情報をレトの丘にいる帝国軍へと流した。

それを聞いたレトの丘の帝国軍の動揺はレイルの推測どおり
パニックに近いものであり
軍勢の一部は急ぎ帝都の防衛の為、引き返す者達もあった。

だがレイルはレトの丘から帝都へ軍勢が到着できる時間を計算に入れ
例えこの状態で帝都への帰還を行なっても
その援軍は間に合わない距離で情報を流していた。

同時にこの情報を得た王国軍の
セオドル・ナナリアもまた事前に伝えられた戦術通りに
守勢から攻勢へと転換。混乱を来たした帝国軍へ総攻撃を開始する。

“賢王”カールは現状で帝都への帰還を取っても
それが間に合わない事を見抜き
前面の王国軍を叩いた後に帝都の奪還を行なう。
それが最善の策と信じ。しかし、それが実現する事は遂に無かった。

軍勢のほとんどをレトの丘に向かわせた帝都は
レイル軍により僅かな内に陥落。
帝都陥落の報はレトの丘にいる帝国全軍を動揺させ瓦解を誘った。

王国最強の騎士セオドルによる
中央突破が行なわれ陣形を崩壊された帝国軍は
帝都を陥落させ指揮が高まったレイル軍にその後背を突かれ
帝国軍は降伏を余儀なくされる。

もしも、帝国にて稀代の天才戦略家
ユリウス=アーグスト=ラヴァードがいれば
このレイル=ディラスの戦略を見抜きそれに対応し
歴史は異なっていたであろう。

だが事実としてレイル=ディラスと言うたった一人の王の戦略により
帝国は敗北を喫する。

ここに200年以上の歴史を誇る王国と帝国の戦争は
僅か一週間足らずで終結を迎える。
犠牲は戦場において王国・帝国共に多数に上ったが
それは当初の予測死者数の三割以下であり一般市民への犠牲は皆無であった。

ライラ:(なんにせよ、レイル様進軍早すぎワロタ)

GM:(レイル「超高速で進軍するよー!」)

王国と帝国の存亡をかけた大戦争。
それは万人が想像した犠牲の一割にも上らず万人が理解する暇も無く開幕され終幕された。

◆    ◆    ◆

GM(カール):「私はそのレイル王より、この地にいるクフィル様。
貴方様へ言伝を伝えるよう頼まれて来ました」
言ってカールはクフィルの前まで言ってその伝言を伝える。
「…“星蝕”は、帝城にある。そう言っておりました」
静かに役目を終えたカールはクフィルから離れていく。

クフィル:………。

GM(ミュラー):「……フィル様」
出発前の君と雰囲気が違うことを悟ってか、ミュラーは君に声を掛ける。
「…どうか、なされたのですか?」

クフィル:ぼんやりとした様子でミュラーの方へと目を向ける。

GM(ミュラー):「一体…どうされたのですか」
本当に君の身を案じるように、いつもとは違う口調で再度確認を行う。

クフィル:「…いや…うん…なんでも、ないよ」
ミュラーの優しさや忠誠、信頼を受ける権利、価値などこの身には無い。

GM(ミュラー):「……そう、ですか。では、出発は明日で構いませんか?」

クフィル:「あぁ」
短く答え皆に背を向ける。

ライラ:殿下の背中が滅茶苦茶煤けてるお……。

クフィル:「すまない、疲れてるんで今日は休ませて貰うよ」

GM(ミュラー):「………」
しばらくフィルの背中を見ていたミュラーはそれに応えるように頭を下げる。

クフィル:(オデノゴゴロァボドボドダァー!!

GM:ではクフィルが部屋へ向かったのを確認した後、ミュラーはアスタロトの方を振り返る。
「…アスタロト。私は君に言わなければならない事がある。レクトルを殺したのは、私だ」
言ってミュラーはそう断言するように真実を打ち明ける。
「…もしも君が仇を討ちたいのならば、ここで私を殺して構わない。
だがその代わりに頼みがある…フィル様には何の咎は無い。
ゆえに、あの御方のためにこれからも力を貸すと約束して欲しい…」

アスタロト:「………」
一筋の冷たい息をつくが、視線は落とさず、ミュラーの顔を見据え、言葉を受け止める。
「たとえあなたを殺しても、誰も喜ばない――
殿下も、私の仲間も、レクトル様も、そして――私自身も、また」

GM(ミュラー):「………」
その言葉を受け取り、ミュラーはただ深く頭を下げ、呟いた。
「…すまない」
その言葉の端にはミュラーの涙が確かに宿っていた。

アスタロト:自分の頬にも、涙。
とうに枯れ果てたろうと思っていたのに。
憎しみも何も分からない、透明な涙を零し、一礼をする。

GM(ミュラー):「…私がやった事はいくら言葉にしても償えない。
だから、私の罪は行動で償う。おこがましいかもしれないが…
私にはそれ以外の道が見つからないから」
言って深く詫びたままミュラーは告げる。それは彼のうちにあった本心の言葉であったのだろう。

アスタロト:「…そんなに自分を責めないでください。
悲しみは…いつか必ず癒える物ですから――私は大丈夫です」

GM(ミュラー):「…ああ。ありがとう、そしてすまないアスタロト――」

そうして、一つの因縁の内を話し、ミュラーとアスタロトはお互いを知った。

絆は知ることで生まれる。互いを理解していくことで育まれる。

そうして、翌日。
出発の準備を完了したアスタロト、ミュラーと主戦力となるメンバー達。

だが、そこにミシアン領主クフィルの姿は―――無かった。

◆    ◆    ◆

次回エスペランサーセイバー第二章・クライマックス編

王道を折られたクフィル。
己の覇道、新時代の幕開けのため帝都へと向かうユリウス。
そして、それに同行するヌンキとライラ。

一方、帝都では万を持してあのレイル再登場の予感が?!

次回「クライマックス編だぜ!」

次回もアタシと一緒にエスペランサーセイバー!!(byフィー)

クフィル:フィー(爆笑)

ライラ:ばいフィー!

アスタロト:フィー頼りになる(爆笑)

 
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