◆エスペランサーセイバー用語辞典

五つの理が存在する世界 
 エスペランサーセイバーの舞台となるエル=ファルスには五つの大陸(世界)とそこを統べる理が存在している。
ひとつは“安寧”の理により支えられているカナン大陸。
ひとつは不毛なる砂漠の世界、“枯渇”の理が支配するサハラ大陸。
ひとつは北方の海域にて星蝕と呼ばれる“侵食”の理によって生み出された無限の海が支配する星蝕海。
ひとつは“開闢”、“太極”、“陰陽”の三つの理により生み出され存在している大世界・東源郷。
そして最後に、それら四つの世界と異なり唯一、理を必要せず存在し続ける世界・浮遊大陸ベルシェルス。
主に舞台となる地はカナン大陸、ベルシェルス大陸、そして東源郷であり、現在もこれら大陸内において
無数の英雄達と幾多の戦いが生まれ、人知れず歴史にその名を刻み、新たな物語が開幕し続けている。


◆カナン大陸

 “安寧”の理によって支えられている物語の舞台となる世界の一つ。
この世界の誕生には“守護”の理を有した自らの名を無くした英雄ヴァーミリオン(以下ガディム)によって護られ生み出された。
当時、世界は第一次星蝕戦役の最中であり、その中で偶然“理”を有する存在、この少女が生まれた。
だが、生まれたばかりの彼女の理では世界略奪を可能とする第四階位の“侵食”を有する星王の前には飲み込まれる以外に術はなかった。
しかし、時を同じく、その時代に“守護”と言う単一に囚われ、それよって生まれたもう一人の人神が存在した。
それこそが“守護”の名を持つ英雄にして人神“ガディム”であり、彼が持つ“守護”の理に支えられカナン大陸の誕生は果たされ
以後は名も無き少女の理のもと、カナン大陸の存続が果たされている。また、カナンには七つの聖地とされる
“琉球七御嶽(リュウキュウナナウタキ)”と呼ばれる場所が存在し、内一つが姫が座す首都カムイユカラにあるセーファグスイである。
このカナン大陸を舞台とする物語こそが最もエスペランサーセイバーに相応しく、その舞台となる場所も北方より侵食を開始している星蝕海を
相手にする物語か、遥か南より“枯渇”の理を宿しファミリーとしての結束を持ってカナンを侵攻するサハラ陣営との戦いになるか、それとも
同盟世界たるベルシェルス、または東源郷を交えた、物語を展開させるか、様々な魅力と物語を示してくれるであろう。

琉球七御嶽(リュウキュウナナウタキ)
 カナン大陸に存在する七つの聖地にしてカナンを支える重要な場所。それぞれ“セーファグスイ(最高位の御城)”、“クボウグスイ(自然樹の城)”
“スイグスク(十嶽の城)”、“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”、“アスムィウタキ(黄金の山)”、“ヤブサツウタキ(神水の湖)”、“クボーウタキ(神の鎮
まる森)”が存在する。それぞれがカナンにとっての要ともなるべき聖地であり、そこには例外なく姫の“理”による力と影響が強く出ている。
またこの中で“クボウグスイ(自然樹の城)”、“スイグスク(十嶽の城)”、“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”はそれぞれ、東源郷、サハラ大陸
星蝕海と外の世界に対する門番としての役割を担っている。※1

“安寧”の理を持つ名も無き少女

理:安寧  階位:第五階位
 “安寧”の理を有する名も無き少女。生まれながらの人神(アダムカドモン)にして旧神エルドラシル以降、初めて世界に生まれた純粋種の神。
その誕生は第一次星蝕戦役以降にも遡るとされ、彼女の世界を生誕させる為にその時代に生まれた“守護”の理を持つ人神ガディムによって
彼女の世界とその基盤となる世界は護られ、以後100年以上にも渡り彼女の世界はガディムの理によって護られ彼女の世界の誕生が行われた。
彼女自身は純粋無垢で穢れない存在であり、その為、自身の“安寧”の理も極めて純粋な感情として胸に抱いている。
彼女に取って、自分の世界とそこにいる人々の全ては家族であり、彼女に取って愛すべき全ての対象である。
普段は“セーファグスイ(最高位の御城)”の姫の間にて日常を過ごしており、時折、大事の時には一般の人々の前にも姿を表す。
常に笑顔を浮かべ、どんな人物であれ、優しく接する姿はまさに小さき女神そのものである。また彼女自身に名はなく、
これはある理由も含まれており、彼女の“理”自体は実はまだ成長途中の未完な理であり、
その階位も本来は“第五階位”ではなく、更に上位の階位であると推察されている。
また彼女の本来の名も、そうした自身の本来の“理”を得る事により、初めて名乗ることが出来るという。

“守護の理”ガディム

理:守護  階位:第六階位
 かつて世界の第一次星蝕戦役の時代に人の英雄の中で生まれた人神。死に至るその瞬間まで“守護”という単一の意識に囚われ
そこへ星王イシュタルが持つ理の力“星蝕”によって、守護以外の感情や魂を剥ぎ取られ、人神へと至った者。
人であった頃から英雄と過不足ない実力とイデアを有していた為に、人神となってすぐに己の理の能力を自覚し、その力を持って姫の理を
星王イシュタルが放つ星蝕より護り続け、カナン大陸の誕生を担った偉大なる英雄神。カナン大陸にいる全ての人々に取ってガディムとは
姫と同等以上の意味を持つ存在であり、今もなお彼の大陸の守護神としての名は尽きることなく伝えられ続けている。

摂政(シッシー)スフィル
 姫を補佐し支え、大陸内における政務や儀式、それらを姫に代わって執り行う事実上姫に次ぐ大陸掌握の権限を持つ人物。
その外見は20代後半の優男とも取れる風貌であり、常に落ち着き払った言動と態度は相対する者の心すら、穏やかなものにするという。
彼自身は姫が座す居城“セーファグスイ(最高位の御城)”にて同じく身を置き、よほどの事がない以上、その場を離れる事はしない。
また三司官達の意見を取りまとめ、彼らに対し直接指示を行い、その下にいる琉球十五隊士全てに対し命を下す権限すら有する。

三司官
 士(サムレー)の中でも才気、実力、智謀と全てにおいて優秀と認められた者のみが就く事を許された事実上の最高職。
琉球十五隊士を従え、彼らそれぞれに対し命を下す権限を与えられ、摂政(シッシー)に対し意見の進言すら許されている。
現在、この三司官は“クボウグスイ(自然樹の城)”、“スイグスク(十嶽の城)”、“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”それぞれの聖地城にて
実権と隊の掌握をしており、事実上の地方領主、城主としての役割も果たしている。またその内政や取締り、統治手腕もさることながら
他世界との架け橋となるべき役割も見事に果たしており、この三司官によって、現在のカナン大陸が安定していると言っても過言ではない。

“北司官”アルテミス

 星蝕海から侵攻してくる星王の軍勢やデミウルゴスを向ける為にある“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”を統治する三司官として
配属されている人物。彼女自身は実はカナンの民ではなく、星蝕海より同盟を行い迎え入れられたデミウルゴスの一人である。しかも
デミウルゴスとしての種別は最上級の純白のプロパテール種であり、こと戦闘能力においては、かつての旧星王が抱えた“無双”の名を冠した
アルレシャに比類するほどと謳われている。彼女自身、デミウルゴスの中で生まれつき星宝を持たず生まれた異端者の為、同胞からの扱いも
プロパテール種でありながら、それに相応しい扱いを受ける事無く、また感情や目的などデミウルゴスが失ったものを宿していた為に
そこも非難の的となっていた。そうした経緯があってか、彼女はカナンの人々に対し敵対意識を向けることが出来ず、同盟することを決意する。
その後、摂政(シッシー)スフィルの取り計らいにより、三司官の一人として、北の“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”を任せられる。
根っからの武人体質であり一般常識や性に関する部分に疎く、そうした部分をからかわれるとすぐに顔を赤くして反撃してくる。
目下最大の悩みを自分を「アルレん」と呼ぶ、直属の十五隊士ミシュラである。

“東司官”ファズナ=フィルロード
 カナン大陸遥か東方に存在する“クボウグスイ(自然樹の城)”を統治する三司官の一人。彼は同じ三司官ゲイル=フィルロードの息子であり
父親譲りの武術と才能、そして他国の者と接しても崩れない品の良さを持つ人物。東源郷やベルシェルス大陸側の司官を兼任するように
彼の外交術とその対応はまさに天性の者であり、三司官の中で最も若いながらも、その才覚を十二分に発揮している人物。
また彼の真価はその洞察力と観察力にあり、そこから分析し、導き出される答えは一つの例外もなく対象の真実を見抜き
戦いにおいては僅か数撃でその癖や、基本となっている型を見抜き、相手の弱点となる場所を瞬時に攻める、頭脳型の戦士でもある。
事実彼の計算能力と頭脳はカナン大陸随一の評価を受け、力のゲイル、頭脳のファズナ、技のアルテミスと三者は評価されている。
騎士としての誠実さ、太陽のように明るい屈託ない性格をしているが、唯一の弱点は女性に弱く、すぐに誘いをかける点であろう。

“南司官”ゲイル=フィルロード
 サハラ大陸とカナン大陸の境目、その国境となる場所に存在する“スイグスク(十嶽の城)”を統治する三司官の一人。
同じ三司官の一人ファズナ=フィルロードの父親であり、熟練した剣の腕を持つ、事実上カナン大陸における最強の人類と言っても過言ではない。
少し前に、カナン大陸に対し侵攻を開始したサハラファミリーの右腕と左腕と称されるアフラーとサマールの二人を同時に相手してなお
互角の戦いを見せつけ、その上、単身サハラと渡り合い、生き延びたほどの猛者であり、カナン大陸の人類にして唯一生身でサハラ大陸を
横断したとの逸話も噂されるほどの出鱈目振り。すでに40を迎えながらも、その威厳とカリスマ、能力に劣化は見られず
サハラファミリーとの関係が悪化し、いつ戦が巻き起こってもおかしくない状態でカナン大陸を守護するべく“スイグスク(十嶽の城)”にて
不動の構えを持って対峙している。

琉球十五隊士
 カナン大陸を支える士(サムレー)の中で姫の側近とされる十五隊存在する部隊の名称である。
それぞれの隊士をまとめる長として“隊士長”と呼ばれる十五人の上位士(サムレー)が存在し、彼らの下にそれぞれ無数の士が配属されている。
彼ら隊士長と呼ばれる者達はいずれもがカナン大陸において抜きん出た才能と能力を持ち、
それらを三司官ならびに摂政(シッシー)の判断によってその任へと選ばれた者達ばかりである。
彼ら十五隊士の内、第一〜第三隊士が姫の居城である“セーファグスイ(最高位の御城)”を護るの為に配置される。
第四〜六隊士が東司官ファズナが護る“クボウグスイ(自然樹の城)”の配置となり
第七〜九隊士が北司官アルテミスが護る“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”への勢力として配置され
第十〜十二隊士までが南司官ゲイルが治める“スイグスク(十嶽の城)”配置となる。
そして、第十三隊士が“アスムィウタキ(黄金の山)”の配置となり、第十四隊士が“ヤブサツウタキ(神水の湖)”への配置を
第十五隊士が“クボーウタキ(神の鎮まる森)”の配置を担っている。
それぞれがカナン大陸における重要な要所である“琉球七御嶽(リュウキュウナナウタキ)” の護りを行っている。

士(サムレー)
 カナン大陸における騎士の総称であり、姫を護る為に剣を握る者達に例外なく贈られる称号。
通常、正式な士となるにはカナン大陸の首都であるカムイユカラにある姫の居城“セーファグスイ(最高位の御城)”にて、その資格と資質を見せ
試験に合格した後に、授与される。正式な士となった人物達は琉球十五隊のいずれかの隊に所属し、十五隊士の命の下、日々の訓練や
戦への出陣などを行う。また、正式に士となった人物達は琉球士と呼ばれるようになる。※2

“琉球第一隊士長”キリク=エンフラント
 かつて、守護のガディムが姫の世界の誕生を支えた裏で、彼が助け拾い上げた一人の少年、それがこのキリクである。
以来、キリクはガディムとの約束を果たすために姫を護り、その第一の騎士、士(サムレー)となった。当初は自分の恩人でもあり、父親でもあった
ガディムを復活させようと古代の遺産や技術の研究に没頭するものの、そうした死者を生き返らせる所業の過ちに気づき、彼はガディムが自分に
託した“約束”の大切さに気づき、以来ずっと姫の護りの為にその命を捧げることを決意する。
またキリクはすでに失われた旧世界の文明や知識に通じており、現在のカナン大陸では唯一と言っていいほど、旧世界の出来事を詳しく知る人物
この為、彼が扱う古代器もそうした旧世界の技術の結晶であり、かつて旧世界において最強と言われた“神剣(ヴァンゼリア)”の劣化レプリカを
武器として扱う。また本来、キリクは琉球十五隊士ではなく、三司官を任せられるほどの人物であったが、自ら姫を護る為の地位である
第一琉球隊士を志願し、三司官の地位を辞退し、姫のいる“セーファグスイ(最高位の御城)”にて、その護りを担っている。

“琉球第五隊士長”王威 龍瀬(オウイ=リュウセ)

「…ああ、気持ちのいい風だ、ねぇ。この風なら明日も晴天の空だ、ねぇ」
 かつて戦友でもあり、前琉球第五隊士でもあった友を星蝕海に存在する“オグドアス・オクトバ(栄光の八座)”の一人
第三座のアテルイ=ドウジによって殺害される。その時に感じた自身への無力感とアテルイに対する憎しみを糧に
本来は後方支援の身であった己を鍛え続け、現在の琉球第五隊士となる。
アテルイと再戦するまで、リュウセはアテルイに対する憎しみと彼に追いつくことしか念頭になく、そのような“過去の自分”を
追い求めているようでは自分には永劫追いつけないと再びアテルイの前に敗北を喫する。
その戦いを経て、現在彼は“アスムィウタキ(黄金の山)”に座するシュテン=ドウジと共に新たなる道、さとりへと至る修行を行い
これまで彼になかったあるがままを受け入れ、それを踏まえて次なる極地へと至る道――強さを得ようとしている。
再び彼がアテルイと対峙するその時、彼は自身がそれまで行き着けなかった領域へと至るのか、それとも死の運命を叩きつけられるのか。
それは全て、その瞬間が訪れるまでのまだ見ぬ結末であろう。

“琉球第六隊士長”有我 天河(アリガ=テンカ)

「クリス…必ず君を救い出してみせるよ」
 カナン大陸出身にして代々琉球隊士長を務め続けた名誉ある家系に生まれた人物。そのため、彼自身も若くして琉球隊士長の地位に就き
隊士長としての任務を全うしている。彼が行っている任務とはカナンと、その同盟相手でもベルシェルスとの間を取り持ち、両者の関係を深め
同盟大陸でもあるベルシェルスへの危機に対して真っ先に救援を行うという外交を兼ね備えた隊士長である。
彼がその任務を行う理由の一つとして、彼の母方がベルシェルス大陸の出身である事と、そのベルシェルス大陸に幼い頃からの許嫁がいるという
ことが大きな理由である。しかし現在、その許嫁をベルシェルス大陸において発生したヨハネス教団による陰謀により奪われ
彼は同盟国であるベルシェルスの混乱を防ぐため、また許嫁を取り戻すためにカナン大陸の摂政(シッシー)スフィルからの許可を得て
ベルシェルス大陸にてカナンからの救援部隊の指揮、琉球隊士長としての活躍を行っている。
また彼はある事件により地獄と呼ばれる存在と深い繋がりを持つこととなり、今なお彼はその地獄と呼ばれる存在と深く繋がっているとされる…。

“琉球第七隊士長”ミシュラ=プロディズィー

「君、新しくここの配置になったの?よろしく、僕の名前はミシュラだよ」
 琉球十五隊士の中で事実上、最強の実力者と言われるデミウルゴス。彼はかつて第一次星蝕戦役の頃から生きてきた人物であり
浮遊大陸ベルシェルスから、このカナン大陸に渡った初めての人物と言われている。かつて、彼は星王イシュタルによってベルシェルス大陸が
支配され、彼の手により大陸のみならず全デミウルゴスや世界が奪われる事を知り、自らの神でもあるイシュタルに反抗する決意を持ち
激しい激戦の末に神を打ち倒した英雄としても伝えられる人物。またその時の戦いにより、彼が持つ星宝は最高位のSランクとして成長を果たし
オグドアス種(それも出来損ない)のデミウルゴスでありながら、まさにプロパテールに匹敵する実力の持ち主。
ただその性格は子供っぽく、知識や教養の面で物足りない部分を時々感じさせるために
現在は三司官の一人アルテミスの直属琉球隊士長として、所属している。

“琉球第八隊士長”カストル=プロディズィー

「はじめまして、私の名前はカストル…プロディズィーです(少し照れながら)」
 ミシュラと同じく、三司官の一人アルテミスの直属琉球隊士の一人。彼女もまたデミウルゴスであるが、その能力は戦闘面では目立った部分は
無いものの、補助や回復、癒しと言う手段では並ぶものがないほどの優秀であり、常にデミウルゴスとの戦いが避けられない北方の
“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”にあって、欠かせない人物として名を上げられる。
またミシュラとは恋人のような関係であり、ちゃっかりファミリーネームまで同じにして名乗っているとか。

“琉球第十二隊士長”シュテン=ドウジ

「へぇ、いい酒だな。気に入ったぜ、少し一緒に飲まないか。談話くらいなら付き合ってやってもいいぜ」
 カナン大陸に存在する鬼族の中で稀に生まれえる伝説の変異種とされるドウジの青年。その力は全ての鬼族の頂点に立ち
敵対勢力である星蝕海やサハラが抱える幹部クラスとも互角の力量を有している。
しかし、その性格は実に気まぐれで気分屋な性格であり、誰かに仕えたりをよしとせず、一人孤高に生きるを良しとする風変わりな人物である。
このため、当初はカナンの陣営にも所属するつもりはなく、日々気ままな生活を続けていたが、カナン陣営からの使者でもある
琉球第五隊士リュウセらの説得により、カナン陣営の一人として戦う事を決意する。
とは言え、気ままな性格に変わりはなく普段は自らがねぐらとしている“アスムィウタキ(黄金の山)”にて酒を飲む日々を続けているが
そこを訪れるサムレーや、自身の配下達にはそれなりの指導や訓練を与え、三司官および摂政(シッシー)の命には従う気配を見せている。
また大変な酒好きとして有名であり、彼の傍らには常に自酒があるという。

イバラ=ドウジ

「は、はじめましてっす。私、イバラ=ドウジって言うっす。一応、これでもドウジ…っす」
 シュテンと同じ“アスムィウタキ(黄金の山)”にいるドウジの少女。身寄りがなく行く場所がなかった自分を拾ったシュテンに恩を感じて
以来、彼のお世話をしつつ、日々を過ごしている少女。彼女もまた伝説の鬼“ドウジ”の一人であり、本人は自覚していないが
その能力や才覚などはシュテンに勝るとも劣らぬほどであり、あと数年、それなりの修行を受ければ、すぐに自分に追いつくだろうと
シュテンからのお墨付きをもらうほどである。ただし、性格的にはそんなことを微塵も感じさせない、少し腰の低い人物であり
語尾に「っす」と妙な敬語を付ける人物。あまり人と変わらず山暮らしの為に、割と他人に惚れやすい性質を持っている。


◆ベルシェルス大陸

 浮遊大陸として存在し、多くの国々や国家、連合が存在し、この世界を縛る理や神と呼ばれる存在はなく
あくまでも人による統治、それによる均衡を保たれる世界と同時に最も不安定で争いが巻き起こる世界。
現在、この大陸の代表的な国々としては英雄の血を引く王国として名高いヴァーレンハイト王国があり
英雄国の裏切り者の末裔として名高いグランコーツ家が各国と共に築かれたグレルサイド連合国。
かつての初代星王が有した技術を最も早期に入手し分析を行い、全ての国々の中で急激な成長、発展を行ったエルザード帝国。
近年、“理”を有する人物すなわち人神を有し、その人物を奉り、この大陸の統一を掲げる小国レシス王国。
いずれもそれぞれが独自の文化、成長を行い、容易に同盟や侵攻を行えない状況であり、現在もそうした各国同士による沈黙の小競り合いが続き
この大陸においてはサハラや星蝕海と言った外敵よりも、内に潜む近隣の内敵こそが最大の敵とも言える。
このベルシェルス大陸を舞台とする物語の際は魅力溢れる各国での物語、他では出来ぬ人と人との純粋なドラマや戦い、戦争や内戦と言った
生々しい戦いから各国家に渦巻く陰謀劇など、果てには他世界への協力など、無限の広がりを持つ物語を展開させてくれるであろう。

ヴァーレンハイト王国
 かつての星の英雄王クフィルの末裔が統治する王国。数百年以上の歴史を誇るこの王国は代々その血を絶やす事無く現在まで
発展を続けている。当初、新世界到来時におけるこの王国の統治は文字通り素晴らしく、まさに大陸統一を成し遂げた偉業と
それを見事に安定させた所業であった。二代目国王ユリウス=ファルト=フォン=レオングレートは古きを改革し、新しきを伸ばす通りに
前政権の欠点を無くし、長所を伸ばし、まさにこの時代、ベルシェルス大陸における黄金期であったと言える。
しかし三代目国王ゼルウス(威光王)以降の統治は先王達の功績に乗っかり、それに依然し、先祖の威光をただ崇め
それを模倣または維持するだけの存在と成り果てた。五代目国王ルーファウス(粛清王)に至ってはかつて初代国王を裏切った家系の
グランコーツ家を王国の重鎮より遠ざけ、あまつさえ一族全て国外への追放を命ずる。これ以降、ヴァーレンハイト王国による大陸統治と支配は
強まり、それは国民を安定させるものではなく、縛り押さえつけるものとなり、遂には第五代国王ルーファウスの時代に民衆による暴動が発動し、
周辺各国にあった国々もそれに乗ずるようにヴァーレンハイト王国との同盟や傘下を拒み、抜け出す始末へといたる。
この時、ルーファウスは暴動の原因となった首謀者を悉く捕らえ、全て見せしめの処刑を行うという冷酷な所業も行っていた。
続く第六代目国王アレクセス(傲慢王)が起こした行動が後にヴァーレンハイト史上最悪の愚考として語り継がれている。
ヴァーレンハイトに対し不満を募らせる各国、連合に対し、あろう事か武力を持っての鎮圧行動を起こし、再びヴァーレンハイトによる大陸統一を
為そうとした。この時、民衆に対する徴兵制を行い、戦争準備に対する強引な税の取立て、物資の簒奪など、武力鎮圧以前に国王アレクセスに対
する不満がヴァーレンハイト国内において波紋を呼び、それがきっかけで更なる同盟破棄やヴァーレンハイトに対する敵対の意志が強まり
その後、発生した戦役でヴァーレンハイトは鎮圧を行うどころか、国力の低下をさらけ出す結果に終わり、それを切欠として
ベルシェルス大陸内の国々は分裂、その多くがヴァーレンハイトを見捨てる形となった。
またこの時の戦役の際、無関係な民衆を巻き込み、大量虐殺が為されたと噂されるが、その事実や証拠はもみ消され、真実は不明である。
後に、この第六代国王アレクセスが起こした戦役と所業を“ヴァーレンハイトの傲慢”として語り継いでいる。※3
その後、第七代国王ルアンヌ(奔走王)は先代が起こした諸行の後始末に奔走し、ヴァーレンハイト内における秩序回復に成功する。
しかし、大陸中に知れ渡ったヴァーレンハイトの傲慢とその悪行を回復し、同盟国を取り戻すまでには行かず、ルアンヌは職務の多忙さに
病没する事となる。その後、第八代国王ミンスク(怠惰王)の統治を抜け、第九代国王エヴァルト(正義王)の統治により、ヴァーレンハイトの信頼は
回復し、各国との同盟や条約の締結にまでこぎつける。だが、その後、星蝕海と言う新たな勢力の発覚や、同盟大陸であるカナン大陸の危機が、
ベルシェルス大陸に大きな波紋を呼び、再び各国に不穏な動きが出ることとなる。
その後、第九代目国王エヴァルトが没すると初代女王ジャンヌが統治を行う。彼女による統治とその兄弟達にあたる
“ヴァーレンハイトの四王子”により、各国に生じた紛争や内戦などは平定され、現在では表面上、平穏と均衡が保たれているように見える。
だが、過去のヴァーレンハイトの所業に対する憎しみや遺恨は未だ晴れておらず、各国の中には現在の新世界到来を利用して
ヴァーレンハイトを滅ぼし、大陸の統一を成し遂げようと考える国も存在している。

ヴァーレンハイトの四王子

(左から第一王子アレクサンドリア、第二王子ロバート、第四王子エドワード、第三王子エドガー)
 ヴァーレンハイトの四王子とは、現在のヴァーレンハイトを支える四人の王子であり、それぞれが歴代の国王を凌駕する器、能力の持ち主として
有名であり、ベルシェルス大陸内で起こった、かつての“ヴァーレンハイトの傲慢”の再来となり兼ねない紛争を僅か半年足らずで鎮圧し、現在の状
況へと持ち直したまさに偉業の仕業である。ある意味、現在のヴァーレンハイトを統治する女王ジャンヌ以上のカリスマ、影響力を有する兄弟達。
しかし、それぞれが全く異なる独自の価値観を有しており、大陸の支配やまして王国の座に対する執念を持ってはおらず、そうした意味でも
女王ジャンヌは彼らに全幅の信頼を置いている。また彼ら四王子には光輝五星それぞれの部隊が与えられており、第一連隊が女王隊であり
第二連(アレクサンドリア)隊、第三連(ロバート)隊、第四連(エドガー)隊、第五連(エドワード)隊と、この国の騎士達は、それぞれ王子達直属の
連隊へと所属される。

光輝五星隊
 ヴァーレンハイトが抱える騎士連隊の総称であり、それぞれ第一から第五まで存在し、光輝第一連隊は女王の親衛隊であり
星の英雄王クフィルの時代から行き続けた国の護り神アルタイルが指揮する連隊にして、光輝五星連隊の統括。
光輝第二連隊が長男アレクサンドリアの隊、光輝第三連隊が次男ロバートの隊、光輝第四連隊が三男エドガーの隊
そして光輝第五連隊が末男エドワードの隊となり、光輝第一連隊を除くそれぞれの光輝五星の長は四王子それぞれが務めている。
ただしエドワードだけはまだ本人が未熟な為、彼の指揮補佐を行っている副官ローレンス=ミュラーが暫定として
光輝第五連隊の騎士統括を行っている。

第一王子“白獅子”アレクサンドリア=ジェード=フォン=エルファス
 かつての初代国王クフィルの武勇、その友でもあった黄金騎士レイルの智謀を携えた、天よりの二物を持つ男。
その性格も懐も深く、情に厚く仁義を通す、その姿勢はまさに歴代の国王と比べても何ら見劣りしないものである。
先のベルシェルス大陸内乱において、最も早期に戦いを終結させた王子としても有名であり、最も時期国王としても期待されている人物。
しかし本人は権力とは全く無縁の性格をしており、国王になるよりも芸術家になりたいと普段から言っている。
また生活面において少々だらしのない部分が多く、昼寝が趣味と断言しており、この為、ロバートからは日々あきれた言葉とお節介交じりの説教を
よくかけられている。しかし、それを差し引いても彼に対する大陸中の評価は高く、純粋な武術に関してもベルシェルス大陸において五本の指に
入るほどの実力の持ち主である。

第二王子“智謀の覇者”ロバート=フォン=エルファス
 現在のヴァーレンハイト、ベルシェルス大陸の均衡を影で保っているとされる稀代の天才王子ロバート。彼による策謀と改革、提示された同盟や
条約などは全てにおいて計算され、彼による智謀によって現在のベルシェルス大陸における平穏が築かれていると言っても過言ではない。
それは政治面、戦争面においても同様であり、彼が戦場で指揮した戦いにおいて有名は“テルセウス城の包囲戦”では味方の犠牲を一人も出すこ
となく、敵を追いやり、降伏に落とし入れ、同盟締結にまでこぎつけている。その先の先を読む所業は歴史上、比類なき天才と称された
“孤高の覇者”ユリウスの生まれ変わりとまで言われ、現在のヴァーレンハイト王国で他国から最も評価されている王子である。
ただし、性格においては多少気難しく扱いづらいとも言われる。事実、兄であるアレクに対しては生活面から辛辣な言葉をかけ、また部下の中にも
自らの命令に背き、忠に反する者に対しては厳粛な罰を与える。基本的に彼もまた兄のアレク同様に信義を通す人物であり、現在のベルシェルス
大陸における分裂や混乱を何とか終止させたいと願っている。

第三王子“血塗れの狂王子”エドガー=フォン=エルファス
 四人のヴァーレンハイト王子の中で最も賛否両論な人物。彼だけはアレクやロバート、エドワードと異なり、戦場や戦争に対して好戦的であり
むしろ進んでその地へ赴き、自ら陣頭に立ち、その戦いを支配すると言う。どのような小規模の争いであろうとも常に陣頭にて敵の血をあび、自らも
血に染まっていくために“血塗れ王子”の異名を取っている。普通ならば、そうした無謀な戦いを繰り返せば、大事に至り、ともすれば戦死するにも
関わらず、彼は一度として致命傷となる傷を負う事無く戦場から必ず帰還を果たしている。
このため、彼が率いる第四騎士連隊もそのような血気盛んな豪傑揃いであり、戦争となった際にはエドガー率いる第四騎士連隊こそが
最も恐るべき敵であると称されている。普段はこのような狂気じみた行いの目立つ人物ではあるが、生活面においては
特に兄弟達の前ではそれとは全く異なる顔を表す。四兄弟の中で最も兄や弟を大事にしている人物でもあり、特に末弟のエドワードに対しては
溺愛していると言っても過言では無いほどの愛情を注いでいる。ある時、風邪で寝込んだエドワードの噂を聞きつけてエドガーは急ぎ
戦場から血塗れの征衣のまま帰還し、彼の傍に張り付き、彼が目覚めるまで、その手をずっと握っていたとされる。

第四王子“希望の星”エドワード=フォン=エルファス
 四人の中で最も年端も幼く、その才覚や能力も上の三兄弟に比べて評価はされていないものの、四兄弟の中で最も可能性や希望に恵まれた
少年であり、事実、アレクやロバートをして「いつかエドワードは自分達をも越える存在となる」と言わしめている。
武術に関してはアレクより直伝の技や鍛錬を教わり、智謀に関しても日々、ロバードの傍でその才覚を磨いている。
現在、その能力も成長途中である事もそうだが、心優しく穏やかな性格をしている為にまだ騎士連隊を率いるには不十分な部分があり
その為、騎士連隊の指揮は彼の参謀を務める彼の“英雄王の影”ミュラーの直系にあたるローレンス=ミュラーが指揮補佐を行っている。
後に彼はエスペランサーセイバーにおける重要な役割を担い、星蝕海を統べる星王レイルとも深い因縁(絆)を築くこととなる。

光輝第一連隊隊長“飛翔する鷹”アルタイル

「政治なんていう難しいもんはワイの分野やない。ワイがする事はただ一つ、この拳で迫りくる敵を薙ぎ倒す事だけや」
 300年以上前の星の英雄王クフィルの時代からヴァーレンハイトを護り続けた護り神にして、ベルシェルスきってのデミウルゴス。
その力は衰えることを知らず、ベルシェルス大陸のみならずカナン大陸、果ては星蝕海にまで勇名をとどろかせている。
エセ関西弁を操る痛快でさっぱりとした人物であり、好き嫌いをハッキリと主張する裏表のない人物。
接近戦闘においては右に出るものはないほどのつわものであり、まさに光輝五星を束ねる第一連隊の隊長として相応しい人物である。
彼がこの光輝五星の第一連隊の隊長としての任についているのは、かつて自分が認めた戦友が二つの選択を迫られ、その彼女が
選べなかった道をあえて自分が継いだと公言している。その為、彼がこの座にあるのはその人物への義理立てであると同時に
いつかその人物ともう一度真っ向から戦うために座り続けているとされている。


グレルサイド連合国
 かつて、ヴァーレンハイトの英雄王として名高いクフィル王を裏切った重鎮セオドル=グランコーツの血筋を引く、グランコーツ家によって、諸国が
連合を組み、成立した国。その成立は今からおよそ120年ほど前、ヴァーレンハイト五代目国王ルーファウス(粛清王)が統治する時代によって
彼の名指しと命により、当時のグランコーツ家はいわれない罪を問われ、一族全員が国の辺境へと追放される。
しかし、当時のグランコーツ家の当主でもあったルベウス=グランコーツは野心と才気に飛んだ人物であり、ヴァーレンハイト王国が近い将来
国を損なうであろう事を予期しており、その際に自らを中心として連合国の設立の地固めをこの時、すでに行っていた。
その後、第六代目国王アレクセス(傲慢王)の時代において、ヴァーレンハイト王国の血迷った行いに各辺境の国々も不満をつのらせ
この時、ルベウスの周辺諸国、地方への呼びかけに賛同した、多くの国々が自らの領地や人民を護る為に、一つの集団として結成し
防衛と自立の為に、連合国を組んだのが始めてである。この時、中心となったグランコーツ家が飛ばされた地方グレルサイドの名を持って
グレルサイド連合国という名を名称した。現在でも、グレルサイド連合国は健在であり、ヴァーレンハイトの女王と四王子の奔走と信頼によって
連合国との和平条約が締結されている。また、グレルサイドの首都アルレスにて、連合国の長を務めるのは現在のグランコーツ家の当主にして
ヴァーレンハイト王国の第一王子アレクサンドリアに恋する少女、ミーファ=グランコーツである。

グレルサイド連合国議長ミーファ=グランコーツ

「分かりました。それでは連合国の護りの為に西防衛線にシュヴァリエ隊の派遣を決定いたします。
…アレク様も加勢に来てくれるかな…」
 グレルサイド連合国の議長を務めるまだ歳若い少女。しかし、その若さに見合わず、政治・哲学・論理学など、数多くの学問において
優秀な成績をあげ、博士号も持ち合わせる稀代の少女。本来なら彼女が議長として就任するのはもう数年先の話であったのだが
先代の議長たる彼女の父親ディヴィット=グランコーツが不慮の事故で亡くなり、その意志を継ごうと彼女が自ら議長として立候補した。
その外見と歳の若さゆえに、彼女を軽んじる者もいるが、その洞察力と深い観察眼には目を見張るものがあり、先代と同じく(あるいはそれ以上)の
連合取締りを行い、現在では彼女を支持する者も数え切れないほどになっている。
議会や職務をこなしている際にはそうした規律を感じさせる雰囲気を漂わせるが、普段の私生活においては割とおっちょこちょいな部分もあり
密かに以前、同名締結の為に自らグレルサイド連合国に赴いた、ヴァーレンハイトの第一王子アレクサンドリア=ジェード=フォン=エルファスに
恋心を抱いている。

シュヴァリエ隊
 グレルサイド連合国に所属する全諸国が己の兵力、兵士を注ぎ築き上げた特殊部隊。彼ら全員がグレルサイド連合国における精鋭部隊にして
エリート部隊。普段は国の護りのために各所属となる諸国の護りについているが、連合国による議会が可決し、防衛線ないし、侵攻作戦が
決まった際には彼らシュヴァリエ隊は真っ先にその命に従い、自らの行うべき事を行う。
現在のところ、このシュヴァリエ隊の存在によってグレルサイド連合国は他国との天秤が成り立っていると言っても過言ではない。


エルザード帝国
 現在、ベルシェルス大陸にある国々の中で、ヴァーレンハイト王国に継ぐ歴史を持つ帝国。その発祥はヴァーレンハイト王国三代目国王ゼルウス
の時代にまで遡り、当時、ゼルウスによる統治は良くも悪くもなく、野心を抱く者にはつけ込みやすい環境であり、当時、ヴァーレンハイトの
重鎮であったローガン=フォン=イングリアムは国王への助言として、星機器の開発および、その材料となる“星種(シード)”の確保となる
ラヴァード帝国の帝城跡にて、採掘場の開発を進言し、それに信頼を置いたゼルウスはローガンにその星種の採取と、採掘場の管理を任せた。
当初は星機器開発の向上や、新たな技術の開発とその材料となる物質の入手が行われ、ヴァーレンハイト王国の発展もより一層磨きがかかり
これに大層喜んだゼルウスはローガンの次なる進言、この採掘場に、それを行う為の都市の開発を進言し、多くの人材を要求した。
すでに自らの王国が更なる繁栄を遂げ、疑うことすらしなくなったゼルウスは家臣達の忠言に耳を傾ける事をせず、自らの支配する領土の遥か遠方
の地にて、首都に比類するほどの都と人員、並びに技術や軍備などを与えるきっかけを作ってしまう。
その後、ローガンは自分達が採掘し得た技術などのほとんどは何もしない本国の首都にいる国王やその側近達に与えるばかりだと、密かに
採掘都市にて渦巻いていた不満に対し、火をつけるような言動を行い、採掘都市にいる者達に対する独立意識を炊きつけ始め、遂には
第三代国王ゼルウスが危篤状態になるのを見計らい、ローガンらによる独立が宣言され、ここにエルザード独立国の始まりが行われた。
五代目国王ルーファウスの時代にはヴァーレンハイトより多くの人々がこの地方に帝国に移り住み、すでにヴァーレンハイトに対抗する為の
希望の勢力としての噂も広がるほどになっていた。その後、第六代目国王アレクセスの時代にて、遂にヴァーレンハイトとこのエルザードとの
戦争が行われたが、その戦いにおいてエルザードが勝利を収め、ヴァーレンハイトは大敗を喫する。この時、エルザード独立国を率いた
ローガンの子孫、エドマンドは戦略と戦術そして政治や内政においても類を見ないほどの才能を見せつけ、アレクセスとの対比を謳われ
“賢帝”と称され、エルザード独立国を正式な国として立ち上げ、初代皇帝の名を冠し、ここにエルザード帝国が正式に誕生した。
これ以後、何度と無くヴァーレンハイトとの戦は起こるものの、星機器の採掘場となっている場所に首都においているエルザード帝国や
人心を失い、有能な人材に欠くヴァーレンハイトに比べ、エルザードは多くの有能な人材と人心を掴んでおり、一時はエルザードこそが大陸の支配
者とも言われていた。現在、ヴァーレンハイトとは互いに不可侵条約を保っているが、それも表面的なものであり、いつまた争いや戦火が起こっても
おかしくは無い状態である。また現在、エルザード帝国の皇帝として即位しているヨシュアは歴代皇帝の中でも野心が強い人物とされ
ここ最近のエルザード帝国の発展、律法機関トーラの設立と、人工的な星宝技術の開発と様々な噂が流れ出し、
その裏には星蝕海との繋がりがあるのでは危険視されている。

“漆黒の皇帝”ヨシュア=フォン=レイノルズ

「まずはこの大陸に蔓延する疫病――“黙示録”を狩り取る」
 エルザード帝国の第五代皇帝にして現皇帝。漆黒の髪と衣装を身に纏いまさに文字通りの漆黒の皇帝に相応しい美男の皇帝。
彼には常に黒い影の噂が付きまとい、前皇帝のレイモンドが謎の毒物によって倒れ、彼が即位するまでの日数が僅か数日であり
しかも、その前皇帝レイモンドの周りに従っていた重臣や死に立ち会った者達のことごとくが変死、または行方不明となり
ヨシュアとの関係が噂されるも本人と繋がるような証拠や物証は一切出ず、ヨシュアは堂々とした、いでたちで皇帝職を冠したという。
また彼が即位してより、エルザード帝国の技術はその前年度よりも遥かに急上昇し、それまで不可能とされた人工的な星宝の開発に成功し、
配下の兵士の体に星機器を埋め込む事で、常人を遥かに凌ぐ強化兵を作り上げ、更に謎の構成員による律法機関トーラの設立まで行う。
彼が即位してから僅か数年足らずに行われた、これらの進歩について黒い噂、すなわち背後に星蝕海との繋がりがあるのではと噂されている。
彼自身、そうした噂を裏付けるかのような陰があり、また野心の大きい人物であり、ヴァーレンハイトを打倒した暁には
自らがこのベルシェルス大陸の統一王になろうとも豪語している節がある。一見、これらの噂やその人格から恐ろしい人物とされているが
自らが認めた人物に対しては厚い処遇とそれに相応しい職を与えている。
また現在、彼の目的はベルシェルス大陸に蔓延している疫病“黙示録”を狩り取る事であり、それを果たすためには
如何なる犠牲をも払う覚悟を持っている。

律法機関“トーラ”
 ヨシュアが自ら築き上げた自国を護る為に築き上げた特殊機関にして執行騎士団。
彼ら全員、皇帝であるヨシュアより特殊な訓練および、特殊な改良を施され、その能力は常人の遥か上を行っている。
彼ら律法機関“トーラ”の兵に施される処置については不可解な噂話から非人道的な話まで絶える事はない。
肉体を強化する為にあえて人体に星機器を埋め込み、その身を鋼の体にするなど、星蝕の欠片を人体に浴びせることで
デミウルゴス化の一歩手前までその人物の肉体能力を進化させるなど、果ては星宝の劣化品、レプリカをその身に融合させるなど
どれも荒唐無稽な手段であり、人道に反するようなものばかりである。しかし、彼らの多くは自ら望んで肉体の強化をはかり
結果としてその能力と優秀さはエルザード帝国のみならず近隣諸国、ヴァーレンハイトにすら轟くほどである。
また彼ら律法機関“トーラ”には全所属メンバーを束ねる七人の統括者“虹の騎士(ラルカンシエル)”と呼ばれる存在があるとされている。

“虹の騎士(ラルカンシエル)”橙(アランチャ)の騎士ラケル=フォン=ベルクトル

「君に備わった美しさは天が与えたものだ。恥じる必要はなく、むしろ堂々と君の美貌をさらすといいよ」
 律法機関トーラに存在する七つの部隊の内、アランチャ(橙)隊を統括する虹の騎士。
美しい外見の女性であり、その物腰も口調も全てにおいて品格を感じさせる高潔な人物。
暗躍を主とするトーラにおいて、彼女はそうした他の部隊を隠すためにあえて表に存在する光のような人物であり
公共の場においても彼女が任務をこなし、皇帝ヨシュアの傍に立つのも珍しくはない。
普段は常に落ち着き払ったマイペースな人物であり、悪く言うとどこまでも平坦な人物。また外見はその者に備わった一種の才能の一つであり
それを最大限有効活用することは自身の才能を伸ばす意味もあると常より言い、このため、男女問わず彼女が美しいと感じた人物に
それらしい言葉をかけるのだが、たまに相手から誤解されることがあり、本人はそれには気づかない厄介な性格の持ち主である。

“赤の牡羊(ロッソ・アリエス)”ダビデ

“虹の騎士(ラルカンシエル)”のリーダー。【人宝(サイン)】の代償により性的能力を失い、不能である。
常に冷静沈着であり、実力、智謀、カリスマ全てにおいて抜きん出いている逸材である。

“緑の牡牛(ヴェルデ・タウラス)”アロン

“虹の騎士(ラルカンシエル)”の一人。【人宝(サイン)】の代償により聴覚を失い、普段は喋ることなく常に寡黙な巨漢。

“黄の乙女(ジョーヌ・バルゴ)”ディナ

“虹の騎士(ラルカンシエル)”の一人。【人宝(サイン)】の代償により痛覚を失っている。自傷癖のある若干精神を病んでいる少女。


レシス王国
 近年、ある“理”を有する人物を得た事により、その人物を中心として国を立ち上げ、このベルシェルス大陸も他の世界と同様に
“理”の下に支配統治されるべきだと主張する王国。元々、このレシス王国自体がヴァーレンハイトの一地方に過ぎなかったのだが
先にも示した通り、“理”を有する人物を得たことで独立宣言を果たし、先の口上を持って大陸中に対して吹聴している。
少し前までであれば、そのような口上に耳を傾ける者はそう多くはなかったが、星蝕海とサハラ大陸によるベルシェルス大陸への危機、
更には新たなる世界、東源郷と呼ばれる世界は三人の神々によって統治され、そこに存在する五国はそれぞれ人神たる帝の手により
統治されていると聞き、このベルシェルス大陸もそうした今までのような理のない世界から、あらたな段階へ進み“理”を有する存在を
配すべきだと考えるようになっている。事実、このレシス王国に賛同するように各地方の領主や諸侯が集まり、
その規模や人工も日々増加しているという。今の段階では、このレシス王国に対する他国への動きは見られないが、この王国が動けば、
それに引きずられるようにヴァーレンハイト、エルザード、グレルサイドも動き、ベルシェルス大陸における均衡が一気に崩れる可能性がある為に
最も要注意すべき国家として認識されている。

“預言者”ヨハネス

理:黙示録  階位:第十二階位(現状)
「我が予言に従い、穢れし汝ら民を浄化し、我が目指す楽園、新天新地へと導こう」
 レシス王国が奉り擁護する“理”を有する少年。その外見はわずか12,3程だが、対峙するだけで他者を圧倒するだけの能力と魂の威圧を持ち
全てを達観したかのような素振りと眼差しは、まさにその年齢に似つかわしくなく、見るものが見れば、一目で人を超えた存在であると
理解できる。彼自身はレシス王国を立ち上げた重臣達に言われるがまま玉座へと座し、その威光を民達へ与え、己の“理”より生まれた言葉
“予言”と呼ばれるものを臣民や多くの民達へと伝えている。その一方で内政のほとんどは重臣達に任せている。※4
彼が有する理が如何なるものであるのかは現時点では不明だが、ベルシェルス大陸内において目立った変化がないところ
あくまでも個人規模の理、即ち第九階位以下の理ではないかと推察される。

黙示録の理
 預言者ヨハネスが有する理(ロゴス)。その特徴は数ある理の中で最も稀有な特徴を有するものであり、彼が持つ理とは信仰によって
成長していく理である。過去、宗教と呼ばれる組織や概念が布教者、あるいはただ一人の預言者などから広がったように
始めは彼の理も、予言と言う形で己の規模にしか発動せず、それを言葉として周りへと広げる手段しか持ち得ない。
しかしながら、彼の理から生じたこの予言を広げ、彼が言う予言や黙示録がその通り実現していく度に彼の理は成長を行い
同時に多くの人々の深層意識へと入り込み、その虜と変え次々に彼の信者へと変えていく。
彼が放つ黙示録という予言が実現し、それに併せて彼の信者が増えるたびに彼の理としての力は強まり、やがて個人規模から大陸規模
最後には世界規模(第四階位以上)の理へと進化を果たす。
このため、現在の彼の理は彼が行き着くべき“本来の理”へと向かう為のかりそめの理とも言え、同時に彼の真なる理が完成した時
それは即ち、全ての世界の中で唯一、理によって支配されていないベルシェルス大陸の終焉であり、彼が予言によって謳っている
黙示録の後に訪れる穢れ無き住民のみが暮らせる新世界“新天新地”の完成である。

ヨハネス教団
 近年、ベルシェルス大陸各地で起きている異変や予兆などに対して、レシス王国が擁するヨハネスより予言された世界の終末“黙示録”に
記された事実であり、その恐怖心と終末よりの救済とされるヨハネスへの傘下を求め、彼の下に集った信者達より成り立つ新生教団。
その多くは各地の難民や民などであるが、中にはヨハネスこそが自分達を導く救世主、次世代の神であると信じて疑わぬ狂信者などが
多数存在し、そうした者達が自ら武力を手に他国への服従を求め、ヨハネスによる新生世界統一を掲げ出した。
今、現在レシス王国においてこのヨハネス教団こそが最大の勢力にして他国を脅かすほどの勢力ともなっている。

テンプルナイツ
 ヨハネス教団に所属する者達の中で自分達の救世主たるヨハネスを護り、また彼が宣言する予言の完遂“新天新地”(世界終末の後の訪れる
至高の楽園)を実現させる為に生まれた教団内における武力勢力。
いわゆる神聖騎士団を自称する者達であるが、彼らの所業はエルザード帝国に存在する機関トーラ以上に非道なものであり
自分達に従わぬ者、ヨハネスを崇めず、その予言を受け入れない者、そして服従を拒む者達を一切虐殺するというものである。
現在、ベルシェルス大陸内において最も混沌を呼び寄せ、大規模な戦争を呼び込もうとしている危険な騎士団であり
その目的の全ては彼らが信じる神ヨハネスより下された予言“黙示録”の命のまま、動き続けている。


◆東源郷

 遥か東の果てに存在する世界に収まるはずのない広大な無限の世界。それが三人の神々によって統治される異界、東源郷。
この東源郷の地には世界創造、破壊を成しえる理を有する“開闢”の第一階位を持つ盤古神、“太極”の第二階位を持つソルムンデハルマング、
“陰陽”の第三階位を持つ伏羲(フッキ)によって生み出され支えられており、彼らの実力はカナン、ベルシェルス、サハラ、星蝕海と
この東源郷を除く全ての世界を合わせてもなお、遥か先の領域にあり、その為、彼ら自体にも他の世界どころか、己が統治する世界にすら
ほとんど干渉を行わない。※5
しかし近年、カナン大陸からやってきた人物との交渉とやり取りによって、彼ら東源郷の神々はカナン、そしてベルシェルス大陸との繋がりを持ち
それまで閉鎖していた東源郷の世界を外との接触に対し、正式に許可を出した。だが、それはあくまでも互いに干渉し合うというものであり
この東源郷を統べる神々が直接的な手助けを外の世界に対し行う事はなく、またカナン大陸もこの東源郷から技術や物資や人材をを
受け取るだけでなく、彼らの世界にて生じている問題解決の為に協力を惜しまないと誓い、現在の関係へと繋がっている。
また、この世界には星王陣営が有する星宝(アステリア)に匹敵する程の技術として宝具(パオペエ)と呼ばれるものがあり、これもまた東源郷を
統治する神々によって生み出された理の一部とされている。
この東源郷を舞台とする物語の際には五つの国のいずれかを舞台とし、五国それぞれに渡る戦いや歴史など、また人神たる帝。
地に蔓延る妖魔や、人神に比類する強さを持つ邪仙など、まだ見ぬ宝具探索や土地冒険など様々な魅力溢れる物語が待ち受け
三つの舞台の中でも最も可能性や、広大さ、そして遥かに届かぬ領域の物語を見せてくれるだろう。

“開闢”の盤古神
理:開闢  階位:第一階位
 十二階位ある理の階位の中で頂点に位置する理を有する至高の神。彼こそが東源郷と呼ばれる前代未聞の大世界を生み出し
創造し、開闢を起こした大いなる神である。彼が持つ理の力とは即ち、開闢。それはあらゆる現象、存在、世界に至るまで全てに始まりを与え
生み出す事にある。逆に言えば彼と言う存在さえいれば大陸や海はおろか、大世界を共用できるほどの世界の面積をあらたに生み出す事も
可能であり、現在の新世界において無数の世界が存在共存しているにも関わらず、それら全てが世界に収まっているのは
彼の開闢によって新世界たるエル=ファルスがそれを受け入れるほどの大世界へと変換された為である。
つまりは彼こそが全ての世界を受け入れている源であり、彼と言う存在が消えれば、現在のカナン、星蝕海、ベルシェルス、東源郷といった世界は
世界に収まることが出来ず、いずれか一つの世界を残し後は滅び去る運命となるであろう。
盤古神たる彼自身の性格は極めて完成された神としての性格と理念を有しており、あくまでもその世界を統べるも破壊するも
その世界を生み出した神(人神)の意志に任せるものであり、それに他者である自分が関わるべきではないと考え、カナン大陸との同盟を締結した
後も、星蝕海がカナンへと直接進行できないほどにその間にある距離の海を、遥かに断絶させるほどの開闢(創造)を起こしたが、以後は
双方に対して直接援護するような動きは一切行っていない。
眷属の特徴
 彼が持つ眷族とは厳密には彼の世界に存在する全ての民や人間、人神ですら、全て眷属と言える。
事実として今の新世界の広大さを生み出したのは彼の理による影響であり、その世界において全ての世界や理の眷属達が暮らし生きている以上
彼らは皆、それぞれ自分達の世界を生み出した理の眷族であると同時に、その大元を生み出したこの盤古神の眷属である。
ゆえに彼による眷属の特徴とは実に単純極まるものであり、それが共存と存在の自由である。
本来、東源郷のみだけならともかく、カナン、サハラ、ベルシェルス、星蝕海と言ったいずれも一つの世界に一つのみの大きさの世界であるにも
関わらず共に存在し、互い同士の共存や侵攻が行えるのも、この盤古神が起こした開闢の眷族のおかげである。
この為、新世界において彼ら多種多様な存在や世界が同時に存在できるのも、この“開闢”の理による影響、眷属である証である。

“太極”のソルムンデハルマング
理:太極  階位:第二階位
 両目を盲目で患ってる美しい可憐な女性。その正体こそが東源郷を統べる三神の一人、“太極”の理を有する女神ソルムンデハルマングである。
彼女が有する理“太極”とは陰陽の上位理であり、あらゆる万物の起源、根源をあらわす理であり“理を表す理”と言える。
彼女の太極が有する力とは即ち、その人物の根源、根幹に根付いた一つの感情、一つの概念、即ち、理に至れる感情、概念を
引き出すものである。この為、東源郷において、彼女の理の影響によって人神へと至る者が存在し、だからこそ東源郷の五国を統べる
五帝と呼ばれる帝達が皆、例外なく人神であるのは、このソルムによって魂の根源にある理へと至る力を見出され、引き出された為である。
彼女自身、どことなく雲のようにつかみ所の無い人物であり、相手をからかいながらもその人物が求める最も正しい道へと引き込むのも
彼女自身の持つ“太極”の理によって、その人物の魂の芯、根源が見えているためであろう。
眷属の特徴
 彼女の紹介にも書かれていたように彼女の持つ“理”とは他者の起源、根源たる理を引き出すことであり、つまりは彼女の眷属とは
彼女によってその者が持つ理を引き出された種族の事を指す。…とは言え、彼女の太極の理が全ての人間に対して等しく働くわけではなく
理へと至る概念や感情を潜在的に有していた人物だけであり、またその人物の魂の層がエンテレケイア、またはテロス層でなければ
人神として覚醒する事は不可能であり、通常、広い意味での彼女の眷属として当てはまる者とは、他の世界の住人に比べて
己の根源、起源となるものを見出すことに長け、いわゆる長所を伸ばすのに特化しているという点である。
その証として仙人(ディアティ)と呼ばれる第三の“仙眼”を持つ種族が生まれ、彼らが他の種族よりも深い知識を有し、宝具なる他の世界では
見られない武具の創生を行えるのもその為であり、夜叉と呼ばれる潜在的に優秀な肉体能力を持った者が生まれるのもやはり
彼女の太極たる理の影響にして眷族たる者の証である。

“陰陽”の伏羲(フッキ)
理:陰陽  階位:第三階位
 東源郷において最も欠かせない概念である“陰陽”、“五行思想”と呼ばれる属性を生み出した陰陽、五行の神。
また彼が生み出した陰陽の五行術、神言術と呼ばれるものが東源郷全土に広く伝わっており、それだけではなく本来は外の世界であるはずの
カナンやベルシェルスにもその理の影響を与え、彼にすら陰陽の五行術と呼ばれる概念、術技を与えた祖たる神。
伏羲(フッキ)と呼ばれる彼を現す言葉は、まさに陰陽と呼ばれる概念が相応しく、彼のみは東源郷を統べる三神の中で最も人間臭く
人の善悪、愛憎、好悪、そう言った二律背反の感情を抱え、備えている最も人に近い神である。
この為、本来は不干渉を誓っていたはずの外の世界に対する好奇心や他の世界と交わり、知りたいと言う欲求に勝てず
彼は東源郷を統べる三神としての地位を一時、盤古神に預け、自らの分け身(一部)を残し、外の世界へ干渉を行ったほどである。
この時の伏羲の行動によってそれまで不干渉を保ち、決して外の世界にその姿を現さなかった東源郷が、外の世界へ姿を見せたのも
伏羲のおかげであり、カナンが東源郷との同盟成立により現在までその世界を保っていられたのも、全てはこの伏羲のおかげとも言える。
現在、彼は未だにその姿を東源郷を統べる神としての座には戻っておらず、行方を眩ましたままである。
しかし一説にはすでに彼は東源郷の世界に戻っており、現在、伏魔・魔星の勢力によって絶体絶命の己が世界と住人を救うべく
自らが直接干渉をしないギリギリの位置で手助けを行っているとされている。
眷属の特徴
 彼の陰陽の理による眷属の特徴とは極めて分かりやすい特徴であり、それが即ち、陰陽の概念に存在する“五行の属性”いずれを
有している事である。それは人であったり、国であったり、道具であったり全てにおいて採用される部分であり
現在、五国における相生や相克といった概念を与えた元凶であり、彼によって陰陽の五国それぞれにほころびが生じたとも言えなくもない。
しかし、本来の五行思想における循環とは他に類を見ないほどに整然とした完全な機能を有した概念であり、五国それぞれが各々の
属性となるべき象徴を抱いている限りは他の世界では見られるほどの調和された安定が約束されていた。


三神五帝
 三神五帝とは、東源郷を支配する三人の神々と、その世界に存在する五つの大国を統治する“帝(みかど)”達に与えられた総称である。
現在、三神五帝の内、三神の中の一人“伏羲(フッキ)”が外の世界に旅立っており消息を眩ませ、その座が一時空白となっており
五帝の内、“木”を統べる燕(えん)の国の帝が討ち取られ滅びており、“火”を統べる鳳(ほう)の国の帝は東源郷が生まれており、一度として
正式に埋まったことがない為に、事実上、現在の東源郷では五帝の内、三帝のみが存在している状態である。
この三神五帝の内、“火”を統べる帝が空白の理由は、実は遥か遠方の世界カナン大陸の発祥に原因がある。
かつて、カナン大陸を生み出し、存続させる為にその命と“理”を用いた人神ガディム。実は彼こそがこの東源郷の“火”を統べるべき帝であり
その彼がカナン大陸にて自らの理を行使した結果、命を落とし、その結果、この三神五帝の内の“火”を司る一角が永遠の空白となったのである。
ガディムがそうした道を取った理由には、彼を東源郷の神々から奪い去ったスフィルという人神の原因もあるが、なによりもガディム自身
自らの理と役割が、カナン大陸を護り生み出す為にあると信じ行動した結果であり、それに対しは東源郷の神々達もある種の納得を示している。

帝と六官
 東源郷に存在する五つの国にはそこを統べる帝が存在し、その下に帝を補佐し、政治や内政などを支える六人の最高官“六官”が存在する。
それぞれ国政を統括する“天官”、教育や人事を司る“地官”、礼法、祭祀などを取り仕切る“春官”、軍事を行う“夏官”、
法廷や刑罰を任される“秋官”、そして建築業や土地管理を任された“冬官”が存在する。
それぞれ、名門の家柄で素質素養、更には教養などあらゆる面で認められた者のみがその任に就くことが許される。
しかし、中にはただ血筋や家柄だけで六官に就く者や、逆に身分が低くとも才能豊かで認められた者がその任に就く事もあり、そうした事例は
東源郷の五国それぞれに伝わる歴史にて記されている。


妖魔と邪仙、妖狐、羅刹
 妖魔とはこの世界に蔓延る魔物の総称であり、彼らは陰陽の概念“陰”の力に偏りそれゆえに変質した生物とされ、陽の力を宿す人々や生命を
見境なく襲うという。また、この妖魔とは異なるものの、邪仙と呼ばれる恐るべき種族がこの東源郷には存在する。
それは本来、この東源郷の神に仕える仙人や夜叉であるのだが、彼らの最終目的の一つが悟りに至る事、すなわち“理”の領域へ至る事である。
その為の手段として五行思想を体現した神言術や理に至る術とされる太極術などが存在し、彼ら邪仙や妖狐や羅刹とは
そうした理に至る道中にて道過ちて、力におぼれ、力(理)に飲み込まれた存在である。
無論、そうなるに至るためにはそれ相応の実力や修練が必要であり、彼ら邪仙達とはいわゆる理に至れなかった外法の者であり、
その考えや思想は狂気の類に近いが、あっと一歩で理の領域に踏み込めたかもしれない実力はまぎれもなく折り紙つきであり、
デミウルゴスのオグドアス、中にはプロパテールクラスに匹敵する者も多くいる。※6
補足として、そうした邪に堕ちた仙人が邪仙、九尾が妖狐、夜叉が羅刹と呼ばれている。有名な邪仙などでは燕の国にて初めて、その存在が
確認された“始まりの妖仙”ラウ・フェイランや、鳳の国を混沌と恐怖支配に陥れた万老棟(ばんろうとう)などが挙げられる。


“火”の統治国・鳳(ほう)
 五つの大国の内、建国以来“帝”となる人物が不在の国家。この為、帝に代わり代々六官と呼ばれる官職達が政治や統治を行い続けるが
後に鳳の救世主・王仁十(おうじんと)により、“正卿”と呼ばれる帝に比類する職が成立され、これ以後、鳳は他国に劣らぬ統治を見せる事となる。
また、この鳳には“螢炎”と呼ばれる特殊な炎を生み出す術が伝わっており、それはさながら蛍の光のような色の炎から名づけられている。
この炎はあらゆる金属や材質を燃やし溶かすほどの熱量を持ち、東源郷に伝わる“火”の神言術でも最高位の炎と称されている。
しかしながら、その為に持続時間となるものが僅かであり、数分と持たず消えてしまう性質を持つ。
これを長時間、燃焼させる唯一の方法が“燕”にて国の象徴として無数に存在する“鱗樹”による発火性である。
鱗樹による木材に対し螢炎を放てば、それは最低でも数時間以上燃え続ける事が可能であり※7
金属の加工や、城の守りとして燃やす炎や敵の命を奪う武器としても適格となる。
しかし、近年、その“螢炎”を発生させる術や行える人物がいなくなり、“正卿”の権威も衰えはじめ、他の四国に比べ明らかに勢いが弱まり
徐々に弱体化の一手を辿り、遂には金の統治国“明”による“燕”の崩壊によって、鳳の国も少なからず、その影響を受けている。

“初代正卿”王仁十(おうじんと)
 鳳の建国より数百年、“帝”不在により他国との均衡が取れず、国の停滞が行われていた時代に新たな官職“正卿”を築き上げた人物。
彼は元々、帝と支える六官“夏官”の息子として生まれ、すでに廃頽と堕落に溺れつつある祖国にある種の失望感を感じながら生きてきた。
そうしたある時、万老棟(ばんろうとう)が鳳の国政を牛耳、六官を葬り、それにより仁十の父親も亡くなり、彼は命からがら臣下達の捨て身の
献身で難を逃れ、都から落ち延びる事となる。その後、鳳の都が万老棟によって日々、悪化していくのを見ていき、いつの日か彼を打倒し、
鳳の再興を自らの両親と家臣達の墓前にて誓う。その後、年月を積み重ね、自らを慕う民と兵達を集い、万老棟に対する戦を仕掛けるも
その強大な力の前に一矢を報いることも出来ず敗れる。この時、落ち延びた鳳の辺境・明邑(みんおう)にて彼は狄玄周(てきげんしゅう)との
運命的な出会いを果たす。当初、仁十は狄玄周の奔放な性格に戸惑い、苦手意識を持っていたが、彼が持つ計略の高さ、知性の豊富さに
いたく感服し、彼の教授と助力を得て、再び“万老棟”討伐に赴く。その後、狄玄周と共に万老棟討伐を果たした仁十は荒れ果てた首都・南殷を
復興させ鳳国の再建を果たした。以後、六官による専横を防止するために“正卿”と言う帝に次ぐ官職を設立し、自ら第一代正卿となり
鳳国の歴史にその名を刻むこととなる。しかしこの後、私生活においては災難が続き彼が妻として娶った人物には子が生まれる事はなく※8
生涯を友として誓った玄周が万老棟との戦いによって、受けた傷により他界する。だが、玄周より託された赤子は、亡き友との
唯一の繋がりであり、その後、亡き友の子を自らの子として育て、その子によって“正卿”の職も引き継がれる事となる。

“友誼の軍略家”狄玄周(てきげんしゅう)
 鳳の辺境・明邑(みんおう)の生まれであり、鳳史上稀に見ぬ天才軍略家として名高い人物。
貧しい生活に生まれ、そうした中でも幸せに暮らしていた彼はある時、都から傷だらけの状態でやってきた、王仁十を介抱し、後の人生が
大きく変化したという。彼の鳳の首都・南殷(なんいん)の奪還と現在の鳳を腐敗させている万老棟打倒に同意した玄周は彼に協力し
万老棟打倒を志すこととなる。この時、彼が仁十に進言した軍略と言うのが“火”を統べる鳳に取って相剋の関係に値する“水”を統べる
櫂の助力を得るというものであった。しかし、櫂の協力を仰ぐ事により、そのまま鳳の国が櫂に取り込まれる事を危惧した仁十に対し
玄周は“相生の礼”を持って、櫂に対する恩を返し、侵略を押し留める策を進言する。※9
これにより、櫂の“帝”女禍の援軍を得た玄周と仁十は万老棟が繰り出す、兵の軍隊をその都度、撃退して遂には仁十と共に万老棟を討ち取り
鳳国の救い主となる。また彼はその後、六官の一つ天官の職に就き、美しい妻を得て子に恵まれるものの、妻は子を産むと同時に亡くなり
自らも万老棟との傷が悪化し亡くなるも、死ぬ直前、赤子が生まれない友王仁十とその妻に、自らの子を彼らの子として育てるように託し
その生き様は最後まで友である王仁十に尽くしたまさに忠義と友誼に厚い人物として歴史に名を残している。

“簒奪の支配者”万老棟(ばんろうとう)
 仙人の中でも人神に比類する能力と不老の術を身につけた武勇に長けた仙人と言われ、腕の一薙ぎで山を丸ごと消し飛ばし
零式宝具(パオペエ)“鳳凰扇”を自ら創り上げ、それを武器とし数多の命を奪い去ったとされる。※10
“帝”不在により、鳳の国政管理は六官と呼ばれる官職たちによって統治される事となり、長い年月を経ることにより、六官それぞれの統治や
執政は退廃の一手を辿り、遂には自身達が帝のような振る舞いを起こすこととなり、鳳各地で不平不満を巻き起こすこととなる。
この民衆の不満や暴動に対し、六官が対処した行いが後に大きな過ちとして刻まれる“万老棟の招き”である。
鳳の一角、陽州にて台頭を表した仙人(後に邪仙と呼ばれる)“万老棟”を呼び寄せ、暴動を起こす民衆達に対し、その圧倒的武力と能力を持って
鎮圧を任せたという。万老棟による暴動の鎮圧は非道なまでに見事であり、六官に逆らうも者共の悉くを葬り、処刑を一任したという。
その後、僅かな年月で将軍官職最高位の大将軍の地位を授けられ、六官に比類する扱いを受けることとなる。だが、これが後に災いし、
万老棟の武勇にあぐらをかく六官よりも万老棟に対する敬意と畏怖が集まり、遂には万老棟による権力の奪取が行われ、六官の悉くが
万老棟によって始末され、事実上、万老棟による鳳国の簒奪が行われ、首都・南殷(なんいん)が陥落し、鳳国内おいてて未曾有の戦と混乱が
巻き起こる事となる。万老棟の統治により南殷は勿論、鳳各地の都も過酷な圧制と徴税により、多くの人民が失われたという。
この後、万老棟による統治は十数年以上に渡り続いたが、後に王仁十、狄玄周らによる討伐戦によって、その命を落とし、鳳は奸賊の手より
解放される事となる。また、彼が扱っていた零式宝具(パオペエ)“鳳凰扇”は鳳の栄光の証として、代々宝物庫にて保管封印されていると言う。


“木”の統治国・燕(えん)
 近年、“金”によって統治される大国・明によって打ち滅ぼされた大国。その為、その領土や民、臣下達など、悉くが明に取り込まれ
その配下となっている。だが元々、この燕は五つの国の中で最も安定し、そこを統べる帝の統治も例を見ないほどの所業であり、この燕が
滅び去ったと言う事実は東源郷全土において、比類ない衝撃を与えることとなった。
この燕には“鱗樹”と呼ばれる国の象徴とされる樹が無数に存在している。それはまるで鱗のような表面を持つ樹であり、この樹より取れる
木材が東源郷に存在する全ての建物の木材として使用されるほど、頑丈で丈夫な木材となる。また“鱗樹”によって作られた木材一つ一つに
魂が宿ると言われるほどであり、どんなに長い年月が建っても朽ちる事がないという。しかし、この“鱗樹”を育てるには通常の水や肥料だけでは
育たず、これを立派に成長させる為には、櫂の地下資源と言われる特殊な水“玄水”による恵みが不可欠であり、櫂から送られる
“鱗樹”用に生産された玄水を与える事により“鱗樹”は全ての国に行き渡る木材へ成長し、また燕を護る自然の防壁としての役割にもなっていく。
だが、現在“明”の支配下にあって“鱗樹”の生産が以前のように行われるかどうかは謎である。

“木帝”黎相歪(レイ=ショウワイ)
 木を統べる燕の帝にして第十一階位の理“堅実”を持つ人神レイ。彼と言う人物を語るなら生真面目で堅物な青年。
“堅実”と言う理を統べるように常に実直で筋を通す律儀な人物であり、人によって得手、苦手がはっきりと分かれる人物。
しかし、彼による燕国の統治は五国随一と言われる程であり、他国が歴史の中でたびたび戦や内乱、国力の低下や衰退、果ては飢饉や
暴動と言った現象が少なからず起きているのに対し、この燕の国は建国以来、そのような大きな事象や事件などは、ほぼ起きておらず
それも全て“堅実”のレイによる統治の賜物である。常に安定した国力を保ち、人民の供給も常に一定を保ち、他国からも信頼を置かれるほどの
名帝と称されている。ただ全く事件がなかったわけではなく、彼のその潔癖な完全とも言える統治に不満を持った諸侯、配下による内乱も
勃発している。それがかつて、隣国“絽”との領土問題に対し諍いを起こし辺境の諸侯達であり、それが原因で辺境の地にて戦が生じ
それを調停するべく、自ら単身、城にやって来た絽の第七代帝・紅武帝との話し合いの際に起こった燕の六官の一人梁宋炎による内乱が
それである。この反乱の際に帝・レイと絽の帝・紅武帝も危ういところまで追い込まれるが、何とかその危機を乗り越え、反乱の首謀者となった
各諸侯、梁宋炎を捕らえ、自ら制裁を与えた後、絽への謝罪を行っている。これ以後、絽国との関係を更に深めたレイはその後、絽国の
十代帝・陽華帝と心通じ合う者があり、彼女との間に子を実らせ、その子は絽国の第十一代帝として即位する。
絽との繋がり深く、燕だけではなく絽の民にすら愛された帝であったが、近年、明による侵略戦争が行われ、その戦いに自ら陣頭指揮と取り
抗戦するも力及ばず、明国の帝の手により討ち取られ、燕開闢以来、一度として崩れたことのない安定が崩れ去り、その支配は明の国と
そこを統べる帝の手に委ねられる事となる。

武侠隊
 燕の国が抱える剣士の部隊であり、その名は燕のみならず五国全てにおいて知れわたるほどの存在である。
かつて、この燕に“始まりの妖仙”と呼ばれるラウ・フェイランが現れ、その力は帝であったレイを上回るほどであり、燕国において未曾有の混乱を
招いた際、この国には他国のように主だった部隊や将軍職と言ったものが正確には確立されていなかった。
この為、妖仙ラウに対抗する勢力が集えず、そこで帝は官職や民衆、それから人種などを問わず、義と力のある者を募らせ、彼らによる義勇隊を
結成させ、それが後に“武侠隊”の始まりであった。この時、部隊の指揮を任されたのが初代武侠大将ウォン=セウクであり
彼と彼に纏められた義勇隊は帝の指示の下、遂に妖仙ラウを討ち取ることに成功する。この後、この時の義勇隊のメンバーがそのまま“武侠隊”の
一員として認められ、初代武侠大将ウォン=セウクと“武侠隊”は、その名を燕内部だけでなく、東源郷全土にまで知らしめ
以後、武侠隊は大将となる者を筆頭に構成され、燕内にて起こった問題を迅速に解決し、外からの侵略に対しても鉄壁の防御を行う
名実共に燕における最強の剣士部隊として知られる事となる。

“初代武侠大将”ウォン=セウク
 燕における伝説的人物であり、始まりの妖仙と呼ばれたラウ・フェイランをその手で討ち取った剣士。
彼自体は家柄も血筋も決してよくはないただの匹夫の人間であったが、生まれつき剣のみを握り締め、それにのみ頼る生き方をしていた為
彼が持つ剣士としての腕は当時、燕内部だけでなく、東源郷全土においても比類する者がなかったほどと称されている。
事実、彼が扱ってたものは生まれつき持っていたとされる名も無き剣だけであり、彼は宝具(パオペエ)や神言術や太極術などと言った
特殊な武器や能力などを生涯で一切使用せず、己の腕と剣だけで頂上の敵たる妖仙を討ち取ったとされる。この為、彼は“武剣”と称される。
また、初代“武侠隊”の大将として彼は帝と、己の部下達の為に剣を振るい、その生涯を平凡に終えたという。

“第六代武侠大将”チュン=ソンリョン
 歴代の武侠隊大将の中で唯一の女性大将として名が知られる人物。このチュン=ソンリョンと呼ばれる女性は武芸のみならず、作法や教養
政治技術など、武術以外の面も秀でており、歴代武侠隊の中で六官職の一つ“地官”を兼任したと言う異例の人物でもある。
また彼女が武侠隊大将の地位についていたこの時代、六官の一つ天官職に就いていた梁宋炎による内乱が勃発した時期と同じであり
彼女は自らの帝であるレイと他国“絽”の七代帝である紅武帝を護り、反乱軍と戦ったと言う雄姿を歴史に刻んでいる。
またこの時、彼女は絽の帝でもある紅武帝と共闘し、彼に命を救われたと言う場面が存在し、それが切欠で他国の帝であるこの紅武帝に
恋心を抱くこととなる。しかし、他の帝と自分ではその恋が実るわけも無く、彼女が抱いた恋心はずっと己の心の中にだけしまっており
結局、この二人が結ばれることも無く、チュン=ソンリョンの死後、彼女が書いた日記の中にて始めてその気持ちが世に明らかとなった。

“第十代武侠大将”王廉(オウレン)
 燕にその人ありと言われた生きる伝説と称される武人。60を越えるというすでに肉体の絶頂期を越えているにも関わらず、
燕内において彼を越える剣士が現れず、未だに不動の大将として存在する人物。老いてなお優れた武力と高い見識を持つが、政治面に対して
やや無関心なところがあり、そのあまりの活躍と功績に妬みを覚えた六官達によって帝より、武侠隊大将の地位より退かせるよう進言をする。
帝レイはこれに対し、王廉の意見を聞いたところ、自分の活躍が六官達にいらぬ誤解や嫉妬を覚えさせ、それにより政治面が疎かになるようでは
それこそ大事に至るので、自ら望んで武侠隊大将を辞任します。と言い、この後、すぐに武侠隊を抜け、以後は消息を絶つこととなる。
しかし、この後、明による侵略行為が行われ、この時、王廉を欠いた武侠隊はあえなく敗れ、燕の国と共に武侠隊の命運も尽きることとなる。
この時、この王廉がいれば明の命運は変わっていたかもしれないと言われている。

“異国の逆徒”晋孝莱(しんこうらい)
 燕の重臣六官の一人梁宋炎と共に燕の帝レイに対し、かつてない大反逆を行った逆賊。
この人物に対しては謎に包まれた部分が多く、どこの生まれか、どこからやって来たのか漠然としている。※11
彼はある時、燕の一地方にて盗賊頭として存在し、周辺の諸侯の館から金目のものを盗んでは貧しい者達に分け与えていた義賊であったとされ
る。ある時、都からやってきた兵達に捕らわれ、そのまま燕の帝の前に連れて来られ六官の一人より、死罪を言い渡された所を
同じ六官の一人である梁宋炎の助言により救われ、以後彼にその命を預けたという。またその後、彼は梁宋炎と共に暮らすようになり
彼が有していた帝に対するある不満と、国を乗っ取る簒奪の計画を聞かされ、命の恩義を返す為にも彼のこの反逆の計画に同意し、共に
計画を成就させると誓う。その後、梁宋炎の計らいにより、孝莱は帝の城にて下官として働くこととなった。
そんなある時、孝莱は六官の一人でもある美しい妙齢の女性ファン=チューリンと言う人物と出会い、身分違いでありながら
二人は恋に落ちる事となる。人目を避けるように出会う二人の史実は時折、創作劇としても取り上げられる事が多い。
だが後に、梁宋炎が事を起こし、燕の帝に反逆を行い、都に攻め入った際、彼は恋人であったチューリンが自分の部下達によって暴
行を受けている現場に出くわし、その部下達を切り捨てた後、自分の本当の姿を知った彼女との終わりを確信し、別れの言葉や品を与える事無く
去ったとされる。この後、彼と梁宋炎が行った内乱は失敗に終わり、梁宋炎は捕らわれたが孝莱のみは逃げ延び、
その後、彼の姿や消息についてはその一切が途切れており、彼と言う人物の謎は最後までその通りであった。※12

“裏切りの天官”梁宋炎(りょうそうえん)
 燕の帝レイに仕えた六官の一人にして、後に晋孝莱と共に国家転覆を狙い、討ち取られた逆賊。
彼は代々、燕の建国以来から帝であるレイに仕えた六官の家の出であり、その出生や家系など並ぶ者がないほどに、名門な一族梁家の末裔で
あった。しかし、彼の父親は六官の一人でありながら、国庫の管理を盗み見ては横領を繰り返し、私腹を肥やした罪で、帝の手により
処刑をされていた。そうした親を持つが故に彼に対する周囲の眼差しなどは冷たいものであったが、彼自身は帝であるレイに誠心誠意尽くし
見習いからの出世にも関わらず六官の一人にまで上り詰め、帝のみならず、周囲の全ての評価を覆し、認められたと言う。しかし、それ故に
彼がその裏が帝に対する反逆を目論んでいたなどと誰も夢にも思ってみなかった。彼が自らの計画を行動に移す決意をしたのは、ある人物との
出会いがきっかけであり、それこそが義賊として盗んだものを民に分け与えながらも捕まり死罪を与えられそうになった晋孝莱との出会いである。
彼を晋孝莱を救った後、自らの屋敷へ住まわせ、彼の話や経緯を聞き、自らの内にあった計画を始めて人に話し、それに賛同した孝莱と共に
燕に対する反乱計画の実行を移すこととなる。※13
その後、晋孝莱を自らの配下として遇し、帝の城へと呼び寄せたという。後に彼は辺境の地を統べる諸侯に対し隣国の“絽”に
不穏の気配ありとの進言を伝え、当時、絽の第七代帝・紅武帝と辺境の諸侯との間に領土問題にかこつけた諍いを起こす事に成功し
すぐさま、帝に報告と同時にその責任問題を問う事を行う。彼は絽との戦争準備を言い訳として燕内部にて、反乱の為の軍の編成を行い
絽の帝との問題が締結する頃には、都を離れた晋孝莱と共に纏め上げた軍と自らに従う野心を抱く各諸侯の連合を率いて、燕に対する
大規模な内乱を行う。当初、梁宋炎の戦略と晋孝莱の武勇によって、燕と絽の二人の帝を、あと一歩のところまで追い詰めるものの
絽の帝・紅武帝の懐刀と称される諸葛銀(しょかつぎん)による絽本国の精鋭軍到着と、その背後を取られ、燕・絽の軍により
挟み撃ちをされる結果となり、梁宋炎は敗れ、その身は討ち取られる事となる。※14


“土”の統治国・絽(りょ)
 五行思想の一つ“土”の属性によって統治される国“絽”。ここを統治する帝は五国の中で唯一、人神ではなく、ただの人、帝の血を
受け継ぐ者によって帝が選ばれ統治される国である。元々、この国を統べる初代帝“文絢(ぶんけん)”は理を有した人神であったが、ある時を
境に彼の理の能力が低下し、人神としての寿命に限界が訪れはじめた。それは人との混じり合いが切欠だったのか、単に己の理の寿命が
尽きたのかは不明であったが、いずれにしても人神による統治が不可能な状況へなっていった。しかし、その時、すでに彼は己の正妻との間に
子を成しており、その娘を二代目帝として奉じるよう家臣、重臣達に命じ、それ以後、彼の血筋を受け継ぐ、帝の家系により、代々この絽の国は
成り立ち、均衡を保つようになっている。また、この絽の国より採れる“黄石”は特殊な性質を持った鉱石であり宝具の材料や燃料としても
運営可能であり、明が生成している“白金鋼”の材料にもなる為に、明に取って欠かせない燃料国とも言える。
ただし、この“黄石”と言われる鉱石は貴重な天然物質であり、その量も広大な絽の面積に対し僅かしか存在せず、あまり“黄石”の発掘を
行えばすぐに底をついてしまうという現状である。これに対する唯一の対処と言うよりも黄石の自然発生を助勢する方法が鳳に伝わる
“螢炎”と呼ばれる特殊な炎の燃え跡、特殊な灰を黄石が自然発生する絽の大地に撒く事により、黄石の自然発生が通常の倍以上に上り
黄石の採取や発掘などを心置きなく行う事が出来るようになる。最も“螢炎”を発生できる鳳もそこを統べる本来の帝が不在の為に
“螢炎”は上級官職などしか行えない為に、黄石の生産量は他の国と比べるといささか衰えている部分はある。※15

初代帝・文絢(ぶんけん)
 絽を統べる帝にして人神。その性格や振る舞いは自由奔放であり、多くの女性と関係を持った美男子とされ、史実によっては色恋の帝とも
奔放帝とも称されている。しかし、人神としての実力や威厳は兼ね備えており、彼が統治していた絽の国の時代は大きな争いも事件もなく
常に穏やかで安定した時代と言われている。多くの人が帝を人神として称え敬い、ともすれば畏怖の対象として接するのに対し
この絽の初代帝・文絢は誰隔てる事無く平等に接し、五国の中で最も民や人に愛された帝(人神)として伝えられている。
また彼による統治は数百年という人神にしては極めて珍しい短命の寿命統治であり、これには彼の理が、人と接しすぎた事により
単一を為し得なくなったとも、単に理の寿命とも、または他の何らかの要因ではとも推測されるが、真実は不明のままである。
いずれにしても彼は自らの寿命の終わりの際に、最も寵愛した正妻の娘を次の帝に指定し、それが結果として
現在の絽の国の礎を成したことから、文絢は自らの死後すら予測していた賢帝と称されている。

第二代帝・叡帝(えいてい)
 初代絽帝・文絢(ぶんけん)の娘。文絢の崩御の後、わずか13で帝位に就き、絽国の象徴となった人物。
彼女自身は父と異なり、“理”を宿すこともなくイデアの層もいわゆる凡人レベルのものであり、多くの者が彼女の統治により
絽は衰退していくと覚悟していたが、彼女による統治によって絽の国が乱れる事は一度もなく、重臣たる六官の言い分や進言をよく耳にし
誤った事があれば、それを素直に詫び、事が成就したとしても、それに浮かれる事無く、誠実謙虚に国を治め、彼女の統治によって絽は
帝が人神たる必要がない事を示し、以後、この絽において帝位に就く者は叡帝の血筋の中で最も才覚に溢れ、その才能が認められた者が
帝の帝位に就く事となった。

第七代帝・紅武帝(こうぶてい)
 歴代の帝の中で最も武勇に過ぎれ、決断力と行動力に過ぎれた人物と言われる帝。また彼の行った所業により、本来は天敵の属性を有する
“木”を統べる燕と深い関係を築くこととなる。彼が統治している時代にて隣国の絽との間に小さな諍い、領土問題が発生し、それはやがて
小規模な争いへと発展する。当初は辺境の地にて起こった紛争であったが、元々属性(相剋)の関係上、絽では燕の軍には及ばず
その時、この七代帝・紅武帝自ら軍を率いて、辺境の地を侵害してきた燕の軍を敗退させる。※16
この後、彼は自ら単身、燕の帝城へ向かい、そこで絽の帝・黎相歪と話し合いの場を設け、協定を進めるが、その時、燕にて起こった
史上最大規模の内乱に巻き込まれ、燕の帝レイと共に逆賊を退け、以後、燕との深い関係を繋いだ武帝と称されている。

第十代帝・陽華帝(ようかてい)
 叡帝以来、二人目の女性帝であり、彼女の統治する絽の時代において戦や内乱と言った目立った出来事はなく、唯一、意外な人物との
結びつきによって、国を驚かせた人物として有名である。その人物と言うのが燕の“帝”にして人神たる黎相歪である。
第七代・紅武帝との会見以来、燕と絽との関係は密接なものとなり、その結果、帝同士による会見などもよく行われるようになっていたが
二人が同じ席で会話を交わした際に、燕の帝レイは彼女の穢れない聖女のような性格に、また陽華帝は彼の誠実で嘘偽りのない
純白のような心に惹かれ、二人は知らず内に恋に落ち、その後、子を成したとされる。この後、燕との結びつきが更に強くなり
両国における絆は不動の者となり、この後100年以上に渡り平穏な日々が続くが、それもやがて、明による燕の滅亡によって幕を閉じる事となる。
また陽華帝は燕のレイと結ばれ、子を成し後に不治の病にかかり、僅か数年足らずでこの世を去ることとなるが
床に伏せり、死の淵にあってもなお笑顔を失わず、自分は幸せであったと言い残したとされる。

第十三代帝・元宋帝(げんそうてい)
 現在の絽を統べる帝。明による燕の滅亡と、東源郷全土の統一戦布告に対し、心中穏やかではなく、常にビクつき、夜も眠れずに
臣下達につきっきりでいるというへタレ全開の帝。だが決して知性が低く、才能に劣る人物ではなく、国政における取締りや手腕は
歴代の帝と並べても不遜はなく、しかしながら、唯一の欠点として性格が極めて内向的であり、臆病であると言う事。※17
また、その割りに妙なところで負けず嫌いで自尊心が高く、その度に墓穴を掘る人物。
だが決して悪意を身に纏った言動はなく、むしろ呆れながらも微笑ましい感情を覚えてしまうような人物。
戦や血なまぐさい事などがとにもかくにも苦手であり、現在、戦乱が渦巻く東源郷にあって、太平の世を心から望む人物であり、なんとか明による
戦と戦争をなくし平和を取り戻したいと画策しており、そうした意味では最も五国の中で民を想い、戦争根絶を願う第一人者とも言える。
またそんな彼を補佐するべく三将軍と呼ばれる者達が絽国において活躍を行っている。

“銃将軍”ウィルフリック=リーゼルベルク

「銃の宝具なら俺っちに任せるさ。もうこの東源郷は俺っちにとっちゃ第二の故郷みたいなとこさね」
 彼は元々は東源郷の人間ではなく、外の世界カナン大陸より渡ってきた人物である。彼はカナンと東源郷との橋渡し、同盟協定を成立させた
立役者でもあり、それ以後は東源郷で起こっている内戦や争いの収束の為に、自らこの地へ残ることを決意したと言う。
また、この東源郷を統べる“太極”の神ソルムンデハルマングとは顔見知りであり、彼女から気に入られた人物でもあり、彼女の願いの為
現在はここ絽の国の最高職“三将軍”の一人として活躍を行っている。また帝である元宋帝とは方向性は異なるものの
戦争を嫌い、なくしたいという想いの部分は同じであり、そうした共感から、彼の為にも戦争根絶を実現する為に、戦い続けている。
また、彼の本来の役回りは銃使いではなく、銃鍛冶であり、カナン大陸ではその人ありとまで言われた伝説のガンスミス『サウザンドマスター』の
孫で、二代目サウザンドマスターである。彼が東源郷に来て以来、銃の技術が伝わり、その生産も多く行われ、近年では銃タイプの
宝具(パオペエ)まで作られるようになっている。

“術将軍”來美玉(らいびぎょく)

 三将軍の一人にして当代きって神言術、太極術の使い手と言われる女性。雲のように飄々とした女性であり、羞恥心と言ったものがまるでなく
よく平気でお風呂上りの格好のまま、廊下を歩いては部下の叫び声を城内で木霊させている。
実は幼馴染でもあり、現在同じ三将軍の地位に就いている人物に好意を抱いているのだが、そんな気持ちなど伝わった試しなどなく
仕方なくツンデレっぽい仕草でごまかしている。また結構なお風呂好き。リプレイ「陰陽の五国」編のヒロインの一角。

“春官の娘”丁小明(ていしょうめい)

 絽における礼法、祭祀などを取り仕切る“春官”の一人娘。父である丁蘇邦(ていそほう)にとても可愛がられて育った為に
あまり世間を知らず、人の言う事を信じやすい無垢な少女として育つ。父と共に絽の国の辺境にて視察に赴いたところ
明の侵攻を受け、危うい状況へと陥るが、そこで彼女は人物を救ってくれたある人物と邂逅を持つ事となる。


“水”の統治国・櫂(かい)
 東源郷に存在する五つの国の中で現在、最も安定し、争いの火種がない国とされているのが、この櫂である。
この国には“玄水”と呼ばれる地下資源が豊富に存在し、それは国中の地下に広がっているとされる。
一見すると真っ黒な飲料するには躊躇われる水であるが、この水には魂の源たるイデアに強く干渉し働きかける要素が含まれており、特に薬や
治療薬として活用が幅広く行われ、最近では能力の増強為の研究や神言術や道術などの強化剤、更には宝具能力を高める物質としても
研究が進められている。ただこの“玄水”と言うものはこれ自体が強力な力を秘めた水であるため、通常の人間がそのまま服用すれば毒にも
なりかねないほどであり、これを正しく運用するには地下より採取した後、正しく薄める術を持って、その後、初めて活用が可能となる。
この時、通常の木材や金属などでは玄水を採取する際、純度の高い玄水に耐えられず容器が破損したり、玄水の水質が変化し、活用が
出来なくなるため、唯一、そうした玄水の要素を傷つける事無く採取可能な金属が“白金鋼”と呼ばれるものであり、これによって作られた
容器内であれば半永久的に玄水の水質を変化させることなく保存や採取が可能となる。

“水帝”女禍(ジョカ)
 櫂の国を統べる帝にして女帝。外見は幼女とも取れるような見た目の持ち主だが、その実、彼女は五国の帝の中で最も長い年月を生きている
人物でもある。櫂の建国以来、帝として人神として不動の地位にある。また、彼女にはもう一つの別名があり、それが“神の妹”と呼ばれるもので
ある。その“神”と言うのは他ならない東源郷を統べる三人の神々の内の一人、第三階位の理“陰陽”を司る伏羲であり、この女禍は
人神となる以前頃から、伏羲とは実の兄弟であったと言われている。この為、彼女の伏羲に対するブラコンパワーは異常なほどであり
彼が東源郷から立ち去った数ヶ月近くは帝の座を空にしてどこか遠くへ傷心旅行に行くほどである。
現在は伏羲の分け身であるシーショウと共に櫂を統治する帝として、東源郷全土に覇を唱えた明をどうにかするべく日々、苦闘しているという。

“伏羲の分け身”梅沢十手(メイチェ・シーショウ)

「俺は負けない、決して勝ちを捨てはしない!」
 東源郷を統べる三神の内の一人“伏羲”の分け身であり、その一部から生まれた人物。
彼自身は伏羲とは異なる別人格であるのだが、その根本には伏羲の記憶や感情が存在し、それに影響を受けてか、彼も伏羲と同じく
外の世界への興味と憧れを抱き、同じ家に暮らしていた女禍(メイリン)の下を去り、東源郷より旅立ち、外の世界へと向かう。
その後、様々な人物との出会いにより自らの中に眠る伏羲の力や記憶に目覚め、再び東源郷の世界に戻った時、己の真実に気づく。
やがて彼は外の世界にて更なる修行、旅を続け、伏羲の分け身以上に一人の人間として成長を果たし、東源郷に破壊と虚無をもたらすべく
復活を為した伏魔五凶神と百八の魔星を打ち倒すべく、再び己の故郷へと立ち戻る。
現在はある理由より、その存在は現実の世界より切り離され、外の世界との干渉は一切行なえない状況にあるという。


“金”の統治国・明(みょう)
 “金”と言う属性を統べる事からも五つの国の中で最も文明技術に優れ、建造技術や鍛冶技術は勿論、宝具(パオペエ)の生産技術も
五国随一であり、そうした武器や防具、宝具の素材となる“白金鋼”が、首都を中心に各都にて生成されている為、明の文明技術と進化は
他国より遥かに優れ、彼らが生産した武具や宝具は他国に高値で買い取られている。※18
この後、繁栄を続ける明であったが、ある日、明を統べる“帝”太帝による燕の侵攻と侵略を境に、東源郷全土に対し大陸統一という覇を唱え
かつてない戦禍を生じさせる事となるが、明の国民達は自らの帝が持つ、絶対的な力とカリスマを信じており
他国よりも遥かに優れた自分達が東源郷を統一するのも道理であろうと考えるようになっている。
またこの明には“金色の四征将軍”と呼ばれる全ての軍を統括する四人の将軍が存在し、彼らそれぞれ一騎当千の実力と零式宝具という
規格外の切り札を有している為、他国の将軍とは完全に逸脱した存在として恐れられている。

“覇帝”太帝(たいてい)

「この世界を、この時代を、貴様らなどに明け渡しはしないぞ、魔星共」
理:英知  階位:第七階位
 明を統べる帝にして“金”を統治する人神。彼が有するのは第七階位の理“英知”。
他の五国を統べる帝が第九階位以下の理に対し、彼が有する理の高さからも事実上、最強の帝であり、その彼によって統治されている
明の国とそこにいる人々も他国に比べ遥かに優れている。彼自身、“英知”の理からも分かるように無駄な争いや紛争を行わない人物であり
常に己と己の国の利害となることのみを追求し、それゆえに自らの国を発展させてきた賢帝である。
また、有する理からも分かるように彼自身、高い知性と知識を有する人物であり、五帝の中で最も東源郷に関する知識を有している。
加え五国全土においても並ぶ者がないほどの武勇を誇り、まさに無双の智と武を有する人物でもある。
この為、国内において絶対の信頼と支持を受け続けていた不動の帝であったが、近年、突如として人が変わったように軍備の増強を行い
その後、すぐさま燕の国に攻め入り、燕の首都を陥落させ燕の帝を打ち滅ぼした後に、東源郷全土に対し覇を唱えた。
彼が何故、突如としてこのような真似を行い、戦渦を生み出したのか、その心中は誰にも分からないままである。

“征前将軍”黄洵玲(こうじゅんれい)

 金色の四征将軍のリーダーを務める人物。落ち着き払った生真面目な人物であり、その様はまさに武人としての姿を体現したもの。
幼い頃に太帝に拾われ、以来、彼に対する恩義の為に修行を重ね、現在の地位を獲得する。礼に対しては同じ礼を返す人物でもある。
太帝が行おうとしている大陸統一も世の安定と太平を願っての事と信じて疑わず、帝の一番槍として見事な戦振りを行う。
また曲がったことや卑怯な事が嫌いな性格であり、常に正々堂々とした戦振りを見せ付ける。
しかし、時折、今の戦に対し疑問を抱くことがあり、それが太刀筋の迷いとして現れる事もある。
また三将軍はそれぞれが太帝より与えられた零式宝具(パオペエ)の持ち主であり、彼が有する宝具は“白帝剣”。
金の守護獣として名高い“白虎”の力を宿した聖剣とされる。

“征右将軍”雲招來(うんしょうらい)

 金色の四征将軍の一人にして常に眼鏡をかけ、にこやかな笑みを浮かべた胡散臭い人物。本人は人柄もよく穏やかで、部下にも優しく
同僚である洵玲や香蘭にも気を遣い、決して悪い人物ではないのだが、なぜか腹黒い印象を受け、その為、影でよく変な噂をされている
不憫な人。またホ○臭い言動が目立ち、洵玲とそういうの仲なの?という指摘をたまに受けるが、その都度、洵玲は全力で否定している。
しかし、そうした言動とは裏腹に四征将軍の中で最も知性の面で優れ、戦術や戦略の飛んだ彼の能力はまさに軍師としての側面すら有する。
彼が扱う零式宝具は“雷公鞭(らいこうべん)”。天変地異すら可能とする頂上の宝具である。

“征左将軍”明香蘭(めいこうらん)

 金色の四征将軍の一人にして名家のお嬢様。あらゆる武術に長け八極拳の達人であり、近接戦闘においては間違いなく
四征将軍最強の称号を手にしている。その性格も自らの出世と地位、そして実力から裏打ちされる傲慢とも取れる
超自己中心的な性格でありわがまま体質。しかし、実はそれらは表向きの性格であり、彼女の本質はツンデレに見せかけた尽くしん坊。
ドSに見せかけたドMであり、殴るより殴られたい、自分を打ちのめしてひざま尽かせることの出来る騎士様に憧れる品性ある変態である。
常に妄想癖が絶えず、その都度、変質的な行動や言動を思わず取ることもあり、周囲を引かせている。
ちなみに彼女のこの本質を知るのは同じ四征将軍と帝たる太帝であり、この為、洵玲や招來などは
彼女から常に一歩引いた位置で彼女と接している。また彼女が有する零式宝具の詳細は不明である。

“征後将軍”シャオ(霄)

「アンタ達、一体いつまで存在してるのよ。もうこの世界はアタシ達の時代なんだから、用済みの役者はさっさと退場してよね」
 金色の四征将軍最後のひとりにして、正体不明のこの世のならざる荒唐無稽な力を有す別次元の存在。
四征将軍の中で唯一、太帝に対して忠義を尽くしている様子はなく、太帝もまた彼女を信頼しているわけではなく、別の理由で手元に置いている。
彼女が東源郷に存在する全ての人間に対し向ける感情はまるで仇敵を憎悪するような、自らの体に這う虫を潰すがごとく、一切の慈悲や
感情を見せず、ただ純粋な殺意を持って殺戮を行う。そして、それはこの東源郷に存在する全ての人間に取っても同じような感情を与え
この東源郷に存在する人々が彼女と相対した時、言いようのない拒絶感と忌避感、そして“種”としての絶対的異物感を感じずにはおられない。
彼女に取って、現在のこの東源郷に存在する人々とは等しく塵であり塵芥。存在する事事態が許せない異物に過ぎない。
しかし唯一、フェイに対してのみ同属に対するような感情や想いをよせる。


崑崙山
 東源郷あって遥か次元の彼方にあるとされる別世界。もうひとつの世界とされる場所。
それこそが崑崙山と呼ばれる世界。そこは遥か天空に存在する十二の山々より構成された世界であり、それぞれの十二の山には神仙と呼ばれる
神に等しい力を有する仙人が存在するという。東源郷の住人にとって、この崑崙山の存在はおとぎ話のようなものであり、実際、各地に崑崙山から
気まぐれに降りた神仙が起こした伝承や逸話などが残っている。この崑崙山の誕生は遥か千年前にも遡るとされ、当時、東源郷の世界がある襲撃
により
壊滅寸前にまで追い込まれた際、東源郷を司る神の一人である万古神が自らの体を引き裂き、生み出した世界とも言われ
再び東源郷の地に災厄が訪れた際、遥か天空の世界より来訪するとされ、伏魔・魔星の復活を機にこの世界の存在が証明されることとなる。
現在、崑崙山には神仙養育機関と呼ばれる崑崙学園が存在し、この学園を卒業した者は神仙としての力と能力を身につけると言われ
多くの英雄・勇士がその学園への編入を夢見ているが、その学園に入れるものは全世界を見渡しても文字通りひと握りのみであり
実際にこの学園を卒業できたのは現在の十二神仙を含め、ほんの数人程度である。
この崑崙山にある学園に入れると言うことは、それ自体がすでに歴史に名を残すほどの偉業でもある。

三清太元
 東源郷の世界が三人の神々から創世・維持されているように、崑崙山にもまたその世界を創世・維持している神々が存在し
その崑崙山に住まう三神の名称を三清太元と呼ぶ。この内、霊宝天尊のみは後からこの三清へと加わった人物であるが
後に彼が生み出した“封神システム”と呼ばれるそれは崑崙山ひいては東源郷において革新的なシステムとなる。
彼ら三人それぞれ、東源郷に住まう三人と比べても見劣りしないほど強大な神々である。

元始天尊
「ほっほっほ、皆、精進いたせよ」
 崑崙山を作り上げたとされる神。白髪の長い白髭が似合う快活な老人である。一説には開闢の神・盤古神が
己の血肉を引き裂いて生み出した存在とされている。現在の崑崙山を統べる最高位の神、三清太元の一人。

太上老君
「起こさないでくださいzzz」
 崑崙山開闢後、異界より来訪せし異界の神。元始天尊と共に現在の崑崙山と呼ばれる世界の構築を行ったとされるが
本人は単に自分が居心地よく住める場所を作りたく世界創造を手伝ったとされる。
あまりに桁違いの能力と達観した感性を持ち、それゆえ何にも干渉することを控え、現在の伏魔や魔星との戦いにおいても不干渉を宣言し
崑崙山の一角にて眠りについている。崑崙山を統べる最高位の神、三清太元の一人。

霊宝天尊
「もしこのシステムが完成すれば今の世界情勢は大きく変化するだろう」
 崑崙山開闢の後、多くの神仙が生まれたがその中で崑崙山を作り上げた元始天尊、太上老君らに匹敵するほどの領域にまで駆け上がった
文字通り神の領域へと至った人物。封神システムと呼ばれる現在の魔星との戦いにおいて革新を起こすシステムを作り上げた人物。
崑崙山を統べる最高位の神、三清太元の一人。


崑崙十二神仙
 現在の崑崙山における十二人の神仙であり、崑崙学園を任された十二人の教師達。
崑崙学園に入学した生徒はこの十二神仙の内、一人を師として、その人物から個別に教えや教育を受けていく。

迦楼羅(カルラ)
「よりによって俺か……」
 現在の迦楼羅一門の十三代目長であり、現在の十二神仙のまとめ役を担う人物。
崑崙山の神々である三清に仕える一門であり、一門の長となった人物は代々迦楼羅の名を継承していく。
この迦楼羅もその例外ではなく、すでに百年以上に渡り迦楼羅一門の長を務め、歴代の迦楼羅一門の中でも郡を抜くほどの
才能の持ち主なのだが、その実力とは裏腹に本人の性格は極めて卑屈かつネガティブ全開であり、事あるごとに「どうせ俺なんか…」と呟く。
十二神仙のまとめ役という重席を推薦された時も「貧乏くじを引かされた」だの「クラスの委員長を無理矢理押し付けられたかのような重席」と
よく愚痴っている。 しかし、その実力は紛れもなく折り紙つきであり、現在の十二神仙の中でも真っ向から魔星を討ち滅ぼせる数少ない人物であり
黎安にて暴威を振るっていた“地醜星”のボムスも葬り、その際に百八の魔星・天星において独立の位置を保っていた天孤星ヒョヌと因縁を結ぶ。

ユーリン

「やばっ、いい男見てるとヨダレが出てくる(じゅるるる)」
 崑崙十二神仙の一人。十二神仙の中でもカルラに次ぐほど実力と能力に傑出した人物であるが、気ままでいい加減なところの多い女性であり
本人はいい男しか弟子に取らんといい、よく崑崙山と東源郷の地を行き来してはいい男探しなるものをしているとか。
ちなみに肝心のそのいい男候補を見かけると心身共に自分の眼鏡に適う存在が試してみたくなり
すぐにヨダレを垂らしながら戦いを挑む変態癖あり。いい男と戦ってる際の快感は夜の営みに似ていると周囲を引かせる。
カルラと同じく十二神仙の中でも古参人物とされている。

黄竜(コウリュウ)
「てっめぇ!誰が男だー!ぶっ殺すー!そこに直れー!!」
 崑崙十二神仙の一人。常にヒャッハー!しながらハイテンションで敵に挑んでいく十二神仙の噛ませ役(笑)
脳内の十割が単細胞で出来ており、考えるより本能だ!をモットーとしてそこに罠が見えていても飛び込んでいくただの馬鹿。ひたすら馬鹿。
算数出来ません。その見た目と言動からよく男と勘違いされているがれっきとした女性であり、本人も男として振舞っているつもりは全くない。
その為、その事について触れられるとキレて追いかけてくる。

太乙(たいいつ)
「うちの娘は世界一可愛よおおおおおおおお!!」
 崑崙十二神仙の一人。宝具開発の第一人者であり、それまでただの武器や防具でしかなかった宝具に命を注ぎ込み、人間と何ら変わらない『生
きる宝具』を生み出した異才の人物。それゆえ崑崙山における宝具開発部門の責任者を任せられている。
自身の制作物(子供)でもあるナタクを始め三人の子供達を溺愛しており「うちの娘は世界一可愛いいいいいいいいい」などとのた打ち回り
よく空中を錐揉み回転している姿が見られる。究極の親バカであり、しかしその愛情は変な方向に進んでおり、高性能のレーザーを搭載した姿が
チャーミングだとか、新型の宝具兵器を娘に取り付けては興奮するマッドサイエンティストと親バカがくっついた、とてもタチの悪い人物。
本人に悪意は全くないのだが、やる事なす事どこかネジがズレているので娘たちから嫌われており、その度に泣きながら空中を飛び回っている。

満州(まんじゅ)
「あらあら、また太乙が問題を起こしたの?仕方ないわね……あの野郎、後でシメとくか」
 崑崙十二神仙の一人。太乙の妻であり、ナタク達三人の子供達の母親。常にネジが外れたように暴走している父親と違い
いつも笑顔でニコニコと落ち着いた雰囲気を纏う大人の女性。
太乙が問題を起こしても「あらあら大変」と何事もなく事態を収めていくすごい人。
普段は笑顔が素敵な優しい女性なのだが、怒らせると、とてもつもなく怖い女性らしく。普段の優しい微笑みから氷のような微笑みに変わった時
太乙は勿論、黄竜、ユーリンですら暴走を自重し彼女に従うという。
曲者の多い十二神仙達をまとめるほど器の大きい人物であると同時に、そんな彼らを一度に黙らせるほどの恐ろしさを兼任する人物。
また崑崙学園において生徒達からの人気は高く、将来あんな女性になりたいという声も多い。

普賢(フゲン)
「大丈夫、君ならやれるよ。僕が傍にいるから」
 崑崙十二神仙の一人。全ての神仙の中で最も心優しく争いごとを好まない穏やかな青年。戦いを行わないことが最高の戦略であると称し、
自分から進んで戦うことをしない。本人にそんなつもりはないのだが誰にでも優しく接するその態度に女性からの人気が高く
いわゆる天然たらしと呼ばれている。本人はそんなつもりは全くないんだけどと無自覚なのがまた厄介。

玉鼎(ギョクテイ)
「僕は美を愛している。そして美とは僕の事」
 崑崙十二神仙の一人。ヨウゼンの師にあたる人物であり、自らを「麗しの神仙」と自称するすごく残念なイケメン。
周囲には常に薔薇が待っており、カッコイイポーズを取りながら教鞭を振るう姿はすごくウザったい。才能も高く、能力もあり、見た目も麗しいのだが
事あるごとに本人がその事について自信満々に語るものだから残念なイケメンに落ちてしまう勿体無い人。
ナルシストと言われるたび「僕は美を愛しているだけだ。そして美とは僕」とか訳の分からないことを言う限りなく残念な人。

クマーラ
「いい知らせと悪い知らせどっちが聞きたい?いい知らせ?じゃあ、悪い方から教えるね♪」
 崑崙十二神仙の一人。崑崙山に存在する影の一門『鳩摩羅(クマラ)一門』の現当主。
迦楼羅一門が三神に仕える表の一門とするなら、こちらは影の一門。崑崙山にあって迦楼羅一門に出来ない影の任務などを代々こなす。
このクマーラもそうした暗殺や粛清を生まれた時から行い続け、今ではそれを日常として受け入れている。
外見は少年の域を出ない少女のような風貌だがそれは特殊な薬と肉体技術により、子供の外見を維持しているだけである。
これは彼が行う任務においてそのほうが都合がいいための処置である。
こうした他の神仙とは一線を凌駕する闇の神仙であるが、外見通りの子供っぽい部分も多い性格であり
事あるごとに相手をからかう言動や、天邪鬼な行動の多い、ややひねくれた人物である。
しかし本人は好きな相手ほどからかいたくなると言い、彼がからかうのは文字通り好意の裏返しとされている。


伏魔五凶神
 古の時代、東源郷を含む全世界・全宇宙・第三存在空間の全てを虚無へ帰するべく生まれた
五人の神々の総称にして、万象全てを覆滅せしめん伏魔達の総称である。
この伏魔五凶神を生み出した主神・桓因(ファニン)は元々は東源郷を統べる神々の一人であり、同時に開闢の盤古神と同等以上の神でもあった。
本来ならば、東源郷を統治する神々の一人として盤古神と共に全宇宙を司るべき存在であったが
後に記載する混沌の理の影響により万物全てを飲み込み覆滅せん、無極の伏魔として降臨する。
その際、 桓因(ファニン)の理の影響により彼に付き従うべく生み出された四人の神々が、彼と同じ無極の属性を有する神々であり
彼ら五人をして伏魔五凶神と呼ばれた。本来であれば、その圧倒的力により東源郷はおろか全世界、全宇宙の理を飲み込み、虚無の彼方へと
覆滅するはずであったが主神・ 桓因(ファニン)と対峙した盤古神の“ある契約”に同意し、伏魔率いる百八の魔星全てが千年以上に渡る
眠りへと付くことになる。この時、盤古神との間に交わされた契約が何であったのか、それは伏魔の主神・ 桓因(ファニン)と東源郷の主神
盤古神のみしか知ることが出来ない内容であったが、いずれ遠くない未来において、伏魔率いる百八の魔星が復活することは確定であり
それは全宇宙の消滅という災厄を後回しにしただけの結果に過ぎない。そして、千年の歳月を経て、その真相にたどり着いた一人の人神による
五国を巻き込んだ大戦が終結する時、この地に、その禍は再び降臨する――。

“伏魔・無極神”桓因(ファニン)
理:無極  階位:第一階位
 五人の伏魔の主神にして、渾沌を除く三神を理を持つ人神へと引き上げた伏魔神。本来、彼が持つ“無極”の理とは全ての理の中で最も
原初の統合意志空間たる“無(フェムトー)”に近しい理であり、開闢の神・盤古神の裏側として生まれた理と言われ
そのため、盤古神とは兄弟神とも言われ、もうひとりの盤古神とも呼ばれていた。
“無極”という理から分かるように、彼が宿す理の能力とは役目を終えた存在や理を再び原初の空間フェムトーへと戻すことであり
宇宙に存在する星の終わりを告げ、そこに新たに開闢の神が新たな世界や理を授けるというまさに始まりと終わりを告げる永久機関の
重要な役目を担っていた。事実、創世するにはそれを行うだけの空間が必要であり、すでに擦り切れ摩耗した理を原初の空間へと導くことにより
再びその理が新たに創世する準備も整えるものである。
このように、かつては盤古神と共に森羅万象の秩序を重んじる神であったが、ある出来事を切っ掛けにそれは大きく変貌していく。
それは東源郷の地に生まれた一つの歪み“混沌”の理を宿す神・渾沌が生まれたことにより歯車は大きく狂い出す。
混沌の理を宿し森羅万象の調和を乱すその存在を誅滅するべく、この桓因(ファニン)自ら、その理を飲み込むべく彼と対峙し、その結果
混沌の理はこの無極の理に飲み込まれることとなる。だが、それによりこの無極の理は大きな変化を行う事となる。
それまで善悪と言った概念を持たない無色透明な理であった“無極”の理に“混沌”と言う名の無数の悪性の理が浸透し
結果、本来は何にも染まらないはずの無色透明であった無極の理が万象すべてを覆滅せしめん悪徳の理へと変貌していった。
これにより桓因(ファニン)は瞬く間に無数の世界を己が無極の理により飲み込んで行く。無論そこには東源郷の世界も含まれており
この桓因(ファニン)による万象宇宙の覆滅を阻止するべく、盤古神率いる五帝三神との戦いが始まる。
これに対して桓因(ファニン)もまた、かつて己の理により飲み込んだ渾沌含む百八の魔星を新たに生み出し、更に無数の世界を無極の理で
飲み込んだ際、その理の洗礼に耐えきり、己の理と同じ属性を持つ三人の眷属、神々を付き従え、壮絶な争いを繰り広げる。
やがて最後の瞬間、あともう一歩で東源郷を含む全宇宙を虚無の彼方へと消し去る寸前、盤古神が提示した“ある契約”に従い
彼は己に付き従う四神と百八の魔星と共に千年に及ぶ眠りにつくこととなる。
この時、東源郷を含む全宇宙を飲み込むほど強大な勢力であった彼が、なぜ盤古神との契約に従ったか、その真意は謎に包まれている。※19

無極の理
 無極とは開闢という概念によって生まれた東源郷の世界に終焉を与えるために生まれた対の理、対極の世界である。
本来、この理とは東源郷の世界が開闢によって生まれ、太極、陰陽の理の下、調和を繋ぎ、その後に長い年月により疲弊した世界に終焉を与え
再び新たなる開闢を起こさせる為の終焉と開闢を司る理であり、万象全てが陰陽の如く、裏表の調和によって成り立つように
この無極もまた東源郷の世界には欠かせない理であり、開闢の盤古神が再び築くべき世界や土台を整える為の理でもあった。
本来であれば、このように東源郷を統べる四人目の神が持つ理として機能していたのだが、ある時、東源郷にて生まれた歪みの理たる
“混沌”をその理の下、飲み込んだ結果、混沌の理が持つ“悪性”という概念に汚染され、本来は無色であるはずの無極の理が
万象全てを消滅させ、無へと帰する為だけの理へと変化してしまったのである。

眷属の特徴
 本来この無極によって生まれる眷族などはない。何故なら、全ての生命、存在、理を持つ人神ですら、この無極が統べる世界においては
飲み込み消され、無限なる無の一部とのみ。しかし、この無極の理に飲まれた際、稀に、それこそ奇跡とも呼べる確率、人神へと至れる可能性を
持った人物(それも第二階位以上)がいた際、この無極の影響により、それに類する理へと至ることがある。
そうした者達はこの無極の影響下によって人神へと至ったいわば、無極の眷属であり、その階位と理の種類もこの無極に極めて近いしい概念
理となる。このため、現在この無極の眷属と呼べるものはたったの三人のみ。即ち、“無限”、“永遠”、“無窮”の理を持つ伏魔の三神のみである。


“伏魔・無限神”蚩尤(シユウ)
理:無限  階位:第二階位
 現在、燕の地にて太白封神の力により封印されている伏魔であり、主神である桓因(ファニン)を除けば最強クラスの破壊概念
理の能力を持つとされる伏魔。もしも最初の伏魔、魔星復活の折、この伏魔が降臨していた際には、東源郷全土は完膚なきまでに
壊滅的な痛手を負い、現在のように伏魔、魔星勢力と対する体制は取れなかったであろうとされている。そうした意味でも太帝が
真っ先にこの蚩尤(シユウ)が眠る燕の地に軍を動かし、木帝レイの命を持ってこの伏魔の行動を封じたのは最も賢明な手段であったとされる。
結果としては今は亡き太帝、そして木帝レイのおかげで、この伏魔の復活は先送りされ、人類側に取っても大きな意味を持った。


“伏魔・無窮神”共紅(キョウコウ)

「僕は動く気はありません。今はまだ貴方方の好きにするといいでしょう」
理:無窮  階位:第二階位
 五人の伏魔の中で唯一、非好戦的であり、東源郷全土を伏魔、魔星による無極統一に関して無干渉な伏魔。
この為、同じ伏魔の中でも一線を引いた扱いと立ち位置を保っている。
しかしながら、だから言って戦闘面において惰弱なわけではなく、むしろ桓因(ファニン)を除く全ての伏魔達がある種の
恐怖と畏敬の念を抱くほどの力と能力を有している。このため、東源郷に対して唯一、攻勢の動きを見せず終始傍観するように静止している
構えであるにもかかわらず全ての伏魔、魔星達より恐れられている存在である。


“伏魔・永遠神”三苗(サンミャオ)

「我の時間は永遠。汝らのような時間に縛られた存在では触れる事も許されない」
理:永遠  階位:第二階位
 可憐な少女の姿をした伏魔であり、彼女こそが五人の伏魔の中で最も攻略不可能な絶対の概念を有する存在。
彼女が有する無極に属する理とは“永遠”、それは即ち時間と言う概念に対して絶対の法則を持つ理である。
全ての物事に有限と言う時間がある以上、この永遠とはそれに対する無限を意味しており、有形、無形を問わずあらゆる存在や概念は
この理の前には瞬時に移ろい消え往くものに過ぎず、そうした時間と言う概念を超越した理を持つこの伏魔は文字通りの永遠の存在である。
彼女の周囲には視覚や知覚などでは一切捉える事の出来ない永遠の理による概念層璧が張り巡らされており、この為、彼女に対して
あらゆる攻撃を仕掛けても、その攻撃は“永遠という時間”の壁に阻まれ、彼女に到達する前に朽ち果て消滅する。
(たとえ、剣や人による攻撃を与えようとしても彼女に届く前にその剣や人は彼女の周りに展開する無限の時の流れによって、数千年の時が
経ったかのように錆付き、朽ち果て、骨となり、更に数億の時間の流れを受け、朽ちた残骸はその残滓すら残さず消滅し、骨すらも風化し消え果る
また炎や雷と言った現象でさえ、彼女に届く前に永遠の時間の壁に阻まれ火は沈静化し消え果て、雷も彼女に届く前に消耗し消えうせる)
この為、時間と言う概念に縛られる存在や概念はその一切が彼女に触れることすら不可能であり、また仮に彼女に触れることが可能となっても
時間と言う概念から超越し永遠の存在として一切の時の流れを受け付けない彼女は“傷を負うという時間の変化”も受け付けず
常に完全無欠の永遠の姿を保ち続ける。ゆえにまず彼女と対するための絶対の第一条件として、時間と言う概念に対して不変的な概念
または理を有さなければ、彼女と対する事はできず、更に最低でも彼女と同階位の理を有する存在でなければ、永遠の壁に守護された
彼女に傷を与えることすら不可能である。現在、五人の伏魔の中で唯一自由に行動できるのが彼女のみであり攻勢に適した能力を
持っていないとは言え、五人の伏魔の中で最も攻略不可能な理を有する彼女は決して戦ってはいけない相手である。


“伏魔・混沌神”渾沌(コントン)

「喜ぶがいい、貴様もまた余の混沌の一部としてやろう」
理:混沌  階位:第三階位
 百八の魔星を生み出した父神にして、混沌の軍勢の神。本来、彼こそが東源郷に生まれた災厄、歪みの元凶であり
彼を排除するべく、当時東源郷を統べる四神の一人でもあった無極の桓因(ファニン)が邂逅する事によって東源郷の世界は
かつてない終焉を呼び込む事となった。彼が無極の神である桓因(ファニン)と対峙した際、いかに第三階位の理を持つとは言え
第一階位の理たる“無極”の前には彼は飲み込まれ、そのまま無と言う概念の下に消滅するはずであった。
しかしながら、彼が持つ“混沌”という理が無極の性質に極めて近いもの(いわゆるあらゆる感情を内在する一つの宇宙)であった為か
それとも、この混沌の理を有する神である渾沌自身の魂と、その純度が遥か高みの階位の理に飲まれてもなお、その自我と理を保ち
無極の理の下でも存在出来た為だったのか、彼は本来、階位として遥か高みであり最高位であるはずの無極の理に影響を与える事となる。
それは本来、無色透明であるはずの無極の理が、彼が持つ“混沌”という名のあらゆる悪性、あらゆる悪徳が内在する混沌と混じり合い
その影響を与える事により、それまで東源郷を支える四神の一人であった桓因(ファニン)にかつてない変化を打ち込み
万象全てに終わりを与え、始まりを告げるはずの神を、全ての存在を無という概念の下、統合し、覆滅するという
“伏魔”と呼ばれる滅殺の神へと変貌させる。ある意味で全ての元凶を引き起こした始まりの伏魔がこの渾沌である。
その後、新世界全土を己が持つ無極の理の下に、飲み込もうとする無極神の意志に賛同し、彼もまた無極神の眷族の一人として
伏魔の一人として傅き現在に至る。

混沌の理
 かつて混沌という理に足を踏み入れようとした存在はあらゆる世界において僅かながらに存在し、その全てがこの理に足を踏み入れた瞬間に
脆くも崩れ去っている。何故なら、この混沌と呼ばれる理は全ての理の中で最もあらゆる感情、人の世における悪徳と言う概念が集合した
小規模の宇宙、個人規模の無(フェムトー)に等しいからである。
故にこの理に至る者は多くとも、この理を内在させるほどの器と魂を持つ者は多くはない。故にそうした意味でこの混沌の理を完全に制御し
自身の理として受け入れているこの渾沌は新世界全土において最も人神としての器において最上の存在である。
その為、無極の理に飲まれる事無く、己の存在を確立させているのが何よりの証拠でもある。

眷属の特徴
 彼が持つ混沌の理による眷属とは即ち、彼のその身より産み落とされる存在、彼の一部にして文字通りの眷属である。
混沌の理を持つ人神とは己自身こそが世界に他ならず、かつて己が存在した世界の全てを飲み込み、己の中に抱え込んでいる神である。
故にその彼が生み出す存在もそうしたかつて自身が飲み込んだ世界の住人を下にした彼の一部である。
(とは言え、あくまでも外見や基本となる性格が元となるだけであり、本質的にはこの混沌が生み出す別人である)
また混沌の理により生まれる眷族の為、その性質も親であるこの渾沌に非常に近しくなる。
ゆえに彼らは渾沌が抱える百八の悪徳(混沌)の感情より生まれ出でた彼の一部である。
またこれら混沌の眷属は彼の一部である以上、その血肉や能力も全て渾沌より分け与えれたものであり、当然その彼らが消滅すれば
その分、本体である渾沌も力の減少を避けられない。ゆえに、まず絶対にありえないことだが、もし仮に彼の眷属たる百八の魔星が
全て滅びるようなことがあれば、この渾沌自身の力も大幅な力の減少と損失を余儀なくされる。

百八の魔星
 混沌の理を司る渾沌の眷族にしてその分け身(一部)達。彼らは皆、渾沌が有する混沌の理より生まれ出でた者であり
混沌の中に存在する百八の悪徳の具現化である。ゆえに彼らそれぞれが小規模の理持ちの人神と同義であり、その全てが本来人の世あって
忌避し、受け入れてはならぬ悪徳の理である。このため、東源郷のみならずこの世界に存在する全ての人間が彼ら百八の魔星と対峙した時に
言いようの無い不快感や拒絶感を感じるのは道理であり、彼らはまさに人の形をした人の悪性そのものであり、悪徳の概念そのものである。
また彼ら百八の魔星はその全てが神であり、父である渾沌の血肉から生まれた一部であるため、その能力は紛れも無い神格の領域であり
更に、伏魔五凶神の主神である桓因(ファニン)が持つ“無極”の理の影響により、その能力も更に高められている。
まさに彼ら一人一人が東源郷を統べ統治する人神たる帝に匹敵する能力を持つ荒唐無稽な魔神の集団である。
また彼ら百八の魔星は上位36星(人)の天星と、下位72星(人)の地星が存在し、魔星内において天星の称号を持つ36名は他の世界において
比類がないほど強大な力を秘めており、理を有する存在とすら彼らは相対することが可能である。
また地星においてもそれは同様であり、天星に劣るとは言え、その力の前には人間如きでは到底敵わない領域に至っている。

“天勇星”ハオ

「小賢しい技術や、理屈ばかりを並べ立てた能力など必要ない。ただ圧倒的一撃、それのみで全ては片がつく」
 数ある百八の魔星の中で『五指星』と呼ばれる五人の魔星のみに与えられる称号、その第五の席を持つ“天勇星”の男がこのハオである。
彼が持つ理とその力は東源郷の神々を相手にしても立ち向かえるほどであり、外の世界に存在する人神サハラをも上回る実力を有する。
その圧倒的力から自身と対等に並び立てる相手を得られず、ほとんどの戦において自ら出陣することはないが
己と対等、またはそれ以上の力量を有する存在を見つけた際には、地の果てまでも追い雌雄を求めるまさに戦を体現した魔星である。
かつての戦いにおいて、東源郷を統べる神々の一人、伏羲(フッキ)に傷をつけた魔星でもあり、彼もまたその時の戦いで
無数の傷を体に刻まれ、己よりも遥かに強者である伏羲を倒す為にこれまで長き封印の日々を耐え抜いていた。
現在、その伏羲の分け身でもあるシーショウに強い執着を見せている。他の魔星に比べると弱者には見向きもせず時として見逃すという行為も
行うが、相手が強者であった際、その者の限界を引き出し、それを真っ向から討ち滅ぼす事を史上の喜びとしているため
相手を奮い立たせ、限界を超えさせる要素があれば何でも利用するという魔星特有の個我も有している。

“天雄星”フェイ

「テメェはそこで潰れていろ」
 記憶を失った謎の青年であり、その正体こそがこの世に甦った百八の魔星第六天星の席を持つ“天雄星”のフェイである。
彼が魔星として宿す悪徳の理とは“凶”と呼ばれる物であり、それはそこに存在するだけでありとあらゆる禍、凶を招き引き寄せる
百八の悪徳の中でも最も危険な能力であり、彼はその力を十全に己のものとして扱い、かつての東源郷の神々との戦いにおいて
その猛威を振るった魔星の一人である。本来、魔星であるはずの彼に取って現在の東源郷は彼の本質に合わない不快な場所であったはずだが
凶の理を宿す己に惜しげもなく接触をはかる少女、小明との出会いにより、それまで同じ魔星の誰一人として傍におかずただ凶という概念を
振りまくだけの彼に変化を打ち込み、伏魔、魔星の復活の際、“自らの所有物である”小明を奪われようとした際、渾沌率いる魔星に敵対の意志を
告げ、その後、太帝より譲り受けた明の地を己の所有物として他の存在に渡さぬ為に戦い続ける道を選択する。
百八の魔星において唯一、人類が希望として得られた奇跡の星でもあり、また彼こそが百八の魔星に対して対抗できる人物の一人でもある。

“天猛星”シャオ

「フェイ、アタシがいつかアンタを必ず――殺すよ」
 かつて明の四征将軍の一人であり、その真の正体こそ百八の魔星第七天星の席を持つ少女である。彼女はフェイ以前より伏魔、魔星の封印
弱体化の隙間から抜け出し、この世で最初に甦った魔星の一人である。しかし、復活した当初、彼女もフェイと同様に記憶の欠損と大幅な能力の
低下を余儀なくされていた。そうした際、彼女は明を統べる太帝により保護されるが、太帝はこの少女からかつて滅びたはずの魔星の気配を
感じ取り、以後、彼女の動きを監視する意味を込めて自らの手元へと束縛し置くこととした。
現在の東源郷の世界にて甦ったシャオは、己の感性や本質にまるで合わない世界に苛立ちと不快感を募らせ、また同時に誰一人として
他者を圧倒する自分に近寄るものはなく、それは同じ三将軍の洵玲達も同様であり、常に周りから忌避と嫌悪の視線を向けられ続けた彼女は
次第に己の正体を思い出していき、やがてフェイとの邂逅を果たしこの世界が本来は自分たちの世界であり、滅び去るはずであった虫けらが
未だに生き残っている事実に惜しげもない不快感を募らせる事となる。フェイが小明という自らを受け入れてくれる存在を得たのとは逆に
彼女はあくまでもこの世界に受け入れられない異物として魔星としての扱いによって、自らの行動に一切の疑問を持たないようになった。
またフェイとはかつての戦いのとき以来、共に戦場を駆け抜けた最も近しい距離に居た魔星であった為、彼の事を少なからず執着している。

“天英星”ルオシー

「虫けらを殺すにもこだわりという物があります。自らは手を汚さず自滅に追いやる。ああ、これこそ至高の殺し方というものでしょう」
 百八の魔星の一人にして最も狡猾かつ卑劣な詐欺師として魔星の間でも嫌悪されている男。それがこの第九天星のルオシーと呼ばれる男。
彼が持つ魔星としての理とは“謀(たばかり)”であり、その理が示す通り、彼は自らが思い描く策を遂行し、
それに嵌りもがき苦しむ人間達の末路の見るのが何よりの至福としている男。
本来、自らが手を下せば簡単に何十万という人間(虫けら)を葬る実力を持っているが、彼は決して自ら手を下し動くことを良しとせず
わざわざ人間達に対してある種の希望めいた選択肢や抜け道と言ったものを用意し提示するが、そこにあるのは希望から絶望へと
叩き落とされる自滅の結末のみである。
かつての大戦においても、彼が自らの手で殺した人間は一人もいないが、彼の策によって自滅し、滅んでいった人間の数は
シンクと言った魔星が殺戮してきた数の数倍にも勝ると言われる。
このことから、時に伏魔からの命により策士として策を提示し、実行するという役割を任せられることもあるという。


“天孤星”ヒョヌ
「…私は誰の側でもない私のみの側だ」
 百八の魔星第十三天星。全ての百八の魔星において最も孤立無援、独立独歩を保つ孤高の魔星。
かつての大戦時より、彼と言葉を交わしたことのある魔星は誰一人としておらず、その上、彼が自ら戦う姿を見たものすらいない為
その実力が全ての魔星の中において最も謎に包まれている存在。伏魔、魔星の復活以後も、東源郷との戦いには参加しているものの
直接己から攻めるような真似はせず、あくまでも独自での行動を行っている。この為、魔星の父である渾沌ですら
彼の居所や目的すら把握していない。しかし長い年月、孤高を貫いていたはずのこの魔星がある男に興味を抱き、以後、魔星として生まれてから
初めての他者への接触、および興味を抱くこととなる。それこそが迦楼羅一門の現在の長、迦楼羅であり、いずれ彼と決着をつけるべく
孤高の魔星は一人、初めて抱いた感情を胸に戦場となるべき地を駆け抜けている。

“天殺星”シンク

「俺が持つ理は殺人。相手が人間であるなら英雄だろうと達人だろうと王だろうと例外なく俺は殺せる。そういう理だ」
 百八の魔星第二十二天星にして、全ての魔星において最も“殺人”と呼ばれる所業を堪能し、ばら撒き続けた殺戮の魔星。
彼が宿す悪徳の概念もその“殺人”であり、かつての戦いにおいて老若男女の別を問わず、最も殺戮を犯し続けた狂気の魔星である。
現在の東源郷において最も脅威となっている魔星の一人であり、すでに彼の手により五国に誇る無数の将軍や英雄が討ち取られており
彼の名と姿を目にした者はその場の殺害を逃れる術はないと言う。彼が持つ魔星としての能力は最も単純明快なものであり、それは殺人と言う
技術を究極にまで高めた戦闘技術であり、能力であり白兵戦、打撃戦、銃撃戦、すべてにおいて真っ向からそれに立ち向かい叩き潰すと言う
論理もへったくれもないものであり、その単純すぎるが故に図抜けた能力を前に彼以下の存在は全て真っ向から叩き潰されている。
彼と対するには最低でも彼と同レベルの能力と力を身につけねばならなく、それは小細工などでは及びも着かない基礎の能力で争う他ない。

“天退星”クーロン
「けーひゃひゃひゃひゃ!ここで会ったが何年目!今日こそ俺様の戦いに栄えある一勝目をぐぼぎゃあッ?!!」
 百八の魔星第二十五天星にして全ての魔星において最弱&ネタキャラとされる魔星。百八の魔星(しかも天星)の一人でありながら
何故か戦うたびに敗北し続けているという全戦全敗の魔星。しかしその都度、どんなに死ぬような思いにあったり
実際に死んだり、倒したりしたにもかかわらず、次のシーンになるとそんなことなどなかったように元気よく、けひゃひゃー!と襲い掛かってくる。
そして再び敗北するという運命を背負っているにも関わらず、絶対に死ぬことがなく、常に戦場に現れ続けるその謎の生存能力だけは
確かに魔星しての恐るべき能力であると、言えなくも…ない。

“地醜星”ボムス
「ひょひょひょ、この街の金銀財宝は全て儂のものじゃ〜!」
 百八の魔星第九十九地星にして金の亡者にして金に取り付かれた醜いスライム体型のおっさん魔星。
燕の地の一つである辺境の地、黎安(しょうあん)を牛耳乗っ取ていた魔星であり、その町の住人全てを己に従わせ、自らに金品財宝を
貢がせる奴隷として虐げていた魔星。本来、東源郷全土を消滅させることを目的とする魔星の理念に反する支配的行いをしていた魔星であるが
それもそのはずであり、彼が持つ魔星しての悪徳の概念は“金欲”であり、全ての金銀財宝を自らの所有としなければ気がすまない醜い概念に
取り付かれた魔星であるからである。彼に限らず、多くの魔星は己に刻まれた悪徳の概念に従うものが大勢であり、それはフェイやヒョヌなども
そうであり、その次に自らの神である渾沌の命が順番に来るのである。
当初はその町中の住人を己の下僕として近隣の地方からも金品を奪い続けいたが、そこへ到来してきた迦楼羅一門の長、迦楼羅により誅りくを
受け滅び去る事となる。またその際、それをたまたま観察していた天孤星ヒョヌの目に入り、それが迦楼羅とヒョヌの因縁の始まりでもあった。


◆サハラ大陸

 “枯渇”の理を持つ人神(アダムカドモン)サハラによって構築され、生み出された世界。
その世界は“枯渇の砂漠”と呼ばれる場所であり、通常の人間や動物、生命が入れば、たちどころに生命力を吸い尽くされ
砂や灰となり、その場で朽ち果てていく。この大陸の中へ入る資格を有する存在はこの世界を生み出した神サハラと彼の眷属シムーン
そして自我を失った怪物ジン達と、シムーンの完成系であり、サハラの同属たるイフリートのみである。

サハラ・ファミリー
 サハラ・ファミリーとはその名の通り、サハラに取っての家族、同胞たる者達の総称である。
決して満たされる事の無い餓えの枯渇を有するサハラがある事を切欠で、己の飢えを癒せるかもしれない可能性に築き
その為に彼が集めたのが現在の“ファミリー”と言われる彼の家族達である。
そのほとんどのメンバーがシムーンや、外の世界で受け入れられなかった迫害された人種、人物たちで構成されており
彼らは皆、蔑むと貧困、差別を受け世界や社会に取っての底辺とされていた人物ばかりである。
このファミリーを構成する組織図には、彼らファミリーを纏める親である“ゴッドファーザー”サハラが頂点に座し
その下にサハラが最も信頼を置いている五人の家族、文字通りサハラの五体を現す“ゴッドファイブ”と呼ばれる五人の大幹部が存在する。
この“ゴッドファイブ”全員がイフリートと呼ばれるシムーンの上位種によって構成されている。
更にその五人の大幹部の下に“カポ・レジーム(幹部)”と各ファミリーを纏める幹部達が数人存在し
その下に“ソルジャー”と呼ばれる者達が無数に存在する。

本拠地“コーサ・ノストラ”
 サハラ・ファミリーの本拠地にして、ゴッドファイブおよびゴッドファーザーであるサハラが身を休めている場所である。
この“コーサ・ノストラ”の正確な場所はサハラファミリー達以外、外の勢力では知る者はなく、広大なサハラ大陸の中
見つけることは容易ではないとされている。またこの“コーサ・ノストラ”を中心に、この本拠地では暮らせないほどの多くのファミリー達の都市や
アジトなどが点在している。

イフリート
 イフリートとはサハラの眷属であるシムーンの進化系、上位種に当たる種族である。通常、多くのシムーンは自身の中に枯渇衝動と
呼ばれる周りの全てを枯渇させる能力を宿すが、これは“枯渇”の理を持つ人神サハラの眷属による影響であり
彼らの中に小さいながら親神であるサハラの能力、枯渇の理が僅かに存在するためである。シムーンの多くはその枯渇衝動を抑えるものの
強大すぎる枯渇衝動によって理性と心を失い枯渇の理に全身を汚染され、その身を“ジン(砂漠の悪魔)”と呼ばれる異形の化物へと
変える者も存在する。しかし稀にその“枯渇”の理に全身を蝕まれながらも、逆にそれを受け入れ、新たに自らの理とする者が現れる。
そうした者の多くはシムーン特有の褐色の肌に加えて新たな外見的特徴を有する。それが額に生まれる“ビンディ”と呼ばれる
赤いほくろのようなものであり、それに加えて龍の尻尾のようなものがお尻から生える。通常シムーンの多くは蔑まれる事が多いが
このイフリートが放つ外見にはある種の神々しさが存在し、それは一目対峙するだけで彼らが特別な種族であると実感するほどである。
彼らイフリートの身体能力はシムーンだった時とは比べ物にならないほどであり、彼らは枯渇の理とは異なる能力“渇望”の理による
能力を有している。それは枯渇より生まれた新たなる理の能力であり、言ってしまえば彼らは小規模の理持ち、人神と言ってもいい種族で
ある。とは言え“渇望”の理に完全に飲み込まれているわけではなく、半歩足を踏み入れている状態が正しく
そのため“渇望”の理による能力を限定的に引き出している状態である。 ※20
“渇望”という名称からも分かる通り、その能力とはその人物が心の底から望む力を具現化する力であり
イフリートの一人アフラーが宿した最強の右腕(剣)とは家族を傷つける敵対者達を切り裂くため彼が望んだ力であり
逆にイフリートの一人サマールが宿した最硬の左腕(盾)は、家族を守る為の力を望み、それが具現化したものである。
現在のところ、確認されているイフリートはサハラ・ファミリーにおけるゴッドファイブの五人のみであるが
未だ確認されていないイフリートや、今度イフリートへと覚醒するシムーンも存在し、それを考慮すれば、このサハラ・ファミリーこそが
今後各世界の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めた勢力と言える。

ゴッドファーザー
 サハラファミリーを纏める文字通りの親にして、彼らに取っての父であり、神。それがサハラが持つ“ゴッドファーザー”の称号である。
この称号は彼自身が言い出したものではなく、このサハラファミリーが現在のような一つの巨大な勢力となってきた際に
誰からともなく言い出し、サハラ自身それを気に入って家族を纏める親としてその称号を受け取ったのである。
この称号を継ぐということはそれはすなわちファミリーのトップに座るということであり、それは文字通りサハラの後継者となる人物であろう。

“ゴッドファーザー”サハラ

「家族。それがオレが得たこの理から脱却する答えだ」
理:枯渇  階位:第六階位
 サハラ大陸を生み出した“枯渇”の“理”を有する人神サハラ。彼は生れ落ちた瞬間より己の“枯渇”の理に縛られ、それゆえ、自らが生み出した
不毛な何の代わり映えもしない砂漠だけの世界しか知らず生きてきた。常に胸の内には満たされない“枯渇”の衝動のみが支配し
それを埋めるために、自分と同じ“同属”にして“理”を有するカナン大陸の姫の理を喰らうべく活動を開始する。
第一次星蝕戦役の際に、彼は自らと同属である“守護”の理を持つガディムと対峙し、それまで自分の世界で並び立つ者がいなかった中
彼だけが自分と対等の場所に立ったことにある種の喜びを覚え、それ以後の彼の行動にある変化を打ち込むこととなる。
やがて、数百年の歳月が経ち、姫の理を奪う為に活動を続けていたサハラだが、その彼女を護る為に自分に立ち向かってきたある人物達との
邂逅と戦いによって、彼がそれまで追い求め続けていた物が何であったのか“答え”を得て、以後の彼の価値観を大きく変えることとなる。
彼自身、自らの理でもある“枯渇”を酷く忌み嫌っており、この単一の理から脱却する為にはどうすればいいのか、どうすれば満たされるのか
その為の手段として彼は“家族(ファミリー)”という答えを得る。安寧を統べる姫の周りに、そうした存在が多くいて、彼女も周りの者達も
それによって満たされているという事実に気づき、以後、彼は自らの“枯渇”を癒す為にファミリーを集めることを決意する。
その後、多くのイフリート、ならびにシムーンなどを従え、南の“枯渇”のみしか存在しなかったサハラ大陸に“ファミリー”という
一代勢力を築き上げる。彼は自らのファミリーに対し並々ならぬ執着とこだわりを秘め、彼らの事を実の家族同然に扱っているという。
だが、その後、彼は東源郷から現れた第三階位の理を有する神“伏羲(フッキ)”によってその身を切り裂かれ、文字通り身体の半分以上を失う。
この為、現在は身動きが取れない状態で、傷の治療を行っている。


ゴッドファイブ
 ゴッドファイブとは親である“ゴッドファーザー”サハラに継ぐ権限とファミリーを纏める資格を与えられたサハラが全幅の信頼を置く
五人の大幹部にして、文字通りの息子同然の存在達である。現在、“ゴッドファーザー”であるサハラが身動きが取れない状態であり
このゴッドファイブ達が事実上のサハラファミリーを纏め統治している。
しかし、この内のサマールはカナン大陸への亡命を果たし、ラーニもまた現在のところ行方不明となり、現在、ファミリーを統括している
ゴッドファイブは“サハラの右腕”たるアフラーと、“サハラの瞳”にあたるヴァナートの二人のみである。性格的にあまり相性のよくない
二人のためか、よく衝突を起こし、その際に“コンシリエーレ(参謀顧問)”であるカビール=ソウハが仲介を行っている。
また彼ら五人はサハラファミリー内でも群を抜いた能力を有する者達であり、その力は星蝕海に存在する上位オグドアス・オクトバと匹敵する
ほどであり、プロパテール種とも渡り合えるとも言われている。

“サハラの右腕”サハラ=アフラー

「僕はサハラ様の剣だ。あの方の家族として、子として、あの人に害なす全てをこの右手で斬り裂くのみ」
 “最強の右腕(剣)”を持つイフリート。生まれつきのシムーンとして多くの迫害を受け続け、死の寸前にあった所をサハラに拾われた人物。
ファミリーとして迎え入れられて以後、彼はその心を親であるサハラと家族(ファミリー)の為に心身を捧げる。
 サハラに取ってもアフラーは特別な人物であり、我が子のように常にその傍に置いており、現在のファミリー内でもサハラに次いで
最もファミリーにおける人望と支持を受けている人物でもある。サハラが“伏羲(フッキ)”の手により、その半身を失って後
サハラに代わり事実上ファミリーの頭となり、現在のファミリーの統治と指導を行なっている。
彼は自らの親であるサハラが“伏羲(フッキ)”により引き裂かれた事実に誰より憤り、この為フッキに対する憎しみと、その同盟国である
カナンに対しても激しい憎しみを滾らせている。しかし、報復を名目とした全面戦争ともなれば両勢力に甚大な被害が出ることは明白であり
ヴァナートの諌めもあり、現在はファミリー内の秩序回復と貢献に集中を行なっている。
また彼と同時期にファミリーに迎え入れられたサマールとは良きライバル関係であり兄弟のような間柄であった。
この為、両者は最も近しい位置にあったがそのサマールがカナンへの亡命を果たした際は彼はそれまでの理性が外れ、彼に対する
裏切りの制裁を与えるべくソルジャーを率いて“スイグスク(十嶽の城)”へと侵攻を行なった。激情に駆られ、感情的になりやすく
特に身近な人物の裏切りに対しては視野が狭くなる欠点を持つ者の、誰よりも情に厚く、自らの部下や社会的弱者に対する対応は
人一倍優しく、普段はファミリー内におけるいい兄であり。
彼が有する渇望の理による力とは、その右腕に宿った最強の剣であり、如何なる存在をも切り裂く無敵の剣である。
事実その剣によって斬れないものはなく“理”に至った存在にすら傷を与え、切り裂くほどの力を持つ。
サハラを除いて最強の戦力を有している。 また最近、なぜかラッキースケベと言う体質が付加されつつある。※21

“サハラの左腕”サハラ=サマール

「まだ何も見えていないな、俺達が敵とすべき存在が何なのかを…」
 “最硬の左腕(盾)”を持つイフリート。アフラーと同じ時期にサハラの手によって拾われた人物。
彼はファミリー内部における理性と称され、計算高く、常に熱くなり物事の視野が狭まるアフラーやサハラを諌め多くの危機的状況を
救ってきた人物。アフラーや他のゴッドファイブと同様、家族を大事に想う気持ちは強いが、サマールの場合、それがアフラーとは
異なる方向に強く、彼は自身が犠牲になることで家族が幸せになるのなら、その選択をためらいもなく行い、家族が背負うべき問題を全て
自分ひとりで背負い込むという癖を持つ。自己犠牲の精神と言えば聞こえはいいが、時折それによるサマールの行動に危うい部分を垣間見る。
サハラが“伏羲(フッキ)”によりその身を裂かれて以来、彼は自らに従うソルジャー達を率いてフッキと同盟関係にある敵陣営の勢力
カナン大陸への亡命を果たし、現在彼の身はカナン大陸の要所の一つ“スイグスク(十嶽の城)”にその身を置いている。
これに対し、ファミリー陣営内では大きな意見が分かれ、現在でもアフラー派とサマール派による交戦が起こっている。
いずれにしても、こうしたサマールの行動によりサハラ陣営における混乱が生じたのは紛れも無い事実であるが、ファミリー内で最も
合理的な思考を是とする彼がそうした行動を行なったからには何か訳があるのではと言われるが、彼はその心中を誰にも語ろうとはしない。
また彼が持つ“渇望”の理による力とはその左腕に宿った最硬の盾であり、如何なる者であろうと傷を負わせる事が不可能な無敗の盾である。
それはたとえ“理”に至った人物の攻撃であろうとも、その左腕に宿る盾はあらゆる攻撃を防ぎきるとさえ言われている。

“サハラの瞳”ヴァナート
 “最高の瞳”を持つイフリート。かつてサハラによって故郷を奪われ、右目を奪われた後、人間であった自分すら奪われ、シムーンとなった人物。
その後の彼はサハラに対する復讐の為に生きてきたが、サハラとの戦いの末、彼に対し“家族”という概念の切欠を与える事となる。
また、その後、サハより己の家族(ファミリー)とならないかと声をかけられ、初のファミリーの第一者となり、枯渇の理に全身を蝕まれても
理性や意識を失わない新たなる種“イフリート(砂漠の魔人)”となる。その後、ファミリーの一員としてサハラの傍で彼を支え
増えいく家族達の面倒を見る名実共にサハラの懐刀たる彼の右目と称される人物となるが、サハラが“伏羲(フッキ)”との戦いに敗れて後
ファミリーがアフラー派とサマール派に分かれ、彼はアフラーの側近として彼の実直な性格にブレーキをかける役として補佐を行う事となる。
アフラーのカナン、ベルシェルス、東源郷などに対する侵攻計画に対してはやや諌める立場であり、現状、ヴァナートによる制止によって
それは留まっているが、これがいつまで続くのかヴァナート自身、そう長くはない事を悟っていた。
また、彼が有する最高の瞳は如何なる存在のスピードや能力を持ってしても、その姿や軌道、残像までも読み切る完璧な超眼であり
彼の前ではどのような速さを持ち、フェイントを重ねようとも、それら全てが見透かされ、未来予知とも取れる正確な先読み攻撃を行う。
この世で唯一、最速と言われるラーニを捕らえる事が出来る人物でもある。

“サハラの足”ラーニ=シャルマ

「家族なんでしょう、だったら護るのは当然よ」
 “最速の足”を持つイフリート。サハラに出会う前からすでにイフリートとして覚醒しており、その後、ファミリーに入った異例の人物。
まだ少女の域を出るかどうかの年頃に似合わず、苛酷な環境、凄惨な状況に対し、眉一つ動かさず、それに慣れた言動すら行う。
しかし、本人自体は決してそういう事を望んでいるわけではなく、戦いも殺しも必要に迫られた時のみ行う。
当初はアフラーやサマール達と同様にサハラのファミリーとして所属していたが、サハラの負傷後、その行方を眩ませ、現在どこにいるのか
ファミリーにいる誰一人として分からないという。また、彼女の実力も、サハラファミリー1とされるアフラーの腕を持ってしても仕留める事が出来ず
長期戦ならば、アフラーより、ラーニが勝るとも言わしめる。この為、彼女はアフラー、サマールに次ぐファミリー内での実力者であり
彼女が再び姿を現し、ファミリー内の同士たちに声をかければ第三の勢力を築くことも可能であるとされている。
また彼女が有する最速の足とは文字通り、地上における如何なる存在をも超越する速度を可能とする俊足であり、たとえどのような攻撃を持って
しても彼女に攻撃を当てることが不可能な為、それはつまり倒せないと同義である。また、その超絶的速度から放たれる攻撃はいかなる防御や
壁すら打ち砕く攻撃となり、たとえ小石程度のものを足で跳ねたとしても弾丸以上の魔弾となり、対象を穿つであろう。

“サハラの頭脳”???
 ゴッドファイブ最後の一人にして詳細不明の謎の人物。この人物がどういった人物であったのかそれを知る者は少なく
同じゴッドファイブのアフラー、サマール達ですら、この人物に対して多くを語ろうとしない。
また噂によると、この人物こそが数年前に“伏羲(フッキ)”を招きいれ、サハラの殺害を謀殺しようとした黒幕であるとも囁かれている。
この人物が現在どこにいるのか、それすらも不明であり、この人物がいれば今のようなファミリー内の分裂が起こることはなかったかのような
言葉をヴァナートが呟く。この最後のゴッドファイブが再び姿を現す時、それはこのサハラファミリーが失った何かを取り戻す時であろう。


コンシリエーレ(参謀顧問)
 ゴッドファイブ(大幹部)とカポ・レジーム(幹部)との間に存在する特殊な役職の人物。
ファミリー内における内部抗争や問題を抑え、その仲介を行う人物であり、ファミリー内における侵攻や防衛の作戦なども考え提示する
事実上、ファミリー内の頭脳を司る役職。本来、このコンシリエーレと呼ばれる役職は数年前まで存在せず、これに値していたのが
ゴッドファイブの一人“サハラの頭脳”と呼ばれた人物であった。彼が行方をくらませて以来、その代わりとしてこの役職が必要となり
現在、このコンシリエーレにはカビール=ソウハと名乗る人物就いている。

“コンシリエーレ”カビール=ソウハ
 現在のファミリー内の頭脳を兼任するコンシリエーレ。スキンヘッドの食えない人物であり、過去の経緯が不明とされている人物。
時折、胡散臭い雰囲気を出す人物であるが、彼の頭脳と展開する作戦や解決策はかつての“サハラの頭脳”と呼ばれたゴッドファイブに
比類するほどであり、この為、多くのファミリーが彼の実力を信頼し、現在ではゴッドファイブに継ぐ信頼と権力を得ている。
しかし、その優秀すぎる能力と、少なからずある野心の為か、現在、ゴッドファイブのアフラー、ヴァナートに次いで、このカビールに組する一派も
存在し始め、何やら不穏な空気が流れているとの噂がある。


カポ・レジーム(幹部)
 ゴッドファイブの下に存在し、無数のファミリー達を纏める数人のメンバーからなる幹部。
彼らはそれぞれ広大なサハラ大陸の各地、ファミリーの本拠地“コーサ・ノストラ”以外の都市に住む孤児や難民、ファミリー達を
その都市で護り、管理している者達である。その多くがゴッドファイブからの指示に従い、外敵からの防衛や本拠地“コーサ・ノストラ”への集結
他の世界への侵攻などを行う重大な役割を有している。彼らの多くはシムーンで構成されているが中には外の世界で迫害を受け
その世界で受け入れられなかった種族や人物たちが、この地に流れ着き、サハラの温情にあり付き、この職を与えられた者もいる。

“カポ・レジーム”ヴィザラ

「この体で居たから、仲間も出来た。家族も出来た。私はこのシムーンである事を捨てたくない。私は、『私』のままで居たい」
 “カポ・レジーム(幹部)”の一人にしてサハラの信頼厚い肝っ玉姉さん。彼女は幼い頃、多くのシムーン同様に迫害を受け
行き場を失っていたところをサハラ率いるゴッドファイブのメンバーに拾われ以来、ファミリーに対して絶対の信頼と心を預けている。
一度、サハラが受けた重傷を癒すためにサマールと共にカナン大陸に渡り、そこにあると言われる癒しの至宝を求めファミリーを離れたが
その際に事情を知らずにいた多くの同胞から裏切り者扱いを受けるが、サハラの傷を癒せる結晶を手にした際、再びファミリー内に戻り
現在のところカナンとサハラ両陣営の諍いを沈静化させた立役者となる。
またこの時、共に亡命を行ったサマールはヴィザラに対してただの家族以上の信頼と感情を向ける事となるが
それをヴィザラがどう思っているかは現在のところ不明である。

“カポ・レジーム”アジス
「あー、ヴィザラ、この間は悪かったなぁ……いや、違うか、もっとこう自然に言わねぇとなぁ…」
 “カポ・レジーム(幹部)”の一人にしてチンピラ属性のあんちゃん。彼もまたシムーンとしての発症にかかり、実の家族からも捨てられ
このサハラファミリーに流れ着いた。普段は素行の悪いチンピラ風情な態度を取るが、家族に対しては厚い情を持っており、自分が治める都市に
おいてはよく子供達と戯れる姿を確認できる。同じ“カポ・レジーム(幹部)”の一人ヴィザラに対して実は淡い恋心を抱いていたが
その彼女がカナン大陸に渡った際に、誰よりも怒りを心頭させ自らソルジャーを率いてヴィザラ討伐へと向かった。
ヴィザラ帰還後、彼女に対して素直に詫びることが出来ず、現在もなお素っ気ない態度でごまかしつつ、いつか謝罪と共に自分の想いを伝えようと
密かに決意をみなぎらせている。


ソルジャー
 サハラ・ファミリーに存在する無数の兵達の総称である。彼らは皆、ファミリーの一員であり、自分たちの力で家族を守りたいと思い
外敵との戦いの際に馳せ参じるべく普段から訓練を重ねている者達である。彼らは皆、“カポ・レジーム(幹部)”達の命に従い行動を行い
その戦力と数はカナン、星蝕海に存在する兵と比べても見劣りしないほどである。
だが、彼らとの違いは、ファミリーとしての結束した絆であり信頼であり、彼らソルジャーひとりひとりの力以上に、彼らが持つ絆は
他のあらゆる勢力にも比類するものがないほどの強さを誇っている。

“剣を求めし者”ラナ

「な、なんですかいきなり可愛いとか似合わないこと言わないでくださいよお師様まったくもうやだそんな言葉どこで憶えたんですか」
 数年前にサハラ・ファミリーによって拾われた少女であり、現在はゴッドファイブの一人“サハラの右腕”と称されるアフラーより
直接の指導を受けているソルジャーである。アフラー曰く、彼女の潜在能力、特に剣に関する能力は自分に匹敵するものがあり、
それが開花した際には自分と互角かそれ以上にも到れると称する。しかし、若干物覚えが悪く、思考が偏りがちなため
イマイチ上達のスピードはよくない。それでも彼女自身の屈託無い直向な態度にアフラーも弟子というより妹のように可愛がり
このラナもまたアフラーを兄のように慕う。ある事件を切欠に行方不明となったアフラーを探す旅に出ることとなり、その旅で彼女は産まれた時から
自分の中に根付いていた本能、剣を求める声の正体、その“渇望”の根源に気づくこととなる――。
また最近、よくラッキースケベの被害に遭うとかなんとか。

“謎の聖賢(リシ)”リヒト

「フゥ…フゥ…何で…ここは砂しかないんですかぁ…足元が…不安定で…のあああああああ(と女性の胸に倒れ掛かる)」
 記憶を失いサハラの地を放浪していた謎の聖賢(リシ)。半年前の記憶がなく、自分が何者であったのか、そして何を為すべきなのか失った聖人。
彼が自身の事で理解している事は自らの額に埋まったカナン大陸における七秘宝の一つ“神水の涙”と呼ばれる癒しの秘宝であり
その力によって多くのシムーン達の傷や病を治療し、彼らに救いをもたらしていた。しかし、彼のその正体こそが後にサハラ・ファミリーに
大きな変化をもたらす事となる。また見た目や聖賢(リシ)としての言動の割に間の抜けたところがあり
ふとドジを踏むと近くにいた女性に被害があたるというラッキースケベ体質を持っている。


◆星蝕海

 遥か北方の海域を支配する“侵食”の理を有する第二星王レイルリンクが支配する世界の名称。
触れる者の全てのイデア、器を侵食し、蝕み、取り込んでいく無限に広がり続けていく世界。この星蝕海の中心にはそれを広げている
星王レイルが座す巨大な大陸城“星王殿アトランティス”が存在している。現在、この星蝕海による侵食は東源郷に存在する神々の力によって
侵攻の停止をしており、星王レイルは、自らの配下でもあるデミウルゴス達や己の勢力を用いて、カナン大陸の侵攻を掲げている。
彼ら星蝕海の目的とはカナン大陸の侵食支配であり、それは即ち、その大陸に存在する“安寧”の姫の“理”を奪うことにある。
しかし、実のところ、この目的とは星王レイルの本当の目的ではなく、それはあくまで彼が抱く最終目的の為の前振りに過ぎないとされる。
彼が本当に侵食支配し、この世から消し去りたいと考えているのは、そのカナン大陸と同盟を結んでいる浮遊大陸ベルシェルスであり
そこに存在するヴァーレンハイト王国の抹消にあるという。星王レイルが何故、ヴァーレンハイト王国に固執するのか、その詳細は不明ではあるが
彼はその為に、同盟大陸であるカナン大陸の抹消からはじめ、すでに己の勢力をベルシェルス大陸の一部分にまで広げているという。
また、星蝕海に存在するのは主に彼の眷属であるデミウルゴスと、星王の技術により作られたマシーナリー、サクリードチルドレンなどだが
彼ら星蝕海が持つ星機器の技術や、星宝と言った力に魅力されたごく一部の人間達が密かに手を結び、同盟を行っているとも囁かれる。


第二星王レイルリンク=イシュタル
 現在の星蝕海を統べる神にして“侵食”の第四階位を持つ人神(アダムカドモン)。
世界略奪を可能とする階位の神であり、彼と対峙した者はその時点で彼の侵食に侵され、その存在を奪われる。
その姿は黄金の神とも言われる絶世の美青年であるが、彼の心の内に渦巻く、他世界への憎悪は常軌を逸している。
彼のその目的は明確なものであり、即ち自らの理に従った他の世界への侵食。その手初めてして“安寧”のカナン大陸に対する侵攻を行う。
当初はあと一歩で大陸を包み込み、そこを統べる“姫”の理を喰らう事が出来たのだが、東源郷に存在する神々の干渉により
自らの星蝕海へと帰還を余儀なくされ、現在は彼が持つ“侵食”の理も停滞し、星蝕海そのものも停止を行っている。
東源郷の神々により、自由に身動きが取れない状態となっているが、カナン大陸に対する侵食は諦めておらず
現在も“オグドアス・オクトバ(栄光の八座)”や“プロパテール・テトラクテュス(至高の四座)”らを使った計画を遂行している。
また、彼の本来の目的はカナン大陸ではなく、その同盟大陸たるベルシェルスであり、ヴァーレンハイトに対する何らかの執着や
恨みがあるように感じられる。その為か彼は時折、カナンとベルシェルスに対して激しい憎悪と同時に深い絶望と哀しみの心を見せる。


デミウルゴスの階位
 星王の眷属たるデミウルゴスには三種(正確には四種)の階位からなる種別が存在し、生まれたその瞬間にどの種別のデミウルゴスとして
誕生するかによって後の人生やその能力の高さ、果ては星宝のランクなどすら決定するという。
通常、PLが扱えるデミウルゴスのランクはデカス(漆黒)種からオグドアス(真紅)種までである。

漆黒(デカス)種
 いわゆる一般的なデミウルゴスであり、その能力も星宝も常人よりも上という程度であり、熟練した戦士や人間であれば、太刀打ちできる
レベルであり、事実上デミウルゴスにおける最下級のランク。しかし、それでも常人よりも高い能力と生まれついており星宝を有しているという
事実は一般の者達には脅威の対象であり、このデカス種はアトランティスに無数に存在し、それら全てがカナン大陸に対する攻勢を行えば
それだけでも未曾有の危機となるであろう。

真紅(オグドアス)種
 デミウルゴスにおける代表的なランクの種別。人間を遥かに越えた能力と力、そして人知を超越する星宝を有し、まさに現在の世界において
最も身近危機の代表として上げられる種。その力もオグドアスにおいてはピンからキリまで存在し、強大なオグドアスになれば文字通り
一人で世界への侵攻を可能とするほどであり、そうしたオグドアス種の中でも選りすぐりの八人には“オクトバ(八座)”と呼ばれる座のb与えられ
彼ら“オグドアス・オクトバ(栄光の八座)”によってオグドアス種は統治されている。

純白(プロパテール)種
 全てのデミウルゴスの中で事実上の頂点。あらゆる能力に長け、その力は神である星王に次ぐ力を有し、彼らプロパテールが生まれつき有する
星宝のランクは皆全て例外なく規格外のSランクを有する為に、全てのデミウルゴスの象徴たる種別。
しかしこの為、この純白たるプロパテール種が生まれるのは極めて稀であり、それこそ歴史上数える程でしかない。
現在、星王陣営にあってこのプロパテール種に該当する者もたったの四名のみであり、彼らには“テトラクテュス(四座)”と言われる文字通り
神の四方を支える四座のb与えられており、彼らは直接神の命を受け、自らの意志や命令をオグドアス率いるデカス達へ告げることが許される。

黄金(ザラスシュトラ)種
 すでに存在することが無く、また未来においても生まれるかどうかも一切不明のデミウルゴスにおける究極の種別。
この黄金種たるザラスシュトラは星王の眷属たるデミウルゴスでありながら、すでに神に匹敵する能力を持ち、それも理の階位で表すなら
第五〜第八階位の大陸創生規模以上の実力を持ち、第四階位の理にすら比類する能力を持つとまで言われる種別。
この為、理を有する人神であろうとも、この黄金種と争うことになれば、世界を失う自体もあるという。
この黄金種たるザラスシュトラ種に該当するのは後にも先にも歴史上たった一名であり、それこそが初代星王イシュタルを滅ぼし
自ら神となった黄金のデミウルゴス・アケルナルのみである。

オグドアス・オクトバ(栄光の八座)
 オグドアスの中でも選ばれた八人のみが冠する事を許された栄光の八座にしてaiナンバー)。
それこそがこの“オグドアス・オクトバ(栄光の八座)”である。このオクトバに座すデミウルゴスの一人として人知を超えぬ能力の者はなく
その力、身体能力、そして星宝においても一人で他の世界への侵攻が可能な程の実力者である。
また、彼らそれぞれに宿っている称号、概念は彼らの行動基準、または能力や星宝を意味する物であり、bェ上位の者であればあるほど
それはそのままオクトバにおける実力や能力の高さを示す事となる。

第一座“深淵(ビュトス)”
 未だ一切不明とされているオグドアス・オクトバの一人。

第二座“思念(エンノイア)”
 未だ一切不明とされているオグドアス・オクトバの一人。

第三座“精神(ヌース)”アテルイ=ドウジ

「…おたく…そんなんじゃ俺には届かないよ…俺の目指してる場所にでも行き着かない限り…俺は永遠に越えられないよ…」
 カナン大陸にて伝説とされる鬼族の変異種ドウジの一人。かつてシュテン=ドウジと共に高みを目指し“さとり”に至る為の道を模索していたが
ある事件が切欠となり、シュテン=ドウジの下を離れ、独自にさとりへと至る道を探し始める。
その結果として、星蝕海へと渡りデミウルゴスとしての進化を行い、ドウジとしての力にデミウルゴスとして能力を上乗せし
“オグドアス・オクトバ(栄光の八座)”の第三座の地位を与えられる。彼が有する星宝能力は現在まで一切不明とされ、
彼自身、自分の星宝能力が己のキャパシティを上回るものである為、制御しきれる自信がなく滅多なことでは使用を拒否するほどである。
一説にはその能力は擬似的なさとり領域の力とも言われる。また多くのデミウルゴス(プロパテール、オグドアス含み)が星王レイルに忠誠を誓い
彼の為にその行動を第一とするのに対して、このアテルイだけは独立独歩を貫き、状況によっては星王の命よりも自身の意志を尊重する。
無論、そのような背信に近い行為に対して多くのデミウルゴスは反感を抱いているが、プロパテールも星王すらも、そんなアテルイの行動を
尊重し、見ようによってはそのあり方に敬意すら払っているように思われる。ある意味で、心を失ったデミウルゴス達の中で確かな“我”を持つ
このアテルイこそが“さとり”に最も近い場所にいるデミウルゴス(ドウジ)なのかもしれない。
また彼はかつての友であったシュテンや弟分として共に過ごしていたラッカに対して、僅かながらの情を寄せており
それは今でもアテルイの中で強い感情として残っており、それこそが彼が最後に持っている人しての情であり、弱点でもある。
また第五琉球隊士オウイ・リュウセの友を殺害した人物でもあり、リュウセとは数奇な因縁を抱えている。

第四座“真理(アレーテイア)”
 未だ一切不明とされているオグドアス・オクトバの一人。

第五座“思想(ミトス)”アルビレオ
「何も分かっていないのはてめぇらだよ。あいつの嘆きを理解出来るのはこの世でただ一人、オレだけなんだよ」
 プロパテール、オグドアス、デカスと全てのデミウルゴス中で最も最古の時から第二星王レイルリンク=イシュタルに仕え、最も彼の信頼厚い
星王の兄とまで呼ばれる人物。普段はとらえどころのない、奔放とした最も人間らしいデミウルゴスであり、自らの神であるレイルに対し
自由に面会を行い、その姿勢は主従と言うよりも対等な友人といった感覚で常にくだけた口調で彼と対話を行う。
アテルイとは違った意味で独立した一面を持っている。しかし、彼の星王に対する忠義は何者にも換え難い尊いもので、彼のためなら
己の命すら顧みずその使命を全うする。それはもはや献身や自己犠牲以上の彼の存在意義そのものといってもいいほどである。
一説には彼はかつて人間であった頃の第二星王レイルリンクと幼少の頃からの幼馴染と噂されている。

第六座“生命(ゾーエー)”
 未だ一切不明とされているオグドアス・オクトバの一人。

第七座“原人(アントロポス)”ミカゲ=スバル

「そうだ…これが感情、僕は確かに感じている、喜びを、貴方と剣を交えられる歓喜を!」
 かつてカナン大陸において“剣鬼”として恐れられたオオタケ=ドウジの息子にして、その父を殺めた少年。
その正体は生まれながらのデミウルゴスであり、彼が生まれながらに宿していたのは剣としての星宝であり感情。
それに気づいたこのミカゲは、カナン大陸屈指の剣姫と称されるカグヤ一族の姫御前アカネと剣舞合戦と呼ばれる大会にて剣を交える事により
己が持つ心の正体に気づく。それ以後は、オクトバの一人アルビレオの誘いを受け星蝕海側へと渡り、いつか再び自分に剣を交える喜びと
感情を教えてくれたアカネと戦い合うために身をおいている。
星蝕海においては悟りへ至る為に必要なパーツ、鍵の一人であると言われており、この為、プロパテール第四座キヨヒメと共に
必要不可欠な人材として扱われている。

第八座“神の国(エクレシア)”べネトナシュ

「デミウルゴスの矜持を教えてやろう。それはデミウルゴスたる事に誇りを抱き、その為に死ねる者達のことだ」
 かつての初代星王イシュタルに仕え忠節を誓ったデミウルゴスという種を代表するような人物。彼は自らがデミウルゴスである事に誇りを持ち
それ故に、デミウルゴスが支配する世界の到来を望んでいたが、自らの神がアケルナルに殺害されていたと知り、彼は神に対する忠誠を
果たすために、あえて彼の陣営に入り、その配下となり一矢を報いる好機を狙い続けていた。
己ではアケルナルに届かない事を知っていた彼は、アケルナルを倒せる可能性のある者を捜し求め、その果てにクフィルと言うかつての
神の機関を滅ぼした英雄に可能性を見出し、彼らとアケルナルが対峙する為の舞台を整え、自らはアケルナルの星宝により次元の彼方へと
消失したかに見えた。だが、彼は遥か未来である、この時代に飛ばされ、そこで星王と同じ“理”を有する第二星王にその命を救われ
彼の為に今度こそ、神への忠誠を尽くし命を捧げると誓い、オクトバ第八の座を与えられる。
彼が有する星宝は二つ存在し一つが彼自身が持つ“神の瞳(デウス・サイクロプス)”であり、もう一つが座の称号を関する“神の国の門(エクレシア・
ゲート)”である。この星宝の門は第二星王レイルから与えられた星宝であり、その効果は次元を飛び越え、星王殿アトランティス深部と繋がり
そこに存在する他のオクトバ、プロパテール・テトラクテュス、更には星王すらも転送可能とする、あらゆる世界を飛び越え侵略を可能とする
最終戦略兵器。しかし、現在は東源郷に存在する神々の力により封じられ、彼による最終軍勢の侵攻は行えずにいる。

プロパテール・テトラクテュス(至高の四座)
 現在、星王陣営にて存在する最高位のデミウルゴス・プロパーテル四人に与えられた称号にして至高の座。
それぞれが神の側近として過不足ない実力と能力を兼ね備えており、彼ら全員、星蝕海やカナン大陸のみならず、全ての世界において
その名を知られ、一目置かれる存在として名を馳せている。彼らそれぞれに与えられた座の称号はオクトバと同様に、彼らそれぞれの役割
概念、能力などを表すものである。

第一座“充満(プレーローマ)”アルクトゥルス
 至高の四座、純白のプロパテールの頂点にして星王の右腕として全てのデミウルゴス達を統括する統率者。
髪の色から全てに至るまで穢れなき白き純白のプラチナに覆われたその荘厳なる姿は見る者の心すら奪い去り、まともに対峙しただけで
死に至るほどの重圧の魂を放つ別次元のデミウルゴス。
その性格は常に落ち着き払い、相手の深層心理まで見抜くかのような言動はデミウルゴス特有の傲慢さすらも持ち合わせず
まさに全てにおいて完全たりえる存在。無論、星王に対する忠義も確かなものであり、その為の行動を第一としているが
時としてカナンやベルシェルス大陸に住む者達の成長を促すような言動も見て取れる。

第二座“真智(グノーシス)”
 未だ一切不明とされているプロパテール・テトラクテュスの一人。

第三座“幸運(テュケー)”サダクビア
「全ての運命も確率も幸運も我が掌にある。お前達に俺を斃す可能性は――0だ」
 絶対の幸運とあらゆる運命の確率を支配する能力を有するプロパテール。彼が有する二つのSランク星宝は数ある星宝の中でも郡を抜くほどに
優秀なものであり、一つでも強大無比な力を誇るそれを二つ同時に有する彼はまさに鉄壁のプロパテールと言える。
自身に対して絶対無比の幸運の加護を与える【絶対幸運(フォーチュン・フェイト)】。
そして、自身の範囲内に存在するあらゆる生命・現象の確率、運命を支配し操作する 【運命支配(フェイト・ドミニオン)】。
プロパテールとして過不足ない実力を持ち、更にこの攻略困難な二つの星宝を同時に操作する彼を前に、その勝算も未だ糸口も見えずにいる。

第四座“智慧(ソフィア)”キヨヒメ

「…今、変なこと考えたでしょ。えっち、すけべ、変態」
 般若と呼ばれる能面を纏った謎の少女。その正体こそプロパテール・テトラクテュスの一人、第四座“智慧(ソフィア)”のキヨヒメである。
彼女は智慧、即ち“さとり”へと至る道を模索し探求している人物であり、その為に星蝕海のデミウルゴスにおいて、唯一外の世界を
自由に行き来し、旅を行う事を許された人物。彼女が探求行っている“さとり”への道こそが、デミウルゴスの新たなる進化の可能性であり
星蝕海における新たなる変化、変動を可能とする唯一の人材と去れている。
本人もその事を自覚しているのか謎だが、さとりへ至りたいという想いは本物であり、その為にアズマと共にさとりへの道を探求し続けている。
また彼女は不完全ながらもさとりへの第一歩を踏み出している人物でもあり、その能力として他者の心を読む“覚(さとり)”の力を有している。


星宝(アステリア)
 星宝(アステリア)とは全てのデミウルゴス達が有する固有の能力であり、力、武器である。
彼らデミウルゴス達には“心”と呼べるものが存在しない。空虚であり、空白、感情や明確な意識と言うものが薄く、その原因の一つが星蝕による
剥奪によるものがあるが、彼らの心が空白なのは、この星宝こそが、彼らから零れ落ちた空白の心、その結晶だからである。
かつて、彼らが星蝕の洗礼を受け、デミウルゴスとなる前、いわゆる人間であった頃、当然の事ながら、彼らには感情や意志、強い願望などが
存在した。だが、星蝕による洗礼を受けた際に、そうした装飾が剥がれそうになり、その中で彼らは無意識の内に、そうした感情や意志
願望などを残したい、叶えたいと強く念じた。そうした彼らの想いから零れ落ち、具現化した結晶が“星宝(アステリア)”である。
ある者は無数の感情を抱きそれを残したいと願った故に、その無数の感情は無数の剣となり、その者の星宝として残され、ある者は激しい激情を
秘めたままデミウルゴスへと昇華され、その激しい激情は全てを包み込む炎となり、その者の星宝として宿った。
つまり、デミウルゴスに取っての星宝とは、かつて彼らが心の底で強く願った願望が形となった物であり彼らが失った心そのものである。
皮肉なことに、この事実を知る者は一人も存在せず、強大な星宝になればなるほど、それは失った心が大きいと言う証であり、彼らが己の武器
道具としてしか認識していない星宝こそが、かつて失った己の心であるというのは全く皮肉としか言いようがない。
また、多くの星宝は持ち主であるデミウルゴスが死んだ後でも形として、その場に残る事が多い。そうした星宝は、かつて彼らが抱いた願望や
心など、近しい者と同調し、扱う事が可能となる。死後も心を探し求め、残したいと願った彼らの想いは確かな形として世界に残る事となっている。
またデミウルゴス以外が星宝を持つ例として、デュナミス層以上のイデアを持つ者であれば、自らのそうした心や魂を星宝として具現化する事が
可能であるが、それを行う事が出来る人物は極めて稀であり、歴史上数えるほどしか存在していない。※20


◆地獄

 新世界となったエスペランサーセイバーの世界において、死後という概念は長らく謎に包まれていた。
というのも旧世界観では“永劫”の理によって、その世界で死した者の魂は死後、イデア(魂)の海と呼ばれる場所に回帰し
そこで無限回帰の法則に従って、再び世界へと新たな魂として利用されていく。
しかし、現在の新世界においてはその“永劫”の理は消失しており、死後魂がどこへ向かうのか謎とされていたが、ここに一つの定説が生まれた。
本来、死後、肉体より放たれた魂が向かうべき場所は無空間(フェムトー)と呼ばれる原初の空間であり、そこで魂はフェムトーと一つとなり
無限の時を生き続けるのが正しい法則であるのだが、現在の新世界ではそれとも、旧世界とも異なる明確な死後の世界が存在している。
それこそが――“地獄”と呼ばれる死後の世界である。
新世界で死した魂は死後、地獄と呼ばれる新世界の裏側の世界へと誘われ、そこでその者に相応しい地獄へと落とされ
そこでの苦行または地獄の神より解放されることにより、改めて魂は無空間(フェムトー)へと向かう。
しかしながら、地獄の苦行に耐え切れずそのまま消滅する魂や、そこを統べる神に見初められ永劫囚われる魂、果てには
自らその地獄に留まる魂まで存在し、死後における理は旧世界以上に悲惨な状態ともなっている。
本来、このような地獄とされる死後の世界が明確に存在する世界は極めて稀であり、稀有な事例であるが、新世界において
この地獄と呼ばれる世界があるのはそれを生むに足る理が存在した為でもある。

常世
 詳細不明。一説にはこの理こそが地獄と呼ばれる世界を生み出した元凶であり、
この理が完成すると同時に現世の世界は死後の世界として生まれ変わるとされている。

七道地獄
 死後の世界にて存在する七つの地獄の名称。それぞれ浄土道、奈落道、修羅道、餓鬼道、畜生道、煉獄道、魔縁道と七つの地獄が存在する。
それぞれの地獄には名を現すような特徴や世界が広がっており、生前の行いや、本人の魂の性質に左右され、その者が落ちるに
相応しい地獄へと向かう。

浄土道
 一切の穢れや罪を許さず、ただ清浄であり、安らかであるべき者達が落とされる世界。
ここでは生前、穢れ無き行動を行った者やさとりに至った者が落ちる世界であり、その為、七つの地獄の中で最も美しく清らかで穢れの一片もない
まさに浄土の世界であるとされる。しかし、その反面、この世界に落ちた者が人としての欲望や業深い行いをした際、その者の魂一片までも
浄化され、跡形も無く消滅する。一切の穢れを認めない世界ゆえに、僅かな穢れを見せればその瞬間に弁明の余地無く消されるこの世界は
紛れもない地獄の一つであり、七つの地獄の中で最も管理、束縛が行き届いた世界であり、この世界に落ちた魂や住民たちに
自由と呼ばれる概念は一切存在しない。

プラスティヤ

理:浄土  階位:第三階位
「恐れる事はありません、貴方方の魂全てを私が浄化してさしあげましょう」
 浄土道を統べる神にして“浄土”の理を持つ神。その清廉潔白であり、純白の如き優しい微笑を浮かべた姿とは対照的に
彼は人の原罪や穢れを一切認めず、理解を示さず、ただ純度をそぎ落とす異物としてしか認識しておらず、彼に取って
現世のカナン大陸やサハラ大陸、その他全ての大陸も自らが浄化しなければならない穢れた地としてしか認識していない。
その為、彼は慈悲と言う感情の欠片も残っておらず、あらゆる意味で清浄で清らかであるべきという理を具現化した
まさに浄土の地獄そのものである。

奈落道
 七つの地獄の中で、最も欲望深く、業深い者が落とされる世界であり、ある意味で最も地獄らしい地獄を体現した世界とも言える。
この為、この奈落道の世界の広さは七道地獄の中でも随一であり、罪深い魂に与える苦行も、しがらみも最も多く存在するとされる。
またこの奈落道の世界自体がいくつかの層に別れており、罪が深い者ほど深部へと送られ、魂の解放もそれに伴い束縛される。

修羅道
 生前、戦いに飢え常に戦い続けた英雄、戦士、蛮勇達が落ちるべき末路であり、七つの地獄の中で最も武勇を誇る世界。
そこは常に争いが絶えない世界であり、常に闘いあう事が日常として許された世界であり、この世界で死してもすでに魂となっているその身は
死ぬことは無く、望めば永劫の殺し合いを行える英雄達の理想郷。
最も血生臭い地獄であるべきこの世界ではあるが、戦いを望まなくなった魂は即座に開放されるという七つの地獄において
最も解放を自由としている世界であり、同時にここに落ちた多くの者達が自らの意志で残る世界ともされている。
それはかつての新世界において存在した英雄達と戦い合うという理想郷ゆえか、それともここを統べる神のカリスマによるものかは謎である。

餓鬼道
 常に飢え、枯渇し、渇望し続ける無限の飢餓の世界。ここに落ちる者達の特徴とは常に現在の自分の地位や立場に納得せず
他の何かを求め、餓え続けていた魂の放浪者であり、それに相応しく、この地に落ちた者達が辿り着く末路も永劫に餓え続けるという地獄である。
この世界の落ちた者たちは常に何かに飢え、それは心であり、空腹であり、感情であり、目的であり、全てが空のように餓え続ける。
この為、七つの地獄の中でこの餓鬼道こそが最も魂が解放されない世界であり、ここを統べる神もそれに相応しく
自らの世界に落ちてくる魂を全て塵屑として放置しており、永劫に餓え続ける姿勢こそが自分の世界に相応しいと確信している。

アンギス

理:餓鬼  階位:第五階位
「お前たち餓鬼共が、僕の理から零れ落ちた分際で、何を勝手に満たされて満足しようなんてしているんだよ」
 永劫、枯渇し餓え続ける餓鬼道を統べる神。その性質も魂も同様に永劫満たされない飢えの魂で出来ているが、彼はその状態こそが
当然であり、満たされるということは彼が最も嫌悪し忌避すべき現象。
永劫満たされないが故に、彼は一度自分が掴んだ魂を決して逃がさず離さない。故に彼に目をつけられ、この地獄に落ちたが最後
未来永劫に飢え続ける死後の地獄を延々と味わい続けることとなる。
また彼、餓鬼道たるアンギスと“枯渇”のサハラにはある因縁が存在し、それゆえにこのアンギスは誰よりもサハラを憎み執着しているとされるが
その真実と理由は現状では一切謎である。

畜生道
 七つの地獄の中で最も自由を与えられた世界であり、己の好きなように欲望を解放できるこの場所は人によっては最も楽園へと
変わる世界とされている。あらゆる装飾や礼や法をなくし、ただ在るがまま、生まれたままの本能を解放するように命じられたこの世界は
あらゆる罪や欲が許された世界であり、文字通り人が獣のように自由に生きる世界である。
この為、修羅道についでこの世界に落ちた魂たちの多くが自らこの世界に留まり、生前許されなかった自らの本性、本能の発露を行い
人々の所業によって地獄へと変貌していく世界。ここを治める神もまた、この地獄同様に人の罪や欲、本能の全てを許しており
むしろ、それを愛で愛している節があり、彼こそが七つの地獄の中で最も人の魂を受け入れ愛する神である。

ガウタマ

理:畜生  階位:第四階位
「原罪、穢れ、本能。上等じゃないか、俺は人間性の全てを愛している。奴らの業を包んでやろう」
 畜生道を統べる神。本来、地獄を統べる神でありながら、人としての振る舞いや衣装を好み、それに相応しい非常に軽薄な性格をしており
人間性をまるで持ち得ない地獄の神の中で彼こそが最も人間に近い神である。
地獄の現世における具現化に関しても彼が最も早くそれを為しえ、今もなお自分の世界が展開することを切に望んでいる。
だがそれは自分の世界による支配を望むのではなく、むしろ人々が自分の世界によって隠された本能、さらせなかった魂の奥を開放できるよう
彼なりの人間のあるべき姿を実現させるために、行っている行為である。

煉獄道
 七つの地獄の中で、最も罪が軽くされど浄土には至れない者が落ちる世界であり、言うなれば地獄にも天国にも行けぬ半端者が落ちる世界。
ここでは生前の己の行いや罪を知り、それを清め新たなる始まりを得る為にその身に浄化の苦しみを受ける世界であり、七つの地獄の中で
最も救済の地として機能を果たしている世界である。別名「浄罪界」とされ、最も多くの魂が行き交う世界とされる。
また、この煉獄道には黙示録の理によって犠牲となった者、それに身を捧げた者も落とされる世界であり、一説には黙示録の理と対となる
深い関わりを持った理の世界(地獄)であるとされているが、詳細は不明である。

魔縁道
 七つの地獄の中で最も禁断とされる世界であり、ここに落とされる者は上記六つの世界いずれにも適さず、救済不可能な外道の魂が落ちる
最終地獄とも呼ばれる世界である。この世界に落ちた魂が行き着く先はただ一つ、消滅である。
それも完膚なきまでに欠片も残さない消滅であり、これにより無空間(フェムトー)へと回帰する事も、他の地獄のように
この場所に留まり続ける事も出来ない。あらゆる意味でこの地獄には救いが無く、そこに落ちる魂も同様に一切の救いも慈悲も許しも行えない。
七つの地獄の中で最も禁忌とされるこの地獄と、そこを統べる神は同じ七道地獄の中でも最も忌避されている。


エスペランサーセイバーの物語

世界を繋げる者編
 星王暦3年、全ての物語が始まる前に語られた誰も知ることのないある英雄の物語にして、決して忘れられる事のない
新世界の到来を告げた一人の人神の物語。英雄ヴァーミリオンと当時、機関に所属していたミシュラ、全く関わりのないはずの二人が
後にある因果律と共に大きく関係することとなる。英雄ヴァーミリオンは自らの世界であり、自らの大切な存在でもある妹を護る為に
全てを投げうち戦い続けていた人類最後の英雄。その英雄の死と同時に“理”を持つ存在“守護”のガディムが生誕する。
そうして彼は新世界を築くこととなる“ある少女”と出会い、彼女の世界を護る為に自らの“守護”の理を発動させ、イシュタルの“侵食”より
新世界を護り抜くこととなる。この彼の行動が後の新世界到来にまで影響し、この誰にも知られざる物語こそが
真のエスペランサーセイバー開幕の物語を告げることとなった。

星の伝承記Memory of Isthar編
 星王暦198年、星の伝承記が始まる2年前に起こっていた出来事にして、後の世を大きく変える事となる運命の物語。
エトワール機関に所属する落ちこぼれのデミウルゴス・ミシュラが新しく機関に所属することとなったカストル、そしてポルクスとの出会いを切欠に
何故、神がこの世界に降り立ったのか、何故、星蝕による世界の統一が必要なのか、そしてそもそも“神”とは何であるのかと
全てが謎に包まれていた事実が明らかとなるエスペランサーセイバーの根幹を示した物語。
またこの物語の中で星王イシュタルの崩御と、新たなる神アケルナルの誕生が語られる事となる。

星の伝承記編
 星王暦200年および新世界暦0年にて起った星の歴史の終わりと新世界開幕の物語。
ヴァーレンハイト王国の王子クフィルとその親友レイル、帝国の少女アスタロトとかつての第一次星蝕戦役にて活躍をした伝説のマシーナリー
ライラ・マウアー。彼らによる出会いと冒険の物語であり、その中で彼らは自分達の世界を支配する星王イシュタルとそれにより作られた
星の機関、エトワール機関との戦いを始める。だが、その戦いの果てに真に倒すべき敵が星王イシュタルを討ち取った
新世界の神アケルナルであり、この世界がすでに滅び行く事実を突きつけられる。
全ての真実を知り、彼らは自分達の世界の新たなる可能性、新世界を信じて、アケルナルとの死闘の末に、旧世界の終わりを見届け
現在の新世界エル=ファルスの誕生を果たし、歴史に新たなる物語を刻むこととなる。

新世界の理編
 新世界暦1年、新たなる世界にて生じた波紋。謎の少女エルの到来と共に揺れうごめく新世界カナン大陸と浮遊大陸ベルシェルス。
二つの世界を代表する人物、クフィルとキリクが出会い、協力の果てに彼らは一年前に自分達が置いてきた存在、文字通り旧世界最後の残滓と
対峙し、それを見送ることにより、彼らは改めて自らの選択、旧世界の終わりと新世界を導く重要さを知る事となる。

東源郷の世界編(カナン編)
 新世界暦313年、事実上エスペランサーセイバーにおける新世界編の正規シナリオ。
“安寧”を司るカナン大陸にて起きた未曾有の危機、即ち北の星蝕海と南のサハラ。前後を挟撃される形となり、もはや絶体絶命となった
カナン大陸に起きた新たなる異変、それは第三の新世界“東源郷”の到来。この東源郷から来訪してきた人物メイチェ・シーショウと
サハラの理を受け眷族たるシムーンとなったヴァナート、そしてカナン大陸を護る為に立ち上がった人物ウィルフリックらによる
新たなる世界の跳躍を決める物語。ウィル、シーショウらの東源郷の神々に対する同盟協定の成立により、以後、東源郷は外の世界との
干渉を持ち、その加護に護られ、またヴァナートもサハラに対し“家族”という概念のきっかけを与え、以後、サハラ陣営におけるファミリーの
結成へと繋がる。

黄金の山の鬼編(カナン編)
 新世界暦315年、カナン大陸に伝説として伝わる鬼族(キゾク)達の変異種であり、上位存在と言われる伝説の存在“童子(ドウジ)”。
その伝説のドウジたるシュテン=ドウジがカナンの聖地の一つ“アスムィウタキ(黄金の山)”にて、その存在を確認される。
琉球十五隊士の一人たるオウイ=リュウセと、東源郷よりカナンに追放された少年アズマ、そしてヴァーレンハイトの宰相ジリアンらは
その血で伝説の鬼とされるシュテン=ドウジと邂逅し、“さとり”と呼ばれる人が行き着く究極の境地、理の領域の存在を知る。
また、星蝕海に存在する“オグドアス・オクトバ(栄光の八座)”の一人、シュテンと同じくさとりへの道を目指す
アテルイ=ドウジとの戦いが繰り広げられた。

神水の泉の涙編(サハラ編)
 新世界暦316年。サハラファミリーの一人、最硬の左腕と称されるサハラ=サマールと彼に追従する一人の少女の物語。
血の絆よりも尊く重いファミリーを裏切り、カナン大陸の“スイグスク(十嶽の城)”へと亡命したサマールとヴィザラの選択。
それはサハラファミリーにおける憎悪と矛先を向ける所業であったが、しかしその裏に隠された真実をサマールとゲイル以外は知らなかった。
サハラ、そしてカナンにおける真実の敵。新世界の裏に潜むその勢力の影が今、この物語を起点としてゆっくりとその姿を現していく。
それはやがて“地獄”と呼ばれる“常世”勢力の胎動の始まり…。

陰陽の五国編(東源郷編)
 新世界暦317年、東源郷の地にて起こった“金”を統べる大国・明による東源郷全土を巻き込んだ戦記の物語。
明によって滅ぼされた燕の国の生き残り、彼と共に歩む者達による明国とのかつてない激戦と争い。そして明を統べる帝・太帝が抱く真の目的と
その目的成就の際に知らされる、この世界に存在する知られざる理の掟と、新世界を揺るがす脅威の正体。
そして“陰陽”の“伏羲(フッキ)”が抱く想いの真実とは――。

第一の黙示録編(ベルシェルス編)
 新世界暦317年。ベルシェルス大陸にて強国の一つとされるエルザード帝国が誇る律法機関トーラの暗躍に伴い、各地で広がる聖戦を自称した
狂信者達による暴動。この時点では誰もがそれを軽視しており、その先の起こる出来事をまるで理解していなかった。
そう、ただ一人エルザードの現皇帝ヨシュアを除いては。ヨシュアと彼の親衛隊でもあるラルカンシエルによる黙示録の根絶。
しかし、すでに時遅く、ヨハネスによる第一の黙示録が実行され、彼の理の分身たる不滅の黙示録の騎士が生誕。
ここにベルシェルス大陸におけるかつてない脅威と完成させてはならない共通の敵の存在が明確化される事となる。

争の鬨編(東源郷編)
 新世界暦318年。長き眠りから遂に復活を果たした百八の魔星と彼らを統べる伏魔五凶神の復活。
しかし、いまだ東源郷の世界には伏魔・魔星達による大規模な侵攻は行なわれず不気味な沈黙が漂っていた。
そんな東源郷の地に帰還を果たしたフッキの分け身シーショウ。彼の前に現れるのはかつてそのフッキを相手に争いを果たした魔星ハオ。
時を同じく、明に存在するフェイの下に一人の使者が現れる。彼こそが全ての魔星の中でも最も悪名高い“謀”の理を持つ魔星ルオシー。
その彼から告げられた意外な申し出が後にこの東源郷全土の運命を大きく変える選択となる。

剣の求めしもの編(サハラ編)
 新世界暦318年。サハラファミリーの現在の筆頭でもあるサハラ=アフラーの秘めた情と想いの真実。
ある事件により記憶を失ったアフラーとそんな彼と出会った者達の物語。また、サハラ・カナン大陸の裏に潜む地獄の影が垣間見え
彼らを陥れるべく星蝕海よりの魔の手すら伸びる、各勢力の思想が混じり合うかつてない激戦の幕間。

渇望の理編(サハラ編)
 新世界暦319年。サハラ大陸におけるある異変の始まり。枯渇の理と類する新たなる理の産声。
しかしそれはある存在を排除するためだけに生み出された道具の如き存在であり、その者に意志はなく、思考も、自由も許されない。
そんな定められた人物の運命を変えるためにサハラファミリー最後の一人、ラーニがその人物と出会い、予定された未来を変えるべく
理の運命を覆す物語がここに示される。

砂漠の家族編(サハラ編)
 新世界暦320年。サハラ大陸における“ファミリー”の終焉の物語。サハラの右腕と称されるアフラーによるカナンへの大規模侵攻。
カナン大陸とサハラ大陸に生じたかつてない殲滅戦、それはまさに地獄と呼べる戦の実現。
時を同じくサハラの左腕と称されたサマールが長い年月自らに課していたある決意を実行に移し、それはサハラファミリーに大きな変化を与える。
そして全てのシムーン達の背後に存在した枯渇と渇望の黒幕、餓鬼を支配する神が姿を現す時、新世界における一つの世界の歴史が幕を閉じる。

地獄編・餓鬼道(サハラ編)
 新世界暦320年。七道地獄・餓鬼道の降臨と同時にサハラファミリーの壊滅とカナン大陸への地獄顕現が行われる。
サハラファミリーの信念を受け継いだ者達が全ての元凶・餓鬼道へと挑み、そしてまた枯渇のサハラも自らの理からの脱却に一つの答えを得る。
新世界における地獄編の第一幕の終焉。

地獄編・煉獄道(ベルシェルス編)
 新世界暦323年。ヨハネスによる黙示録の遂行と不滅の黙示録の騎士達を倒す為の唯一の手段の解明。
それは煉獄と呼ばれる黙示録に記された地獄に解決の糸口があった。今、新世界において初めて、生身のまま
地獄へと落とされる者達の物語が始まる。

星の絆編(星蝕海編)
 新世界暦324年。星王レイルが統治する星蝕海とカナン・ベルシェルス大陸との第三次星蝕戦役の勃発。
さとりの領域へと駆け上るために星王レイルが下したある決断。それが行われた時、彼は“侵食”と呼ばれる理より解脱し新たなる理を手にする。

地獄編・浄土道(星蝕海編)
 新世界暦325年。浄土道の完成と共に現世へと降臨する浄土の世界。それは星蝕海すら飲み込み、新世界を統一するが如き神の国の降臨。
時を同じく、ベルシェルス大陸においても新天新地の理が完成し、東源郷にて最後の伏魔・桓因(ファニン)の降臨。
今、新世界において、全ての世界は余す事無く滅亡と終焉の物語を刻まれようとしていた。

新天新地編(ベルシェルス編)
 新世界暦325年。“黙示録”を統べるヨハネスの理の完成と同時に、黙示録の成就が果たされ、ヨハネスによる新天新地の到来。
理を持たぬ世界ベルシェルスはヨハネスの理によって塗り替えられ、支配される。全ては穢れた民を一掃し、浄土と呼ばれる楽園の具現化。
時を同じく、カナン大陸・星蝕海においても浄土道の世界が現れ、東源郷にて最後の伏魔・桓因(ファニン)の降臨。
今、新世界において、全ての世界は余す事無く滅亡と終焉の物語を刻まれようとしていた。

顕世の楽園編
 新世界暦399年、カナンを統治する姫がその本来の理、世界創生の第二階位“顕世”へと至った事により、生じた新世界の激動編。
姫の真なる理、第二階位“顕世”の覚醒と共に、それと相反する同第二階位の理“常世”を持つ人神の降臨。
これにより新世界における均衡が完全に崩れ、“常世”の神の手により、東源郷を統べる三神の内の一人“太極”のソルムンデハルマングが
滅ぼされ、東源郷との関係が崩れ、それまで一度として動いたことのない盤古神による世界戦役の勃発。
“陰陽”の“伏羲(フッキ)”もまた、戦いを余儀なくされ、かつてない世界規模の戦と、上位“理”による世界侵食、破壊が行われる事となる。

常世が統べる果ての世界編
 新世界暦400年、世界全てを呑み込んだ“常世”による新世界の統一。
開闢が生まれえず、陰陽が死に絶え、顕世は存在せず、全てが滅び消え去った後に生まれた新世界唯一の理。
そこに生まれた最後の希望を背負った者達。彼らが生きた新世界を護る為、そこから生まれる新たなる希望、世界の為に戦う
エスペランサーセイバー最後の物語。


脚注

※1 それぞれ大陸の北端、星蝕海に対するように建てられたのが“アマツヅグスク(雨乞い霊城)”であり、東の東源郷または同盟大陸のベルシ
ェルスとの交易を兼ねるが“クボウグスイ(自然樹の城)”であり、大陸南端、サハラ大陸との国境に壁のように建てられのが“スイグスク(十嶽の
城)”である。

※2 琉球とは世界を意味し、士はカナン大陸においてその名の通り騎士に値する地位であり「琉球士」とは「世界騎士」という別名を有している。

※3 また今更、過去の栄光にしがみつき、ヴァーレンハイトによる大陸統一など夢想家の誇大妄想に過ぎず、すでに歴史が大きく変わっているに
も関わらず、それを実現しようとしたアレクセスの所業は二重の意味で傲慢に他ならなかった。

※4 中にはヨハネスは理を有するが故に野心や邪な考えを持つ重臣達によって奉り上げられ、彼らの目的の為の傀儡、象徴になっているに過ぎ
ないと言われているが真実は不明である。

※5 無論これには理由が存在し、彼らほどの存在が容易に干渉を行えば、己の築き上げた世界すら一瞬で滅ぼしてしまうほどであり
他世界に取ってもそれは同じで、“理”として上位の階位を持つが故、“理”の世界を尊び、それはそこを統治する人神とそこいる人々によって
繁栄するも滅びいくも決定すべきと考えているからである。

※6 中には零式宝具を創り出す者も存在し、また邪(いわゆる悪徳の概念)の“理”に至った者すら存在し、そうした邪仙達の脅威は外の世界でも
比類する者がないほどに凶悪で強大な存在である。

※7 他の木材や樹などでは“螢炎”を燃やし続ける事は敵わず、わずか数分足らずで全て燃え尽き灰となる。

※8 比類ない才能と持つ王仁十であったが、一説には性生活においては不能であったと伝えられている。

※9 この“相生の礼”とは五行思想にある相生のルールに順ずるものである。即ち、“火”を司る鳳が本来の秩序を取り戻せば“螢炎”の普及が
なり、それは絽の“黄石”採掘に繋がり、それはその後、明にて“白金鋼”を生み出す元となり、それはやがて、櫂の“玄水”採取に不可欠であると
指摘し、五行のルール“相生”をよりよく行う事によって、櫂に対する恩義を返し、鳳の国が失われる事のデメリットも説いたと言う。

※10 一説には万老棟は第九階位以下の“理”に至った人神であったのではないかと記述されている。

※11 この晋孝莱という人物は“外の世界”からやって来た者ではないかと言われている。

※12 一説には孝莱は自分の本当の姿を見たチューリンがそれでも自分に付き添うと宣言し、彼女と共に異国の地へ逃げ延びたとも伝えられてい
る。

※13 この梁宋炎の燕に対する反乱の決意の裏には長年、自らの父の仇でもある帝に対する復讐心からのものであるという説や、規律や掟
そうしたしがらみに縛られすぎ、堅実しぎる帝のやり方が後々、人々の自由を損なうと考え、将来の展望を見据えた宋炎が、燕の未来の為に
苦渋の決断の末に行き着いた説や、逆に晋孝莱にそそのかされ、彼の簒奪を手伝う結果として利用された説など、様々な説が残っているが
どれも確固たる信憑性を持たず、梁宋炎が燕に対する謀反を行ったのは、もっと大きな理由からではとも推測されている。

※14 この時、絽の帝レイ自ら、何故このような反乱を起こしたのか問いを投げかけ、逃げ延びたもう一人の首謀者・晋孝莱の居所に対し問いを投
げるも、すべて無言を通し、晋孝莱に罪をかぶせるようなこともせず、彼は自らの罪を認め、その本心を語る事無く、歴史から消えることとなった。

※15 その分、貴重であるとされ、絽が天然資源とされる“黄石”は東源郷の五つの国においても最も高級な品として取引されている。

※16 これは本来、五行思想の相剋の関係より、燕の軍隊に対し絽の軍隊は圧倒的に相性が不利にも関わらず、それを見事に撃退してのけ
自ら燕国の“帝”と直接対峙をし、話をつけた事からも歴代の絽の帝の中で図抜けて神経の太い、そして武勇に長けた帝であったと推察される。

※17 この元宋、自らの血を見るだけでも卒倒する程の気の弱い人物であり、内政面においてはその才覚を見せるもこと戦や軍略、戦術などの
分野に入るとからきしであり、この為、軍略や戦術指揮などは現在の絽を統べる三将軍達に任せているという。

※18 特に水を統べる櫂に取って明が作る“白金鋼”は櫂の地下資源たる“玄水”を唯一組み上げ事が可能な素材である為に、この“白金鋼”の
輸入が途絶えると、櫂に取って致命的な損失となる。

※19 この時、桓因(ファニン)が盤古神との契約に従った理由に関し、かつては同じ兄弟神であった盤古神に敬意を表した為とも
ある種、こうした巨大な存在が持つ特有の寛大さ、僅かに終わりの時を引き伸ばしてやろうという神特有の傲慢さから同意したとも
様々な説が流れるが、その真意は桓因(ファニン)本人と、盤古神のみしか知りえない。

※20 無論、それほどの力と実力を兼ね備えるイフリートは僅かであり、現在サハラの両腕、瞳、足と称され、それぞれに心の奥底の願望にある
“渇望”の力を具現化した能力を持つアフラー、サマール、ヴァナート、ラーニくらいであろう。

※21 この原因となったのはあるキャラクター…いや、中の人による影響があるとかないとかry

※22 そうした奇跡の所業を為し得たのがリプレイ「Memory of Isthar」に登場したキャラクタールナであり、彼女はエネルゲイア層のイデアを持ち
ながらデュナミス層に匹敵するものであり、彼女の無意識かにあったデミウルゴスとなりたいという願望、心の形が彼女の特殊型星宝を生み出す
要因となった。

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