第五十一章「王は高らかに天へ挑む」
◆GMシーン 〜神(THE GOD)Y〜
――そうして運命の前日が訪れた。

遥か天空の果て、星空の大海に浮かぶその居城。
神アケルナルが座す星王殿にて、今、人知れず、ある一つの戦いが幕を開けようとしていた。
いや、それは戦いと呼ぶにすら値しない座興。
だがこの幕開けこそが、新世界をかけた運命の決戦の紛れもない開幕を告げる狼煙となった事を
この時代に生きる人々は誰一人として知らずにいた。

新世界カナンへと向かったべネトナシュは、その後、浮遊大陸ベルシェルスへと赴き
彼らに対する準備を整えさせた。
そうして、今、彼の胸のうちにある決意はただ一つ。
彼が希望を託した者達と、己の神とを相対させる為の、最後の舞台を整えること。
今、星王殿の最深部、神の間にてべネトナシュはアケルナルを前にひざまずいていた。

「――ご苦労であった、べネトナシュ」

そのアケルナルの言葉に対してべネトナシュは答えず、ただ俯いたままの姿勢を保つ。

「お前の働きには私も感謝している。もしお前が望むのなら
お前をガドフリート同様に我が片腕として側近に置きたく思うが、どうかね?」

その神の申し出に対してべネトナシュはただ一言を持って返す。

「…ありがたい申し出ですが、辞退させていただきます。アケルナル様」

「ほぉ、なぜかな」

べネトナシュの心中にある想いに対し、すでに察しがついているアケルナルだが
彼はそのべネトナシュの決意を見届けるかのように問いを投げた。

「――決まっています。私が忠義を尽くす相手はただ一人
世界でただ一人、生まれながらのデミウルゴスとして誰とも関われずにいた私を拾い上げ
その居場所を作り上げてくださった神…イシュタル様のみだからです」

その発言と同時だった。
この神の間の空間いっぱいに、彼が持つ星宝【神の瞳(デウス・サイクロプス)】が具現化したのは。

「…ほぉ」

すでにこうなる結末を見越していたのか、アケルナルは動揺も不快感を表さず
ただ愉悦の表情を持って、それに応えた。

「貴様がイシュタル様を殺したと知った瞬間から…私はずっとこの時を待っていた。
神を殺した以上、貴様に私がはむかったところで一矢も報いる事無く、敗れるのは必然。
ゆえに、貴様がそうしたように、私もまた貴様に対抗できる勢力。
その力を持つ者を探す為に、貴様の下に降った。そして、その甲斐あって、ようやく見つけられた。
貴様の新世界を打ち砕く希望を持った者達をな」

べネトナシュの弁舌と同時に彼が持つ【神の瞳(デウス・サイクロプス)】に
これまでにない程の強力なエネルギーが蓄積されていく。

「私では貴様には一太刀も浴びせられない。
故に、ここで私が果たすのは――彼らと貴様とが向かい合う、その場を作る演出のみだ!」

その発言と同時に彼が持つ星宝【神の瞳(デウス・サイクロプス)】より地表すら焼き尽くす神の光が放たれる。
だが、その神の光を前にしても神は動じない。揺るがない。
彼はただ、その手を軽く振り、ただそれだけでべネトナシュが持つ【神の瞳(デウス・サイクロプス)】は砕け散り
その余波でべネトナシュの身体にも深い傷が刻まれた。

「――がはッ!」

胸を裂かれ、そこから大量の血を流し、血に斃れるべネトナシュ。
更には彼が放った神の瞳の光すら、神に届くことは無く、その遥か後方の壁を打ち抜くだけの結果となった。

「…解せんな。今の一撃、私にほんの僅かなかすり傷くらいは負わせられたものを、何故外した」

そう神は自らの前に斃れ地に伏す反逆者に対して、最後の質問を投げかける。

「…いいや、外してはいませんよ。言ったはずです、私では手傷は負わせられない…
だから“舞台を整えることで一矢を報いる”と」

そのべネトナシュの発言に対し、神たるアケルナルは気づく。
べネトナシュが破壊した壁の向こう。
その更に先にあるのは――この星王殿を支え維持するコントロール盤。
彼が放った星宝の一撃はこの神の間を通り抜け、その更に先にあった制御コントロールを打ち抜いたのだと。
そして、それが意味する事はただ一つ。

“がくん――”

この神の居城が、それまでの支えを失い、ゆっくりと眼下の世界へと降下していく。

ライラ:(ベネット「バルス!」

アスタロト:(だいたいラピュタw

「…なるほど」

アケルナルは心の中で目の前に斃れる男に対して素直な評価を与える。

「見事。確かにこれではこの城のコントロールはしばらくは取れまい。
そして、その隙に彼らがここへ到着し、私の下へと到着する為の舞台を整えた。
確かにお前は私に一矢を報いた。見事だ、べネトナシュ」

言ってアケルナルは立ち上がりその手に次元を歪ませる力を生み出す。

「ならばこそ、これは褒美だ。受け取るがいい」

それはかつてクフィル達を次元の彼方へと消し去った彼が持つ最高位の星宝。

「本来ならば、このままお前の存在は消し去るつもりであったが
お前ほどの存在を無碍に消すのは実に惜しい。ゆえに我が星宝に選別を与えよう。
もしも運命がお前の消滅を選択するのであれば、それは致し方あるまい。
だが、お前ほどの男ならば己に相応しき時空間へと導かれるだろう。
そもそも私の星宝とは“本来そういうもの”だからな」

言って、アケルナルより生まれた次元を超越する力がべネトナシュを飲み込む。
やがて全てが消え去って後、アケルナルは再び玉座へと座る。

「――シリウス、ガイウス、そしてガドフリートよ」

名を呼ばれた三人は即座にアケルナルの眼前へと姿を現す。

「お前達は私が認めた我が騎士にして、兵、そして新世界の民。
ゆえに魅せるがよい。これより、ここへ訪れる戦士達との新世界をかけた最後の決戦を」

それに頷くように三者は互いに姿を消す。
そうして、全ての舞台は整った。今、新世界をかけた運命の決戦が迫る。


◆ミドルシーン10 〜王は高らかに天へ挑む〜
GM:そして――決戦の日は訪れた。
今、君達の前にはベルシェルス大陸より派遣された無数の飛行艇とそれに乗り込む騎士達。
そして、この新世界カナン大陸の騎士達も勢ぞろいしている。
キリエ、ガゼル、フィー、シャマリー、船長、スフィルと名だたる面々も全てが集結。
向かうはただ一つ、神の居城・星王殿。そして、先ほど入った一つの情報。
それは遥か星空にあったはずの星王殿がなぜか急に降下をしており
今やその距離もベルシェルス大陸付近へと留まっているという事。
べネトナシュが言った三日後、その時におきたこの現象。
その繋がりをハッキリと証明できる者は誰一人としていないが
一つ確かな事は、これで全ての準備は整ったということ。
そうして、出発を前にしたクフィルに対して新世界カナンを支える宰相スフィルが近づく。
「…クフィルさん。出発前に、一言、我ら新世界を統べる女神…いえ、姫にお会いください」
言ってスフィルの後ろから出てきたのは年端もいかぬ幼女とも取れる少女。
それは例えるなら生まれてよりこのかた、一切他の色に染まる事無く
真っ白なまま育ち、成長してきた聖女の如き存在であろうか。
彼女がもつ純粋無垢な瞳に君は自分の心を見透かされるような気すら感じてままならなかった。
そう、あの時、アケルナルと対峙した時に見た、この世界を生み出した神エルドラシル。
彼女に勝るとも劣らぬ雰囲気を纏った少女がそこにはいた。

ライラ:(うわぁい けしからんので連れて帰りますね

GM:ちなみに彼女は君の眼前にてきょろきょろと君を興味深そうに見ている。

クフィル:じゃあ目線を合わせるために少し屈んで手を差し出そうかな。
「よう、始めましてだな」

GM:では、君が差し出した手に対して少女はにっこり笑みを浮かべて握る。
「…うん!はじめましてぇ!」

アスタロト:(ようじょだー!ようじょがいるぞー!

GM:その声もまるで小鳥のように心地よく、どこまでも透き通るような少女。
「えと、くふぃる…でいいのぉ?」

クフィル:「あぁ、フィルでいいぜ。親しい奴はそう呼ぶんだ」

GM(姫):「じゃあ、ふぃるってよぶね〜!」
言って少女はにへら〜と笑みを浮かべたまま言う。
「えっと、わたしたちのせかいと、ふぃるのせかいのこと、たのんでいい?
わたしは、このせかいとわたしのしたうみんながだいじだから、それをまもるよう、たくしても…いい?」

クフィル:「――任せときな」
少女の言葉に微笑み、力強く頷く。

GM:では君のその答えに対して、少女もまた心底喜び、笑みを持って返す。
「――それじゃあ、フィル。行こうか」

クフィル:「――あぁ。行こうぜ、レイ」
ここらで一発演説イベントとかした方がいいんですかね!(笑)

GM:ああ、したければしていいですよ(笑)
もうここくらいしかないんだし!

クフィル:では、周りを見渡す。
よく知った顔も、初めて見る顔も居る。
全艦に声が届くように――ゆっくりと、しかし力強い声で語りだす。

「――俺は人間が好きだ。」

「人間の強さが好きだ。」

「自らの愛する者を護ろうとする意志が。」

「己を顧みず誰かを救おうとする意志が。」

「信念に従い夢を叶えようとする意志が。」

「強さも、弱さも、美しさも、醜さも。」

「優しさも、冷酷さも、愛情も、憎しみも。」

「全てひっくるめて人間が大好きだ。」

「人間の生き様が好きだ。大好きだ。」

「俺は全てを護りたい。」

「さぁ、神の摂理に挑もう。」

「世界最後の詩を、勝利の凱歌を高らかに謳おう。」

「神様にも消せない思いを胸に秘め――」

「共に征こう、苦難と逆境と熱血と不屈に彩られた王道を。」

高らかに――。

「共に往こう、恐怖と絶望と勇気と誇りに満ちた戦場に。」

天まで届けとばかりに力強く――。

「戦おう、自らの護るべき者の為に。」

「勝とう、自らの信ずる者の為に。」

「生きよう、自らの愛する者の為に。」

「我等、希望を切り開く者(エスペランサーセイバー)なり――ッ!! 」

「―――全員、俺に続けッ!!!!」

GM:そのクフィルの号令に継ぐように。

「おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーー!!!!」

全ての民、騎士、この場に集った者達から鬨の声があがる。

ライラ:無言で盾を掲げよう。声出しは任せたッ

アスタロト:さすが殿下!という眼差しでクフィルを見つめます。
士気が高まってますよっ

全ての者達の士気が上がり、そうして皆の心が団結したこの瞬間。
やがて誰もが記憶し、忘れはしないだろう。
偉大なる星の英雄王クフィルが歴史に刻んだ、この名演とそして、これから起こる戦いを――。

GM(船長):「―それじゃあ、いくよ!殿下!皆!」

君達は皆、船長の船に乗り込み、それと同時にこの地に集った全ての船もまた浮上していく。
向かう先はただ一つ――神との決戦の地“星王殿”

 
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