終章「そして新時代へ」
◆エンディングシーン1 〜友達〜
GM:アケルナルと対峙するガディムとサハラ、彼らより離れるミシュラとアルタイル、シグニ。
不意にミシュラの肩に抱かれていたシグニが目を覚ます。
「…よぉ、ミシュラ。空間水、もらったんだな。よかったじゃん。それ使っておたくは先に帰ってなよ」

ミシュラ:「!シグやん。え…けど、シグやんはどうするの?」

GM(シグニ):「はは、オレは大丈夫だって。こう見えてオレも空間水の携帯くらいはしてるから」

ミシュラ:「…信じていいんだね?」
彼の目をじっと見据えて言う。

GM(シグニ):「大丈夫だって」
いつものようににっと笑うシグニさん。

ミシュラ:「…じゃあ、またね。シグやん」
そういって拳を打ち付けあい、アルっちを担いで空間水を使う。

GM:君が去ったのを確認して、シグニもまた懐に手を伸ばす。
そこにあった空間水を取り出すが、それはもはや先程のサハラの攻撃により
水の一滴に至るまで全てが枯れていた。握っていた瓶が音を立てて崩れる。

「ま、そりゃそうだよな…」

同時に己の身体から血と共に生気が抜ける感覚を味わいながら、その脱力感に身を任せる。

「やっぱ致命傷だったかー…あーあ、かっこ悪いとこみせたかなー、オレ」

すでに眼前には星蝕が迫りそれが今まさにこの大陸へと降り注ごうとしていた。
それを見ながらシグニは呟く。

「ミシュー。オレとお前って、あれだよな。いい友達、だったよな」

その言葉を紡ぎ終え、彼の身は迫り来る星触にその身を―――預けた。

ミシュラ:(ミシュラは自分の知らないところで仲間や親友、愛する人を失ってばっかりだ。
トラウマになっちゃうぞ)


後に第一次星蝕戦役と呼ばれる大戦。

機関側が失った人材は裏切り者とされるプロパテール5のヒルデベルト。
そしてオグドアス9のデネブ・シグニ。

それはミシュラに取ってかけがえのない人物であり、彼がいたからこそミシュラは己の星宝を扱えた。

そして、それこそが、未来において世界を侵食の神より救う希望へと
繋がる道であったことを彼はまだ知らずにいた―――。

◆エンディングシーン1終了

ミシュラ:本当に、ずっと前から色々な人に支えられて来たんだなぁ…ミシュラ(しんみり

GM:と言う訳でがディムさんのラストもいきますー!

◆エンディングシーン2 〜そして新時代へ〜
GM:エルフェナの中央、そこにガディムは到達した。
すでにこのエルフェナを星蝕による飲み込みが始まり
もう僅かもすればこの大陸は跡形もなく消え失せるであろう。
だが、それをさせるわけにはいかない。君にはそれを阻む理由と“理”があるのだから。

ガディム(ヴァーミリオン):(時間が無い…ぶっつけ本番だが、やるしかないな)

GM:理の解放。それは己が心を無心にしてただ一つの願望、単一の願いに接続する事。

ガディム(ヴァーミリオン):目を閉じ、心を静める。自分の存在の奥底へ潜り、扉を開く。
扉の向こうにいるのは“彼女”、何も知らず無邪気に遊ぶ少女。優しき世界の種。
彼女を護る、彼女の作る世界を護る、その礎となるこの地を護る。

GM:君の理の発動。だが―――

“ぐごおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉん!!!!”

GM:君を中心に大陸を覆う絶対不可侵の守護領域。
その理を持ってすれば何人もこれを犯すことはあたわざる、にも関わらず
君が張った理の障壁にひびが走り、イシュタルの侵食、星蝕が徐々にこの大陸を飲み込み始める。

ガディム(ヴァーミリオン):えー。

GM:何が足りない。何がいけない。君が守るという願望。その単一思考。
それを純然たるものにする最後の一言。何かが足りない。
身体から血が噴出し始める、このままでは君の理はイシュタルの理に飲み込まれる。
だが、その時、君は気づいていなかった。
君のすぐ傍に一人の少年が倒れていたことに。

ガディム(ヴァーミリオン):え?

その少年は家族を殺され、全てを失った哀れな孤児の一人。

それは少年にとっては何気ない一言。目の前にいる誰か、何かに対して救いを求める少年の一声。

「……お兄ちゃん……」

(…お兄様…)

「……護って…下さい……」

(…護って下さい…)

魂の根源についていた、単一に至ったその動機。君の渇望の根源。

ガディム(ヴァーミリオン):水滴が落ちる音がした。自分の存在の湖に、一粒の水滴が落ちた。
最後のピースのように心に解けたそれは、湖の水を澄み渡らせる。
「ああ…護ろう。俺は兄なのだから。護るために生まれた者なのだから。
俺は…“彼女”の、“彼女”の創る新たな世界の兄となろう」

刹那。君の理(守護)はイシュタルの理(侵食)を凌駕した。

◆   ◆   ◆

「――――――」

今や浮遊大陸と化したその地で星王イシュタルは僅かにその表情を歪ませる。
が、それも一時のものであり、すぐにいつもの表情へと戻す。

「…ふむ。地上の一部が残った、か。何者かの理の力か。まぁ、どうでもよいことだ」

言ってイシュタルは星王殿の最下層に存在する己の理を具現化たる星触を見る。
しかし、眼下にある星蝕は明らかにその力が衰え、一部が霞がかったように機能を停止している。

「先の開放とヒルデベルトによる機能破壊によって我が星蝕も一時使用不可能となったか。
まぁよい…私がいる限り星蝕の回復は行なえる、あと200年もあれば再び完全なる機能を取り戻すだろう。
そして、その時こそはこの世界の全てを飲み込み侵食をしてやろう。
わずかな間だろうが、その間はこの世界の神としてデミウルゴスと人間達の統治を行なってやろう。
来るべき我が旅立ちの日まで、な」

言って神は笑う。彼が見るのは新時代でも、新たなる世界でも無い。
ただ永遠と繰り返す侵食の日々なのだから。

◆   ◆   ◆

GM:ガディムの眼前には一人の少年が倒れている。
すでに理が発動し、この大陸は護られている。
あとは君が存在する限り、この大陸とここを包む理も安全だ。
だが、問題はそれがいつまで保つか、だ。

ガディム(ヴァーミリオン):さて、この器はどれだけ保つのだろうなぁ。

GM:君の器はあくまで作られたものであり、やがては限界が訪れる。
ましてや理を発動させ続けているともなればそう長くは持たないだろう。
よくて100か…200年。だが、その身が朽ち果てるまで君は護る続ける。
この大陸を、その先にある彼女の世界を。
「……ぅ……」
と、その時、君の眼前で倒れている少年がうめき声をあげる。
ひどく衰弱をしているが、まだ助かるであろう事は見て取れる。

ガディム(ヴァーミリオン):ではプレイ中、結局使わなかったファルトスの奇跡をあげよう。

GM:ぴんぴろぴーん。全回復。
「……」
傷が回復し、目が覚める少年。そして君を見上げ君の存在に気づく。
「!あ、ありがとう、ございます!」

ガディム(ヴァーミリオン):(この器…人の想いの結晶『オベリスク』でできていると言っていたな…)
そして少年をまっすぐ見て
「君は…俺がこの世界を護り続けることを望むか…?」

GM(少年):「…え?」
きょとんとして、やがて――
「えっと、その…護ってもらるのは嬉しいですけど、貴方はそれでいいのですか?」
そこには貴方自身はいいのですか、という少年の心遣いもまたあった。

ガディム(ヴァーミリオン):「ああ、俺は護る者、護り続けるために存在し、それを望む。
だが、この体がどれほど保つかはわからない。俺は…見たいんだ、俺が護った世界の行く末を
望み“続けた”優しい世界が成し得るその時を。だから、俺がこの世界を護ることを望む者を
その想いを集めてほしい。この体は人の想いの結晶でできている、君の集める想いが…俺の命を決める」

GM(少年):「…分かりました。それが貴方のためになるなら僕は貴方の為に想います。
僕は貴方に救われました。だから、その恩を返す意味も込めて貴方が護った世界が価値あるものだと
その未来を作ってみせます」

それは君と少年が交わした約束。
世界を護り続けた者とその未来を生きた者の出会い。

やがて訪れる新世界の到来をガディムはただ静かに待ち続ける。
君の中にあるのはこの優しい世界を護り続けたいという意志――願いなのだから。


◆エピローグ 〜優しい世界〜
「素晴らしい」

彼は微笑む。少女の世界より、先程までエル=ユーナの世界で起きていた出来事を見て。
護り続ける意志、その意志と理により護りきった大陸。
そう、やがてそこから彼女の世界が生まれる。
彼女の世界が新たなるエル=ユーナの世界を包む。

「“人神(アダムカドモン)”にしろ“神”にしろ、その者の理にはルールがあり、そして階位がある。
ある者は己という個に対してのみ発動する理であり、あるものはその対象が大陸規模や世界規模である者。
そしてある者は宇宙そのものの法則を書き換え、新たに創り出す者」

おおよそ、神という定義があてはまる存在があるとすればそれは最後の後者であろう。

「無限回帰。この世界に存在するルールの一つ。
エルドラシルが生み出した理、ユグドラシルロゴスの一つ」

彼は知る。“今”のこの世界を支えるのは世界神ユグドラシル。
彼女の理はすなわち、永遠不変。変わらない日々と世界。永遠に続けたいという願望。
そこにいる人々や世界や大陸、それらをずっと続けていきたいという願いによる理。
故にそこから生まれたのが無限回帰であり、イデアの海であり、剣聖システムであり、世界システムである。

ならばその理を消すとするならば、別の理で、彼女以上の理がこの世界を包む事。
すでにエルドラシルという神の力も意志もそしてその単一思考にして願い、理も薄れ始めている。

彼女は人と世界に“触れすぎた”

もう何百年かを過ぎれば、彼女の理は消え、彼女は世界神たる資格を無くすであろう。
故に次世代が必要だ。彼が見つけ、彼が望んだ世界の神。優しき世界の女神を。
気づくと少女は不思議そうな顔で青年の顔を覗き込んでいた。

「…おや、どうかしたのかい?」

優しく問う青年に少女は微笑み、つい数時間ほど前までガディムがいた場所を指差す。

「ああ、彼の事が気になるかい」

こくこくと元気そうに少女は頷く。
それは無邪気に、ただ自分の世界に来てくれた二人目の人に対する純粋な興味。

「彼はね、君の世界を護りに行ったんだよ」

その言葉によく理解ができないのか、再び不思議そうな顔をする少女。
そんな少女を青年はただ愛しそうに見つめ

「また、会えるよ。君が君の世界を築き上げたその時にね」

その言葉にぱっと明るい笑顔を浮かべ、少女は再び海を走る。
無邪気にただすべてを楽しみ包み込むように。

「彼女はまだ未成熟の世界だ。だがあと300…いや200年もあれば…。
彼女の世界が、優しさに満ちた理がこの世界を次世代へと変えてくれる」

◆    ◆    ◆

―――198年後。

「ついたよ、かっちゃん」

浮遊大陸の一片。大きな穴が開いたその場所に一人の少年と一人の少女がいた。

だが、少女はその生気も魂もなく、今まさに消えかけようとしている死人に等しかった。

「……ここが、私の故郷………もう、これで…思い残すことは……」

彼女の生が、命が、もう尽きようとしていた。
彼女は微笑み、見渡し、そして――その身体が光に包まれ始めた。

「かっちゃん…かっちゃん!」
少年は抱き留める。最期の温もりを感じ、そして目の前の愛しい少女・カストルにも与えられるよう。


最後の瞬間――だがその時。


「君の理はなんだい?小さき女神よ」

「わたしのせかいは…みんなをやさしくつつみたい。みんながいっしょにいられるせかい」


風が、薙いだ。


吹き抜けたそれは生命の息吹の与える母の温もりのように
全てを忘れていたはずの世界に今、鼓動が甦る。

「…ミシュラ」

見ると消えかけていた彼女の身体はその構成を留めていた。
いや、目の前の彼女には生命の、命の温もりが感じられる。

「ミシュラ……あれ」

そっと彼女は指を指す。
指をさしたその先、そこにあるのは大地に開いた巨大な穴。

「…かっちゃん」

暖かい、原初の温もり。先ほどの息吹は何だったのだろう…
あれが、ファルナスの言っていた星の命―――奇跡なのだろうか。

少年はカストルの指差した方をそっと向く。

その時、198年に及ぶ一人の男の理が幕を閉じた。

彼が護りに護り、護り続けた世界。

それは同時に新たなる理―――否、世界の誕生。

かつてエルフェナと呼ばれたその大陸は原初の神話の世界よりもなお美しくなお輝いた楽園の園。

そして、その大陸を中心に彼女の理が発動する。

「みてみて!スフィル!せかいってすっごくきれいでひろいね〜!」

初めて降り立ったその地に少女は純粋無垢な笑顔ではしゃぐ。

「…ああ、そうだね」

スフィルと呼ばれた青年もまた同じく世界を見る。
だが、彼の中にあるのは少女以上に強い羨望と感無量の想い。

そう、この世界はこの大陸は――“君がこうしたんだよ”とそっと心で付け足す。

「ねぇねぇ、スフィル。ガディムはいつめがさめるの〜?
わたし、ことばおぼえたんだよ〜。いっぱいおはなししたいよ〜!」

そうスフィルを覗く少女は彼の足元で眠るように倒れた一人の青年――ガディムを見てそう言った。

「彼は少し、疲れているんだ。今までずっとここを護ってくれていたからね、君の為に。
だからもうすこしだけ休ませておやり」

「そ〜なの、わかった」

言って再び少女は走る。無邪気な笑みを浮かべ、世界を回る。

そっとスフィルはガディムの額に触れ。

「―――見てください。貴方の護った世界ですよ」

そう言って再び世界を見る。

ガディム(ヴァーミリオン):倒れたガディムの傍には、彼が地面に書いたであろう文字がある。
それは彼が“彼女”にあてた言葉。彼がこの世界の他にもう一つ、彼女に贈ろうとしたもの。
そこにはこう書かれていた。


――『君の兄となろう』――


それは少女に送った一人の男のメッセージ。
新時代を生み出した少女を支えた、今では知る人も少ない“英雄”の最後のメッセージ。

「大地が…」

ミシュラは見た。
カストルもまた見た。

198年前に世界は星蝕に呑まれた。

だが、そうではなかった。
一人の男の理が、彼が護った少女の理が世界を続け生み出していた。
そう、ずっとそこに待っていたのだ。

「…ミシュラ」

そっとカストルは隣りにいるミシュラの手を握る。

「帰ろう、あの世界に」

隣に居る、最愛の少女。彼女にそっと微笑みを返し、ミシュラは頷きを返した。


エスペランサー・セイバー
新世界への幕開け

〜Fin〜

 
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